マザボアートに「ヒィィィ」となるテストにランチまで――台湾のASUS本社を見学してきたゾ:ASUS本社潜入リポート(1/2 ページ)
世界最大級のコンピューター関連イベント「COMPUTEX TAIPEI 2015」の開催に合わせて開催されたASUS本社のメディアツアー。普段見られない同社の品質への取り組みや社内の様子を、写真を中心に紹介しよう。
ASUSTek(ASUS)は、マザーボードやビデオカードなどのPCパーツをはじめ、ノートPC、タブレット、最近ではスマートフォンなどを開発・販売している、世界的なコンピューターメーカーのひとつだ。かつては社名の読み方論争が起こり、「エイスース」に統一されたのが記憶に新しい。
ASUSの本社は、台湾の首都、台北市北部の北投区にある。周囲には田園が広がり、比較的のどかな場所で、台湾有数の「北投温泉」と、夕焼けの美しさで有名な「淡水河」の近くにある。日本に暮らしているせいか、PCメーカーの本社は都会のど真ん中にあるイメージが強かったので、少々意外だった。
マザーボードアートを発見
約5000人の社員が働くというビルに入ると、受付横には雄牛のオブジェがあった。雄牛は、株式市場において“株価を押し上げる”という縁起のいい動物なのだそうだ。そして、この牛はタイル上にカットされたASUS製のマザーボードで作られている。ASUSはPCのマザーボードで世界最大のシェアを占める企業なので、とても“らしい”オブジェだといえる。
ロビーには、同じくマザーボードで“描かれた”「モナ・リザ」もあった。なぜモナ・リザなのか、と聞くと、「モナリザの作者であるレオナルド・ダ・ヴィンチは右脳と左脳を使える人物。弊社でも右脳と左脳、しいては“デザイン”と“技術”の両方を意識できる人材を生み出したいとの願いが込められています」(ASUS担当者)とのこと。社内には優秀な社員を集めた「ダヴィンチラボ」なるものもあるそうだ。
秘密の扉の中で日夜繰り広げられる「テスト」
担当者に「ついてきてください」と言われ社内を突き進むと、そこには「QTR」の文字が。一体、何をする部屋なのだろうか……。入る前から緊張してしまう。
担当者に聞いてみたところ、QTRは「Quality(品質)」「Technology(技術)」「Reliability(信頼性)」の頭文字を取ったものだという。要するに、QTRは、ASUS製品の品質、技術、信頼性を担保するための検証施設なのだそうだ。読者の皆さんが頭文字から想像したであろう「Quality Testing Room(品質試験室)」という意味も当然込められている。
本社に置かれたこの検証施設は、2015年に新たな設備を導入し、現在までの投資総額は日本円にして約8億円だそうだ。中国の蘇州にも同様の施設を構えているという。規模の小さいメーカーでは、一般に外部企業に品質や動作に関する検証を委託している。ASUSのこの施設は、製品試験を行う施設に関する国際規格「ISO/IEC 17025」を取得しており、外部の会社からの検証依頼も引き受けるだけの能力を持っている。メーカーが自前でこういった設備を持つことは非常に稀(まれ)だという。
さっそく、どんな設備があるのかを紹介していこう。ただし、残念ながらここから先のエリアは撮影禁止だったため、同社に提供された写真を用いて説明する。一部、写真のない検証施設もあるが、そこは想像力を働かせてほしい。
温度、気圧と耐水テスト
最初は高温と低気圧環境下での動作を検証する設備だ。気温の低い場所での使用や、空輸時のダメージを見るのに必要なテストを行う。突然の気圧の上下で製品はダメージを受けるので、それに耐えうるかどうかを検証するのだ。
また、中国では真冬に気温が氷点下30度まで下がる地域もあることを踏まえて、氷点下20度の場所から30度と、50度も気温差のある環境を作って、製品の動作を検証することもあるという。
次に見学したのは、防水検証設備。一定の水圧がかかった水を定められた時間だけ製品にかけて、内部への水の侵入などを確認する。スマホやタブレットには、IPコードとして防水性能を表す数値が明記されることがあるが、それを満たしているかどうか実際に確かめるのだ。防じん・防噴流を示す「IP55」性能を有する同社のスマートウォッチ「ZenWatch」も、この設備でテストしたそうだ。
さらに、水深200メートルまでの水圧を再現できる設備で耐水圧テストも行う。この設備では、シャワーを浴びる際の水圧なども再現できるという。
同社の製品は世界中に出荷されることもあり、全世界の温度と湿度が再現できる設備もあった。筆者が訪れたときは東南アジアを想定した気温40度、湿度90%前後のテストを行っており、実際にそのボックスに手を入れると、想像以上のヘビーな環境で驚いた。これだけ過酷な環境でもPCが使われるとあれば、“ここまで”やる必要はありそうだ。
物理的耐久力テスト
次に見学した製品の寿命を検証する設備では、パネルに圧力をかけるテストが行われていた。スマホやタブレットなど、ポケットやカバンに入れて持ち歩くデバイスに、圧力をかけて、正常に動作するかどうか検証するそうだ。ひたすら圧力をかけられ続けるスマホやタブレット……見ているだけで心がザワザワする。
ノートPCの場合は、ヒンジの耐久性を見るために、ひたすらディスプレイ部を開閉させるテストも行っていた。地味な光景だがなかなか面白いものだ。
また、物理的に故障しやすいボタンやキーボードをかなりの速度で繰り返し押すテストもある。ほかにも、HDMIやオーディオケーブルなどのコネクタの耐性を見るために、抜き差しを繰り返す設備もあった。
「落下テスト」では、テーブルや机を想定した高さから製品を落下させた後、動作を確認していた。衝撃テストでは、製品を固定した状態で台ごと落下させ、内部のパーツが衝撃に耐えられるのかを検証していた。落下して床にぶつかるときの音がけっこう大きいので、ちょっとビックリしてしまった。
音にビックリしている筆者を次に待ち受けていたのは、想像するだけでヒヤッとする「自由落下テスト」だ。製品の輸送時を想定して、梱包した状態で製品を落とすという試験だ。輸送時を想定したテストとしては、陸運、海運、空運を想定した「振動テスト」も行われていた。これらは製品を問わず行われるテストとのことだ。
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