スマホの値段がタダになる? ロック画面に広告を出すトルコ製スマホ:山根康宏の海外モバイル探訪記
スマートフォンのロック画面に広告を表示させる取り組みをしているのが、トルコの家電メーカー、Vestelです。同社はここで新たな収益を得ようとしています。そんなVestelのスマートフォンを紹介します。
スマートフォンの画面がロックされている時、ディスプレイには基本的には何も表示されません。この画面を有効利用しない手はもったいないと、トルコの家電メーカー、Vestelは広告を表示することで新たな収益を得ようとしています。
Vestelは中東やロシアなどで名前の知られているトルコの大手家電メーカーです。東芝がテレビ事業を売却するときに候補として名前が挙げられたほどの巨大企業で、欧州では他社ブランド名での製品展開も行っているとのこと。白物家電も冷蔵庫や洗濯機など家電メーカーとして一通りの製品を展開していますが、ここ数年はスマートフォン事業にも進出しています。
Vestelのスマートフォンは同社の頭文字でもある「V」のロゴに、「Venus」のブランド名で製品を展開しています。最上位モデルの「Venus Z10」でもプロセッサはSnapdragon 435を採用するなど、コストパフォーマンスを重視した製品展開を行っています。ディスプレイは5.2型フルHD、カメラはアウト1300万画素+イン800万画素。しかし仕上げは美しくデザインを重視しており、安っぽさは感じられません。1499トルコリラ(約4万8000円)という価格で販売されています。
しかしスマートフォンは大手メーカーのみならず低価格品で攻勢をかけてくる中国メーカーとの競争が厳しいところです。そこで現在開発しているのが、スマートフォンのロック画面に広告を表示する新しいビジネスモデル。AmazonがKindleにキャンペーン情報付きモデルを販売していますが、それと類似したビジネス展開というわけです。
2017年9月にベルリンで開催されたIFA 2017の同社ブースでデモを見せてもらいました。スマートフォンをロック状態にすると、しばらくしてから画面に広告が表示されます。広告は製品情報などを表示するだけではなく、画面タッチでショッピングサイトを開くことも可能です。ただしページを開く前には画面のロックは解除する必要があります。広告は設定により数秒ごとにいくつかを入れ替えて表示することもできるようです。
デモでは同社の製品広告が表示されていましたが、担当者によると既に複数の企業と広告表示のテストを行っているとのこと。そしてここから広告収入が得られるようになれば、スマートフォンの価格をその分引き下げることも可能になるだろうとのことです。Kindleのキャンペーンモデルと同じ仕組みですね。うまくいけば2018年あたりに広告付きのVestelのスマートフォンが登場するかもしれません。
この広告プラットフォームを通信事業者と共同で展開すれば、ショッピングの利用金額に応じて毎月の基本料金を後から割引する、といったこともできそうです。またエントリークラスのスマートフォンであれば、広告表示の代わりにスマートフォン本体は無料、なんて販売もできるかもしれません。
常にディスプレイ表示をオンにするとバッテリーを食うため、スマートフォンの使用可能時間が短くなってしまうなど、まだ課題は多いでしょう。でも誰もが毎日持ち歩いている「真っ暗な画面」に広告を配信するというアイデアは、ハードウェアメーカーに新たな収益をもたらす可能性があります。いずれはVestelが他社向けにスマートフォンを製造し、その企業が自社広告をスマートフォンに常に表示させるという展開もあるかもしれません。広告付きスマートフォンの今後に注目です。
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