未完の大器と、進化の片りんと――新型MacBook Proに感じる「新時代への期待」(2/3 ページ)
新型MacBook Proの本命である「Touch Bar付き」の出荷が始まる。ノートPC分野におけるAppleの次世代への提案は、実際に使ってみてどうなのか。それを見ていきたい。
「Touch Bar」と「USB Type-C一本化」の是非はどうか
そして、新型MacBook Proを論じる上で避けて通れないのが、新世代インタフェースの「Touch Bar」と、過去の接続ポート類を全て捨てて搭載された「USB Type-Cポートへの一本化」である。
まず前者のTouch Barだが、物理的なファンクションキーに変わり、利用シーンやアプリに応じて柔軟に機能が割り振られるようになったことに対する可能性は感じる。例えば、メールアプリで宛先にメールアドレスを入力すると、過去に同じ相手にメールを送信した際にCC(同報機能)に入れた人のメールアドレスを自動的に推薦したり、写真アプリで写真を最大化した時にサムネイルがTouchBarに表示されてフリックで切り替えられたりと、アプリ側での対応次第でかなり気の利いた使い勝手になる。
Touch Barは小さいがRetinaクラスの解像度であり、タッチ操作に対する反応のよさはすばらしい。Touch Barでの操作に、まごつくことなくOSやアプリ側がリニアに反応するあたりは、「ハードウェアとソフトウェアの調和」を得意とするAppleらしいところだ。
しかしながら、現時点でのTouch Barを使ってみて、少し不満に感じた部分もある。
まず、Touch Barは「Touch Bar対応アプリ」でなければ何の意味もないこと。この場合はTouch Bar部分には「ESC」とシステム関連のボタンしか表示されず、宝の持ち腐れだ。物理キーボードの「fn」キーを押せば、Touch Bar部分に従来のファンクションキーが表示されるので、そちらで操作は可能だが、それであったなら「Touch Bar非対応アプリでは、ファンクションキーの常時表示」を初期設定にしてほしかった。また、AppleではTouch Barの仕様をサードパーティーのソフトウェアベンダーに広く公開するとのことなので、対応アプリそのものが急速に増えることにも期待したいところだ。
そしてもう1つ。実際に使ってみて、「Touch BarにもTaptic Engineと感圧センサーが欲しい」と強く感じた。Touch Barはマルチタッチ時のタッチパネルの一種であり、その反応はとてもよいのだが、実際に使っていると“反応がよすぎて誤作動する”ケースもあったのだ。とりわけ「ESC」ボタンに誤って触れてしまうと、それだけでESC機能が発動してしまうのはいささか閉口してしまった。Touch Barにはフリック操作などを実現するタッチパネルならではのよさは確かにあるのだが、やはり物理キーの置き換え部分では、「押す感触(感圧センサー)」と「押し込んだ際の反応(フォースフィードバック)」は欲しいと感じた。このあたりは次世代以降のTouch Barに期待したいところだ。
一方、接続ポートのUSB Type-Cへの一本化についてだが、過渡期ならではの不便さは確かにある。とりわけ従来のUSBポートが完全になくなってしまったため、iPhone/iPad付属のLightningケーブルすら使えなかったり、デジタル一眼カメラなどと既存のUSB-MicroUSBケーブル1本で接続できなくなってしまったのには、さすがに不満が生じた。新型MacBook Proから旧式のポート類を全てなくすという意義は分かるものの、しばらくはUSB Type-Cと従来型USBの変換アダプターを標準付属にしたり、従来の純正LightningケーブルをUSB Type-C仕様に無償交換するなどの移行サポートはすべきだったと思う。
しかしその一方で、USB Type-Cに一本化していくこと自体が間違っているとは感じなかった。最近ではクラウド経由やワイヤレスでデータのやりとりをすることが増えており、ビジネスユースではUSBメモリなどは使用禁止のケースが増えている。また新型MacBook Proの発表以降、USB Type-C関連の周辺機器やアクセサリーが次々と発表されており、遠からずUSB Type-Cは一般的になっていくだろう。
他方で、USB Type-C PD対応のサードパーティー製充電器やケーブルを使って、新型MacBook Proを充電できるというのはUSB Type-C移行の大きなメリットだろう。15型モデルは純正の充電器が87W仕様でありサードパーティー製の機器だと厳しいが、13型モデルは61Wであり、複数のUSB-PD対応機器を使うことができた。
新型MacBook Pro 13型モデルを、チーロ製のモバイルバッテリーで充電している様子。USB Type-C端子になった大きなメリットが、サードパーティー製の充電器やモバイルバッテリーが使えることだろう。
例えば、Ankerの「PowerPort+ 5 USB Type-C Power Delivery」を使って新型MacBook Pro 13型モデルを充電してみたが、純正品よりも充電時間は若干長くなるものの、問題なく利用可能。またUSB-PD対応のケーブルを用いて、モバイルバッテリーからの充電も試みたが、こちらも充電は不安定もしくは長時間かかる感じだったが、給電自体は可能だった。とりわけ新型MacBook Proの13型モデルは、モバイル利用が多く想定されるため、汎用(はんよう)的なUSB-PD対応機器が使えるメリットはかなり大きいといえる。
関連キーワード
MacBook Pro | Touch Bar | トラックパッド | Apple | Touch ID | Apple Pay | 指紋認証 | MacBook Air | iPhone 7 Plus | macOS
関連記事
これぞ伝統的MacBookの集大成――新型MacBook Pro(Touch Barなし) 13型 ファーストルック
新型のMacBook Proは、フルモデルチェンジに恥じないものになっている。今回、発表されたばかりのMacBook Pro 13型(Touch Barなし)を借りていち早く試す機会を得た。まずはファーストインプレッションをお届けしたい。それは見事なまでの調和――新型MacBook Proを触れて感じた“上手な革新”
今回発表された新生MacBook Proの魅力はどのようなものなのか。とりわけiPhoneユーザーが買うノートPCとして、どのような価値があるのか。Apple Special Eventの発表を交えながら、ハンズオン会場でのファーストインプレッションをお届けしたい。最も薄くて軽い「MacBook Pro」が登場 キーボード上部にTouch Barを搭載
新型MacBook Proはアプリに応じて機能が変わるガラスのバーを内蔵。進むiOSからのフィードバック――Siriで感じた「macOS Sierra」への期待
WWDC 2016において、Mac用OSの最新版「macOS Sierra」が発表された。macOS Sierraはどのような進化を遂げようとしているのか。プレビュー版を使う機会を得たので、検証していきたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.