モバイルWiMAX、「PC内蔵」でどこまで“粘る”か:“ギリギリ”エリアで試す(2/2 ページ)
モバイルWiMAXは内蔵型と外付け型のどちらが幸せか。「LOOX R WiMAXモデル」を用い、電波ギリギリエリアでどこまで“粘る”かをチェックした。
「ぎりぎり」の場所なら、内蔵型が少し有利……か
通信のテストは、東京・大手町のITmedia社内(ビル7階、UQ WiMAXのピンポイントエリア検索判定結果:△~○/2009年8月現在)で行った。付属するユーティリティソフト「インテルPROset/Wiress WiMAX接続ユーティリティ」で測定した内蔵モジュールのCINR値(Carrier to Interference and Noise Ratio:電波状況を示す値)が平均で15db(NECアクセステクニカ「UD02NA」+UQ WiMAX Connection Utilityのアンテナ表示本数は5本中1~2本)程度となる、「電波はやや弱め」な場所だ。
このうち、CINR値が計測時最大の20dbとなった南側窓ぎわをはじめ、同12dbほどのPC USER編集部、同6dbほどの奥まった会議スペース(南側の窓から15メートル、東側の窓から30メートル、北側と西側はコンクリート壁)、同2dbのPC USERテストルーム(南側にスチール扉、ほか3方は壁)において、LOOX R WiMAXモデルの内蔵モジュールとともに、同機に接続したUD02NA(PCカードスロット接続)とUD01OK(USB接続/WiMAX Wi-Fiゲートウェイセットの子機)を用いてモバイルWiMAX通信の「入り具合」と通信速度を計測し、比較対象に「A2502 HIGH-SPEED」+ドコモのFOMAハイスピード(7.2Mbps HSDPA/moperaU)環境を用意した。
通信速度の結果は上記グラフのとおり。CINR値が12dbを超える場所であれば、Webサイト閲覧を中心とする一般的なインターネット利用が“ほどほど快適”であり、20dbを超えると電波状況が最良のFOMAハイスピード環境の通信速度も一気に追い抜き、“ウルトラ快適”になる。
また、電波状況が悪い場所においてはPC内蔵型のメリットをそこそこ享受でき、“粘る”ことが確認できた。例えばCINR値が2dbだったテストルームは、端末を手で覆うと切断されるほどの“ギリギリエリア”だ(パームレストの下にあるPCカードスロットに差して使用するUD01NAは意識せず手のひらが覆ってしまう、さらなるデメリットがある)。モバイルWiMAXの電波状況が悪いエリアにおいて、外付け型端末は接続が不安定になる(ひんぱんに切断、自動接続を繰り返す)挙動も過去に何度か体験しているが、内蔵モジュールでの通信は遅いながらも一応は行えており、バッテリーが切れるまで接続も維持した。
「つながれば、快適」は大いにメリット──ただ、3Gデータ通信にまだかなわない部分も
現状のモバイルWiMAXサービスは「つながれば、快適」だ。携帯通信事業者が展開するPCデータ通信サービスと比べて導入しやすく、月額のランニングコストもほどほど安価に運用できる(UQ WiMAX UQ Flatの場合、4480円/月)。
一方、今回の計測場所(と計測時間)においては、3Gデータ通信の高い安定性にも改めて感心する。数メートル屋内を移動しただけでこれだけ通信速度が変わるモバイルWiMAXに対し、どの計測場所でも下り4Mbps以上/上り約360kbps(最大速度のほぼ上限)を示す安定性は「つながらなければ話にならない」と考える多くのモバイルPCユーザーにとって捨てがたい。ちなみにFMV-BIBLO LOOX Rシリーズは、3Gデータ通信モジュールを内蔵するワイヤレスWANモデルも用意するが、ノートPCに内蔵できるのがモバイルWiMAXか3Gデータ通信のどちらか1つ──となると、悩ましい選択だ。
ともあれ、サービスエリア拡充期の2009年8月現在における「WiMAX内蔵PC」は、アンテナ特性のよさにより使用できる場所が外付け端末より“いくらか広くなる可能性がある”こと、なにより使用時の手間や破損・紛失の心配が減るのが大きなメリットといえる。PCに標準で備わるなら、1日課金制プラン「UQ 1 Day」(2009年10月開始予定。24時間:600円でUQ Wi-Fiも利用可能)が安価かつ手軽に使えそうであること、1契約で最大3台までWiMAX端末を登録できる「WiMAX機器追加オプション」があることをふまえ、さらにサービスエリアの拡充を期待すると、今後のノートPCの購入比較ポイントに「WiMAX内蔵か否か」を含めるのは悪くはない選択と言えそうだ。
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