生活と体験がクロスする――ZからXに生まれ変わった「Xperia X Performance」開発秘話:開発陣に聞く(1/3 ページ)
ソニーモバイルのXperiaが、2016年夏モデルで「Xperia X Performance」にリニューアルした。Zシリーズの技術を継承しつつ、本体の持ちやすさや使い勝手にこだわった。Xperia X Performanceはどのようなコンセプトの元に開発されたのか?
2013年からZシリーズを提供してきたソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia」が、2016年夏モデルでは「X」シリーズにリニューアルした。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクから発売された「Xperia X Performance」は、ソニーが培ったディスプレイ、カメラ、オーディオの技術は継承しつつ、本体の持ちやすさや使い勝手にこだわったモデルだ。プロセッサはQualcommの最新製品「Snapdragon 820」を採用し、バッテリーの寿命を従来機から向上させるなど、製品名が示す通りパフォーマンスも重視した。
Xperia X Performanceはどのようなコンセプトの元に開発されたのか。「X」に込めた意味とは? 商品企画担当の矢部氏、デザイン担当の植田氏、カメラ設計担当の生江氏、ディスプレイ設計担当の内田氏に話を聞いた。
- →Xperiaは「インテリジェンス」を持つコミュニケーションツールへ――Xperia“第3章”の幕開け
- →「Xperia X Performance SO-04H」がグローバル版と違う3つのポイント
- →「Xperia X Performance」は買いなのか?――Zシリーズと比較しながら考える
背面素材をガラスから金属に変更した理由
ZシリーズからXシリーズに変更した意図について、矢部氏は「スマートフォンがさまざまな人の手に取ってもらうようになった中で、どんな製品が支持されるのかを検討しました。『X』はXperiaの頭文字でもあり、人々の生活に寄り添い、生活と体験がクロスすることを表します」と説明する。
この生活と体験がクロスするものの象徴として「インテリジェンス」を加えた。機械自体が知能を持ってユーザーに利便性をもたらすもので、分かりやすい例では、iPhoneの「Siri」やGoogleの「Google Now」のようなサービスが思い浮かぶ。端末メーカーでは、スマホが話しかけてさまざまな提案をしてくれる「エモパー」をシャープが提供している。
いわゆる「AI」と呼ばれるジャンルの中で、ソニーモバイルが具現化したのは上記のようなエージェント機能ではなく、カメラの「先読みAF」というピンポイントの機能強化だ。「AIをやろうというよりは、スマートフォンとして、より賢く寄り添うことが、インテリジェンスの考え」と矢部氏は話し、スマホの機能をより賢く進化させることに焦点を当てた。
Zシリーズでは一貫して「ガラス」を採用してきた背面の素材を「金属」に変更したのも、「人々の生活に寄り添うこと」を重視した結果だ。「スマートフォンは家電というよりアクセサリーと呼べるもので、生活になじんでいます。メタルの質感はスーツや時計にも合います」と矢部氏は説明する。
画面サイズが、Xperia Z1から続けてきた5.2型から5.0型に小さくなったのも気になるところだ。「スマートフォンの形やデザインについて大規模な調査を行い、さまざまなサイズを検討する中で、このサイズ(5.0型)が自信を持って出せるものでした」と矢部氏。最初から5.0というサイズに決めていたわけではなく、さまざまなモックアップを作りながら「日常的に使うスマートフォンの持ちやすさ」を検討したところ、結果的に5.0型がベストと判断した。
5.2型に慣れたユーザーにとっては物足りない感もあるが、「持ちやすさはご好評いただいている」(矢部氏)という。「手にすると、『こんなに持ちやすいんだ』と言われます。画面サイズが5.0か5.2かをご存じないお客さまは、あまり違いを感じないようです。持ちやすさに注力したことが響いているのだと思います」(同氏)
白と黒以外にも前面を加色できるようになった秘密
Xperia Zシリーズのデザインは、縦と横のどの方向からも美しく持ちやすい「オムニバランスデザイン」を採用してきた。Xperia X Performanceでもその方向性は大きく変えていないが、Zシリーズよりも丸みを帯びている。
植田氏は「Zシリーズまではハードウェア自体の質感やモノを主体としたデザインでしたが、Xシリーズからは、生活になじむ、寄り添った表現をしています。その現れが、背面のメタルから2.5Dガラスに向けてのカーブ、質感の切り替わりです」と説明する。ソニーモバイルは今回のデザインを「ユニファイドデザイン(統合されたデザイン)」と呼ぶ。
もう1つ大きく変更したのが、ライムゴールドとローズゴールドでもディスプレイ面を加色して、背面と前面でカラーを統一したことだ。さらに、各本体色に合わせた壁紙も用意し、「デフォルトの輝度だと、(本体と画面で)より一体感が出るようにした」(植田氏)。
白と黒以外にも加色できるようになったのは、ディスプレイの構造に秘密がある。内田氏は「これまでのディスプレイは、ガラス+液晶パネルの2層構造で、ガラスにタッチパネルを付けていました。今回は、液晶パネルの中にタッチパネルを入れた『インセルタッチパネル』を採用しました。タッチパネルを搭載するためには熱が必要ですが、白と黒以外で高熱に耐えられるインクがありません。しかし今回、外側はタッチパネルの機能を持たない単なるガラスなので、加色の自由度が増しました」と話す。
前面にはラウンドした2.5Dガラスを採用したことで柔らかい印象になった一方で、本体を落としたときにガラスが割れやすくなることが懸念される。矢部氏によると、Xperia Z5よりもガラスの厚みは増しており、強度が上がっているという。「落としても割れないとはいえませんが、満足いただけるレベルです」(同氏)
これまでのXperiaでは見られなかったライムゴールドとローズゴールドを採用したのは、「今はゴールドが定番色になりつつありますが、他社がやっている色をそのままやっても仕方ないので、ソニーらしさを加えたい」(植田氏)と考えた結果だ。「ライムゴールドは金属感をより美しく見せるために最適な色。ローズゴールドは、ゴールドに赤みを加えた色で、よりエレガントさを表現しました」(同氏)
カラーによって背面の処理を変え、ホワイトとグラファイトブラックはヘアライン加工を、ライムゴールドとローズゴールドにはサンドブラスト加工を施した。「ホワイトにヘアラインを入れるかどうかは悩みました。ヘアラインは男性寄りだと認識していましたが、意外と女性からの評判がよかったんです」と植田氏は反響を話す。
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