MVNOの定額無制限プランはどれだけ快適?――ぷららモバイルLTEとU-mobileのSIMをレビュー(後編)(2/2 ページ)
NTTぷららの「ぷららモバイルLTE 定額無制限プラン」と、U-NEXTの「U-mobile データ専用 LTE使い放題」のレビュー後編では、住宅地、乗換駅、ランチタイムのオフィスビルなどで速度を測ったほか、YouTubeやブラウジング利用時の体感速度も検証した。
通信速度以外の違いはどうなのか
ここまでは数値化しやすい通信速度の比較を行ってきた。ここでは少し視点を変えた比較を行ってみる。
まずスマートフォンでは人気の用途であろうストリーミングでの動画再生は、YouTubeで比較してみた。比較に使ったのは「Lantis Channel」に登録されているμ'sのHD品質の試聴動画だ。2社とも共通していえるのは、スムーズに再生が可能なのはおおむね360p(360×640ピクセル)が上限であること。YouTubeで回線状態を確認して画質を自動調整してくれるが、早朝・深夜のそこそこ下り速度が高速な時間帯でも360pで再生されることが非常に多い。
強制的に720p(720×1280ピクセル)に切り替えると短時間720pで再生可能なこともあったが、たいていデータの受信が間に合わなくなり再生が一時停止しまう。深夜・早朝の時間帯だとU-mobileは720pで再生開始されることが多かったが、これはぷららが最大3Mbpsという帯域制御を行っていることも影響しているのだろう。ただ、U-mobileも720pのまま10分を超えるような動画を最後までを再生できることはほとんどなかった。
360pなら5型クラスのスマートフォンで全画面再生にしても十分楽しめるだろうが、下り1Mbpsを切るような環境では144pになってしまうことも多く、ワンセグに近い画質になる。通勤時間帯やランチタイムは144p、よくて240pが停止せずに再生できる上限の解像度になることが多かった。2社のMVNOが下りで1Mbpsを切るような環境でもドコモ契約であれば難なく360pや720pで再生できることが多く、大きな差を感じた。
通信速度という点では大きな差はでなかったMVNO2社だが、ブラウジングをしていると異なる印象を持つこともあった。ページ全体のレンダリングに要する時間はあまり変わらないのに、U-mobileの方がぎこちなさを感じたのだ。これは通信速度が遅いときほど目立って感じた。
そこで2社でおおむね同等の下り速度の環境で、テザリング可能なスマートフォン(Ascend G6)にSIMを差し替えてPCからのインターネット接続に利用し、ftpで途切れなくデータを下りした場合の下り速度の変化をモニターしてみたとこと、少し異なる傾向が見られた。ぷららの方が下り速度の変動幅が小さく、一定速度でデータを下りしていることが多い。
これはぷららが3Mbpsという通信速度の上限を設けてアクティブに帯域制御を行っていることも影響していると思うが、ブラウジングに限るとレンダリングがスムースに感じた。もちろん帯域制御はMVNOでの通信も含めてドコモがドコモ網内でも行ってはいるだろうし、U-mobileも全く行っていないわけではないだろう。2つのMVNOはそれぞれ検証時点でのユーザー数も違えばドコモとの接続速度も異なる可能性は極めて高いので、これが上記の要因になった可能性もある。2社のMVNOサービスをほぼ同時に利用して体感できた数少ない違いでもあったので、あえて取り上げさせたもらった次第だ。
まだ期待通りとはいえないが、存在意義は示した2社の高速・無制限サービス
大きな期待を背負ってサービスを開始したMVNO2社の「高速・無制限」をうたうデータ通信サービス。今回の検証結果で判断する限り、多くの人が期待する高速なデータ通信サービスという域までは、その品質は達していないように思う。もちろんその料金水準と高速データ通信量無制限という点を考慮すれば、MNOであるドコモ契約に対して同等の通信速度を実現することは無理なことは分かっているが、プライムタイムになると下り1Mbpsを簡単に割り込んでしまうのは、少なくとも一般的なユーザーの期待する「高速」というイメージからはかけ離れているのではないだろうか。
一方で、128~200kbpsを目安に通信速度を制限することで低料金を実現しているいわゆる「格安データSIM」と比較すると、条件次第では数Mbpsの送受信速度が得られているし、さすがに200kbpsを割り込むようなこともほとんどなかった。
スマートフォンでのメール送受信、SNS利用、ニュースサイトのブラウジングといった使い方であれば、あえてドコモ契約のSIMを装着したスマートフォンと並べて比較でもしない限り、通信速度の遅さを感じることもなかった。もちろん普段からスマートフォンでもPCサイトを見ることが多かったり、動画サイトを見ることが多かったりする人だと違う感想を持つとは思うが、スマートフォン向けのサイトやコンテンツを利用する限り「高速」という表記は必ずしもウソではないと思うし、比較対象が「格安データSIM」とすれば、「高速」という表記は妥当だろう。
あとは料金とのバランスになると思うが、現状はなかなか微妙だ。今回取り上げたU-mobileとぷららの月額料金(2480円と2760円)なら、7Gバイト/月程度のプランを提供しているMVNOサービスもある。つまり、7Gバイトを超えるような月あたりのデータ通信量がなければ単純にお得にはならない。
ネットで動画をバンバン見る、PCからのインターネットアクセスが多いという人なら7Gバイト/月は簡単に超えるかもしれないが、現状のプライムタイムでは快適な通信速度が得られているとはいえない。
とはいえ、利用可能エリアが広く、スマートフォンなどで直接インターネット接続ができることの魅力は大きいし、今後ユーザーが増えていくことで快適さは増していくだろう。より多くのユーザーがより広い帯域を共有することで帯域の利用効率も上がるからだ。実際ぷららは筆者も個人的に契約して使っているが、12月中旬の段階では今回計測を行った11月中旬よりも通信速度は底上げされている。下りが1Mbpsを切ることが少なくなり、2Mbps以上でかなり快適な通信速度が得られる状況も増えた。
競合サービスも増えているので、いい意味でユーザーが分散し始めたという影響もあるだろう。今回比較した2社のサービスも含め、MNOがおそらくは提供することのないデータ通信量無制限サービスの継続的提供と通信品質の向上を願わずにはいられない、それが筆者の偽らざる思いだし、始まったばかりのサービスをユーザーも少し暖かい目で見守ってほしいと思う。
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