ウィルコム以外のAndroidスマホでも“だれ定”が使える「WX12K」とは:2台持ちがさらにはかどる?
一見、普通の折りたたみケータイに見える京セラの「WX12K」。ウィルコム端末として“だれ定”が利用できるだけでなく、他キャリアのAndroidスマホでも定額通話が利用できる唯一の存在だ。
ウィルコムの京セラ製PHS「WX12K」は、折りたたみ型ボディのスタンダードな音声端末だ。見た目はおなじみのフィーチャーフォンそのものだが、Bluetooth接続したAndroidスマートフォンにPHSの「だれとでも定額」通話サービスを提供できる新機能など、ほかにはない特徴を持っている。
WX12Kのメインディスプレイは3インチワイドQVGA(240×400ピクセル)液晶で、パネル全体を振動させて音と振動で通話音声を伝える「スマートソニックレシーバー」を採用。スマートソニックレシーバーは京セラ製のスマートフォンやフィーチャーフォンへの搭載が進んでいるもので、騷がしい場所でも相手の声がクリアに聞こえるのがメリットだ。もともとPHS回線は音質が良いため、その良さをさらに生かすことができる。
背面にはサブディスプレイとして0.9インチの128×36ピクセル表示有機ELを搭載し、ディスプレイを閉じたままでも時刻や着信などを確認できる。メインカメラには有効約500万画素CMOSを採用するが、インカメラは非搭載だ。そのほか、Bluetoothのほか赤外線通信と外部メモリ(最大32GバイトまでのmicroSDHC)をサポートした。
サービス面ではフルブラウザとJava、Flashプレイヤー、ウィルコムが提供するEメール/ライトメールに加え、PCメール(POP3/SMTP)も利用。ボディは防水(IPX5/IPX7)・防塵(IP5X)対応に加えて、米国防総省が求めるMIL規格相当の耐衝撃性能も備えた。ワンセグとおサイフケータイには非対応だ。
WX12Kは細部のディテールにこだわった折りたたみボディにカメラやブラウザを搭載し、緊急速報メールに対応するなどフィーチャーフォンの1台目需要も満たす製品に仕上がっている。
しかし最近のウィルコム端末は通話とメールに機能を絞り、スマートフォンとBluetooth連携して“子機”にできる機種など、いわゆる2台持ちを意識したものが主流。WX12Kもその点は変わりなく、さらに「だれとでも定額パス WX01TJ」と同様の機能によりスマートフォン連携を強化した。
「Nexus 5」でPHS通話をしてみる
ウィルコムの「だれとでも定額」は、月額980円(税込、以下同)で1回10分以内の国内通話が月500回までかけ放題になる同社の通話オプションだ。主力の基本プラン「新ウィルコム定額プランS」(1450円)のみでもPHS間の無料通話が可能だが、“だれ定”をプラスすることで他キャリアの携帯電話や固定電話も無料通話が可能になる。
当然ながらだれ定を利用できるのはウィルコム端末のみだが、それを他キャリアのAndroidスマートフォンでも使えるようにしたのが、2013年7月に発表されたカード型アダプターのWX01TJという製品だ。
ただこのWX01TJにはマイクもスピーカーも、そしてダイヤルキーなどもないため、それ自体では通話できない。あくまでほかのスマートフォンと組み合わせて使う1.5台目という位置付けのデバイスだ。例えばスマートフォンのバッテリーがなくなると使えなくなるため、“2台目”としては役者不足の面がある(その分、月額料金は安く設定されている)。
せっかくもう1回線持つのであれば、それ自体で快適な通話が行える、またはバックアップ回線として万が一の際に通話やメールもできる端末を求める人も多いだろう。しかし常に2台の端末を手にするのは難しいため、普段は1つの端末(スマートフォン)で複数の回線を使いたい――というニーズに応えるのが、このWX12Kだ。
WX12KのPHS回線をスマートフォンで使うには、対応のAndroidスマートフォンに専用の「だれとでも定額パス」アプリ(無料)をインストールする必要がある。1つ注意が必要なのは、このアプリとWX12Kの組み合わせに対応する機種が、2月24日現在で20機種と限られている点だ。これは接続に用いるBluetoothのプロファイル(PVP)が特殊なためで、WX12Kでスマートフォン連携をしたいなら、まず手持ちの機種が対応しているのかをよく確認してほしい。
またBluetoothで接続するため、WX12Kとスマートフォンの待受時間はスペック上のものより短くなる。WX12Kの待受時間は最大約720時間と長いため、スマートフォン側のバッテリー持ちには注意しておきたい。
前置きが長くなってしまったが、対応機種の1つである「Nexus 5」とWX12Kを連携させてみた。だれとでも定額パスアプリから、Bluetoothを待受状態にしたWX12Kを検索して2台をひも付ける。その後、WX12Kを専用モードにすると、Nexus 5のだれとでも定額パスアプリからPHS経由で電話がかけられるようになる。
だれとでも定額パスアプリは3G回線の発着信もでき、端末のアドレス帳も参照できるため、標準の「電話」アプリと置き換えて使うのが良いだろう。なお、留守番電話などウィルコム回線のサービス設定もこのアプリから行なう。
この状態では、PHSと3Gの発着信ができるのはもちろん、3Gの着信履歴にPHSでかけ直すこともできる。スマートフォンの電話番号は着信専用にして、定額通話が可能なPHSを発信専用にするなんて使い方も便利だろう。この間、WX12Kは専用画面に切り替わり、電話が掛かってきても着信音が鳴ることはない(スマートフォン側の着信音がなる)が、PHSの発着信履歴はWX12Kに残るため、“だれ定”モードを終了させてWX12Kで改めて通話する場合もスムーズだ。
気になる音質だが、もともとのPHSが高音質のため、Bluetooth接続の割には快適だ。ただし、Nexus 5とWX12Kの距離が離れすぎたりすると、どうしても聞き取りにくくなる。外出時にかばんやポケットにWX12Kを入れたままスマートフォンでPHS通話をするのには問題ないが、自宅や会社などで、部屋やフロアをまたいで使うのは避けた方が良さそうだ。
使っていて気になったのは、Bluetoothを再接続する場合のひと手間。これはBluetooth接続機器の常だが、WX12KとNexus 5のBluetooth接続が途切れた場合も、それぞれ手動で接続操作が必要で、これにはWX12Kをだれとでも定額パスの専用モードにオン/オフする操作も含まれている。スマートフォンのWi-Fi接続のように自動またはワンタップですぐスタンバイというわけにはいかないので、これには慣れが必要だ。
4Gスマートフォンで通話料を節約するなら、パケット通信を利用する通話アプリやIP電話アプリを使うのも1つの方法。しかし固定電話相手に定額通話をする機会が多いなら、現時点でウィルコムの「だれとでも定額」サービスもかなり有力な選択肢だろう。
またウィルコムにはPHS通話が可能なスマートフォンの「DIGNO DUAL 2 WX10K」や「AQUOS PHON es WX04SH」などもあるが、スペックはあまり高くない。進化が早いスマホと通話用の端末を分けておきたいというニーズもある。WX12Kであれば、普段は好きなスマートフォン経由で格安かつ高音質なPHS通話を利用しつつ、いざという時は使い慣れた折りたたみボディでしっかりと通話をする、という使い方が可能だ。
スマートフォンユーザーだが通話も多いという人には、検討の価値がある1台といえるだろう。
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