第4回 “ベーシックとバリュー”、結局何が違う?:ケータイの「分離プラン」を改めて考える(3/3 ページ)
前回は「分離プラン」と合わせて導入された分割払いにおける端末購入について触れた。今回は従来モデルに近い形で残されたNTTドコモのベーシックコースとバリューコース、KDDIのフルサポートコースとシンプルコースの違いを比較するとともに、イー・モバイルの分離プランの仕組みを考察する。
イー・モバイルはどうなっている?
イー・モバイルは2007年3月の開業時点で、すでに分離プランを導入していた。改めてそのポイントを復習してみよう。
イー・モバイルの音声サービス対応端末は、24カ月の利用を条件に2万4000円(1000円/月相当)の端末代金(を含めた初期費用)の割り引き+1000円/月分基本料金が安くなる「新にねん」と、「アシスト1000(旧ご加入アシストにねん)」あるいは「アシスト1600」の加入により、実質端末代金を分割で支払う方法を組み合わせることが可能で、最終的に24カ月継続利用後の実端末代金はどの組み合わせでも同じになる。
イー・モバイルの場合は、端末購入時の初期費用(頭金)と月々の分割払いの金額のバランスをいくつか選択できるのがポイントの1つ。基本料金は“24カ月間限定の割り引き”となる仕組みだが、条件付きながら24カ月目以降に割り引きを適用することも可能である。これは分離プランで端末購入時に一括支払いできない点を除けば、どのキャリアよりも柔軟といえる。反面、その仕組みを理解するのはかなり難しい。
もちろんいわゆる“2年/24カ月縛り”はある。新にねんを24カ月未満で解約する場合は、まず端末購入時の割り引き額である2万4000円を上限に、利用期間に応じた契約解除料が発生する。加えてアシスト1000あるいはアシスト1600を利用した場合は、端末代金の実質未払い分も契約解除料として一括で支払う必要が生じ、最大3万8400円ほどが契約解除料金として計上される。この額を一括払いする必要があるため、イー・モバイルの新にねんを短期解約するのはややハードルが高い。ただ、短期解約で実質の端末代金が割高になるのは最大2万4000円であり、他キャリアと比べても特別に高価なわけではない。
ちなみにアシスト1000あるいはアシスト1600に必要な“月額オプション費用”は、明らかに他社の「端末代金の分割払い分」に相当するものだ。ただ、そう述べていないのはユーザーの混乱や誤解を生むと考える。また、短期解約時にはその分割払い相応分を継続できない点が不親切といえる。
このほかに端末代金を購入時に一括で支払う「ベーシック」もあるが、新にねんと比べると端末価格と基本料金の割り引きがないため、大きなメリットもない。ちなみに、別途年間契約の「年とく割」に加入すれば基本料金が新にねんの場合と同額になるが、“1年縛り”であるために更新月以外の解約は契約解除手数料が発生する。この場合も端末代金の値引きが一切ないことに変わりはなく、ベーシックと新にねんで2年間同じ料金プランで利用する場合、実質の端末代金と利用料金の合計額が最大で4万8000円も異なる場合がある。イー・モバイルを使うなら、現状は利用期間に関わらず「新にねん」で契約するのがベターといえるだろう。
(続く)
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