モバイルWiMAX、「PC内蔵」でどこまで“粘る”か“ギリギリ”エリアで試す(2/2 ページ)

» 2009年08月12日 11時00分 公開
[岩城俊介,ITmedia]
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「ぎりぎり」の場所なら、内蔵型が少し有利……か

 通信のテストは、東京・大手町のITmedia社内(ビル7階、UQ WiMAXのピンポイントエリア検索判定結果:△〜○/2009年8月現在)で行った。付属するユーティリティソフト「インテルPROset/Wiress WiMAX接続ユーティリティ」で測定した内蔵モジュールのCINR値(Carrier to Interference and Noise Ratio:電波状況を示す値)が平均で15db(NECアクセステクニカ「UD02NA」+UQ WiMAX Connection Utilityのアンテナ表示本数は5本中1〜2本)程度となる、「電波はやや弱め」な場所だ。

photophotophoto LOOX Rの内蔵モジュール以外に、右側面にPCカードスロット接続の「UD02NA」、左側面にUSB接続の「UD01OK」と比較対象用の「A2502 HIGH-SPEED」を接続した、“WiMAX、無意味に盛りだくさん”のスタイルで個別計測した(写真=左)。計測場所は一応「△〜○」判定だが、屋内においてはほんの数メートルの範囲で電波状況に大きな差が出る(画像=中)。インテルPROset/Wiress WiMAX接続ユーティリティで各種信号状況を確認できる(画像=右)

 このうち、CINR値が計測時最大の20dbとなった南側窓ぎわをはじめ、同12dbほどのPC USER編集部、同6dbほどの奥まった会議スペース(南側の窓から15メートル、東側の窓から30メートル、北側と西側はコンクリート壁)、同2dbのPC USERテストルーム(南側にスチール扉、ほか3方は壁)において、LOOX R WiMAXモデルの内蔵モジュールとともに、同機に接続したUD02NA(PCカードスロット接続)とUD01OK(USB接続/WiMAX Wi-Fiゲートウェイセットの子機)を用いてモバイルWiMAX通信の「入り具合」と通信速度を計測し、比較対象に「A2502 HIGH-SPEED」+ドコモのFOMAハイスピード(7.2Mbps HSDPA/moperaU)環境を用意した。


photophotophoto 計測場所において最もCINR値が高かった南側窓ぎわ(写真=左)。かなり電波状況が悪くなった、窓から離れた会議スペース(写真=中)。“ギリギリ”エリアのPC USERテストルーム(写真=右)
同一PCで計測した通信速度の違い内蔵UD02NAUD01OK(参考)FOMAハイスピード(A2502 HIGH-SPEED/mopera U)
平均最大平均最大平均最大平均最大
窓際(CINR値:20db)下り8.87M9.46M9.78M9.41M5.95M8.14M4.3M4.39M
上り609k693k698k706k674K1.24M366k367k
机(CINR値:12db)下り2.96M4.83M1.14M1.05M1.31M1.60M3.91M4.36M
上り36k67k47k51k88k90k336k367k
奥の会議スペース(CINR値:6db)下り1.86M2.39M(接続不安定)1.38M1.16M2.01M4.21M4.22M
上り34k67k(接続不安定)42k38k57k366k367k
テストルーム(CINR値:2db)下り70k232k圏外圏外圏外圏外4.25M4.4M
上り26k29k圏外圏外圏外圏外340k345k
※単位:bps
※使用PC:富士通「FMV-BIBLO LOOX R/D70(WiMAXモデル)」
※計測場所:東京・大手町(ビル7階) ITmedia社内
※計測はspeed.rbbtoday.comで実施

photo 電波状況別に計測した下り通信速度の違い
photo 常に圏内のFOMAネットワークはさておき、おそらく“ギリギリ”のモバイルWiMAXエリアとなるテストルームでは、内蔵モジュールのみ接続できた(なお、信号レベルは“中”とあるが、CINR値は虫の息の2db。インテルPROset/Wiress WiMAX接続ユーティリティは少し大げさに信号レベルを示す傾向があるようだ)

 通信速度の結果は上記グラフのとおり。CINR値が12dbを超える場所であれば、Webサイト閲覧を中心とする一般的なインターネット利用が“ほどほど快適”であり、20dbを超えると電波状況が最良のFOMAハイスピード環境の通信速度も一気に追い抜き、“ウルトラ快適”になる。

 また、電波状況が悪い場所においてはPC内蔵型のメリットをそこそこ享受でき、“粘る”ことが確認できた。例えばCINR値が2dbだったテストルームは、端末を手で覆うと切断されるほどの“ギリギリエリア”だ(パームレストの下にあるPCカードスロットに差して使用するUD01NAは意識せず手のひらが覆ってしまう、さらなるデメリットがある)。モバイルWiMAXの電波状況が悪いエリアにおいて、外付け型端末は接続が不安定になる(ひんぱんに切断、自動接続を繰り返す)挙動も過去に何度か体験しているが、内蔵モジュールでの通信は遅いながらも一応は行えており、バッテリーが切れるまで接続も維持した。


「つながれば、快適」は大いにメリット──ただ、3Gデータ通信にまだかなわない部分も

photo  

 現状のモバイルWiMAXサービスは「つながれば、快適」だ。携帯通信事業者が展開するPCデータ通信サービスと比べて導入しやすく、月額のランニングコストもほどほど安価に運用できる(UQ WiMAX UQ Flatの場合、4480円/月)。

 一方、今回の計測場所(と計測時間)においては、3Gデータ通信の高い安定性にも改めて感心する。数メートル屋内を移動しただけでこれだけ通信速度が変わるモバイルWiMAXに対し、どの計測場所でも下り4Mbps以上/上り約360kbps(最大速度のほぼ上限)を示す安定性は「つながらなければ話にならない」と考える多くのモバイルPCユーザーにとって捨てがたい。ちなみにFMV-BIBLO LOOX Rシリーズは、3Gデータ通信モジュールを内蔵するワイヤレスWANモデルも用意するが、ノートPCに内蔵できるのがモバイルWiMAXか3Gデータ通信のどちらか1つ──となると、悩ましい選択だ。

 ともあれ、サービスエリア拡充期の2009年8月現在における「WiMAX内蔵PC」は、アンテナ特性のよさにより使用できる場所が外付け端末より“いくらか広くなる可能性がある”こと、なにより使用時の手間や破損・紛失の心配が減るのが大きなメリットといえる。PCに標準で備わるなら、1日課金制プラン「UQ 1 Day」(2009年10月開始予定。24時間:600円でUQ Wi-Fiも利用可能)が安価かつ手軽に使えそうであること、1契約で最大3台までWiMAX端末を登録できる「WiMAX機器追加オプション」があることをふまえ、さらにサービスエリアの拡充を期待すると、今後のノートPCの購入比較ポイントに「WiMAX内蔵か否か」を含めるのは悪くはない選択と言えそうだ。

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