第10回 ケータイに最も近いスマートフォン――ガラパゴスも悪くない:「WILLCOM 03」ロードテスト
「WILLCOM 03」のロードテストも今回で最終回。最後になるが、WILLCOM 03への不満点と今後に期待するポイントをまとめてみた。また、どんなユーザーにお勧めなのかも考察してみた。
長らく行ってきた「WILLCOM 03」のロードテストもいよいよ最終回。これまで、スマートフォンとしてのメリットや使い勝手のほか、通常の音声端末にはない無線LANの活用など機能面にフォーカスしてきた。しかし改めて強調したいのは、WILLCOM 03は“ケータイ”に最も近づいたスマートフォンという点だ。そんなWILLCOM 03はどんな人に向いているの改めて考えてみた。
WILLCOM 03でメールを利用しているところ。横にスライドすれば開けば、QWERTY配列のフルキーボードが利用できるので、長文も入力しやすく、メール用マシンとしてもなかなか便利だ。ただし、いくつか不満点はあるのも事実
日本のケータイ文化にマッチした、最もケータイに近いスマートフォン
スマートフォンを利用する上で大きな障壁となっているのが、通常の音声端末と使い勝手や作法が大きく違うところだろう。特にWindows Mobile端末の場合、操作方法が音声端末とも、PC向けWindowsとも違うため、使い方が分かりにくい。
それを最も払拭しようとしているのが、ウィルコムとシャープだ。なかでもWILLCOM 03は、W-ZERO3シリーズの集大成として電話、メール、Webという基本機能を強化しただけあって、その使い勝手はだいぶ改善されてきている。
電話についてはロードテストの第2回、Webアクセスについては第3回と第4回にまとめたが、最後にメールについて紹介しておこう。まずWILLCOM 03は、絵文字やHTMLによる装飾メール(デコラティブメール)に対応した珍しいスマートフォンなのだ。絵文字に対応したスマートフォンは他キャリアでもあるが、HTMLメールへ対応した機種は数少ない。
機能 | 引数 |
---|---|
受信トレイ | -recvbox |
送信トレイ | -sendbox |
新規テキストメール | mailto: |
新規デコラティブメール | mailto: -d |
新規手書きメール | mailto: -i |
受信 | -receiveWaccount |
これらの機能は、前モデルである「Advanced/W-ZERO3[es]」から対応していたわけだが、WILLCOM 03では新しく導入されたオリジナルメニューと合わせて、よりケータイのような操作性を実現している。
ちなみに、W-ZERO3メールのショートカットに引数(パラメータ)を設定すると、オリジナルメニュー以外から直接Eメールの受信をしたり、受信トレイを開くことができる。引数付きのショートカットを作成するには、WILLCOM 03の「ファイル エクスプローラ」を拡張するオンラインソフトの「File Explorer Extension」(http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Cupertino/2039/)を導入して、ショートカットファイルのプロパティに右のような引数を設定(http://www.willcom-fan.com/wzero3/entries/kzou/000215/)するといい。
ただW-ZERO3メールは、動作がもっさりというより“もぎこちない”。さらに使っていくうちにかなり動作が緩慢になってくる。そのため、Windows Mobile標準の「メール」(Outlook互換)のほうが、シンプルなインタフェースで印象がいい。
また、ウィルコムのライトメール(SMS)を送受信するには、その名も「ライトメール」という別のアプリケーションを利用しなければらないなど、全般的にWILLCOM 03のメール機能は複雑だ。
せっかく長文入力も快適なQWERTYキーボードを搭載し、「ウィルコム定額プラン」というメール送受信無料の料金プランがあるのだから、メール機能については改善してほしい。絵文字とデコラティブメールが使え、ウィルコム同士だけでなく他社ケータイやPCとのメールも送受信し放題なのに、肝心のメールソフトが使いにくいのではいただけない。
全体的なソフト面での改善を期待
WILLCOM 03の購入を検討した場合、「iPhone 3G」などと比べて全体的にソフトウェアの完成度が低いと感じる面があるかもしれない。WILLCOM 03の開発陣インタビューでは“Windows Mobileはソフト開発が容易”という発言があったが、ソフト開発がしやすいのであれば、なおのこと通常の音声機種やiPhone 3Gくらいの完成度を期待したいところだ。
特に、Samsung電子製の「OMNIA」やソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製の「XPERIA X1」、HTC製の「Touch Diamond」「Touch Pro」など、メーカー独自の統一されたUIを搭載したWindows Mobile機が多数登場している。
まだまだ“WILLCOM 03で集大成”と言わず、さらに改良と改善を加えた製品開発を望みたい。少し気が早いが、Windows Mobileの柔軟な拡張性を生かした、より高い完成度のWILLCOM 03後継モデルの登場を心待ちにしている。
やはり2台目としてがベター
いろいろ意見もあるが、トータルで見ればWILLCOM 03は最も使いやすいスマートフォンと言えるだろう。PCと連携しなくても十分に使えるため、iPhone 3Gのように、MacやPCがないと満足に使えないということはない。
メールもほかのウィルコム端末と同じように使え、数は少ないがNAVITIMEやmixiなどの、ケータイ向けWebサービスも公式に対応している。繰り返しになるが、絵文字とデコラティブメールへの対応は、多くのケータイユーザーにとって歓迎すべき点だ。また、タッチパネルやイルミネーションキーが感圧式のため、爪でも押せるし、スタイラスペンも利用できる。
ウィルコムのエリアや通信速度を考えれば、WILLCOM 03はすでに携帯電話を使っていて、2台目としてちょっととんがった機種を使ってみようという人にオススメだ。“ケータイっぽい使い方は捨てられないけど、スマートフォンも使ってみたい”というユーザーには、スマートフォン入門機として最適といえる。
WILLCOM 03のボディサイズはケータイと見劣りしない小ささになり、デザインも音声端末に近い。そのため1台目のメイン端末として持ってもいいのだが、スマートフォンというものの長所短所を飲み込んでおかないと、使いやすさなども含めてそれなりの覚悟が必要になるだろう。
参考までに補足させていただくと、筆者は複数台の携帯電話を利用しているがあくまでWILLCOM 03をメインとして使っており、大きな不便は感じていない。
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