「Tangoより開発しやすい」という声が相次ぐiPhone向けARアプリ――「ARKit」の登場で、ARアプリが再び盛り上がるか:石川温のスマホ業界新聞
泣かず飛ばずな感もあったAR(拡張現実)技術。しかし、iOS 11で新たに搭載された「ARKit」の登場で状況が変わるかもしれない。
今週、iPhone向けにARアプリを提供する開発者たちに話を聞く機会を得た。実際にアプリを触ってみたが、かなりの出来に驚いてしまった。
この記事について
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2017年11月18日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
「LIFULL HOME'S」は、住宅物件の内見の際に、部屋のサイズを測れるというアプリだ。床を認識し、部屋の端から端までを測定できるというものだ。四隅をポイントすることで面積なども計測できる。距離を測るアプリは、Google Tangoで提供されていたが、まさかiPhoneのカメラだけでここまでしっかりと距離を測れるとは思わなかった。
「アメミル」は、リアルタイム降雨情報を取得できるアプリだ。これまでも、空にiPhoneをかざすと、その方向にどういった雨雲があるかを確認できたが、ARKit対応により、机などを認識し、その上に日本列島を表示し、どのあたりに雨雲があるかを観られるようになった。特にすごいのが、アメミルではテキストでも現在の状況を解説しているのだが、この文章は、雨雲の様子を人工知能で分析し、アプリが自動的にテキストを作成しているのだという。ARとAIを駆使している技術力には目を見張るものがある。
「RoomCo AR」はカメラ越しに見える自分の部屋に、様々な3Dデータの家具を配置できるアプリ。家具を購入する前に、部屋の中でどれくらいの大きさになるのか、見栄えはどうかを確認できる。日本国内の有名どころの通販サイトの家具が揃っており、実用性はかなり高い。このアプリを提供するリビングスタイルはもともとBtoBで家具の3Dデータを豊富に持っていたため、このようなアプリを提供できたという。
RoomCo ARはGoogle Tango向けにも提供されていたが、アップル・ARKitによって、iOS向けに提供できるようになったという。Tango版と比べても、使い勝手に遜色はないといえる。
アップル・ARKitを使って開発した人に数名にインタビューしてみたが、やはり「比較的、簡単につくれる」というのがARKitの魅力なのだという。Tangoでもアプリ開発をしたことのある人によれば「Tangoは対応端末も少なければ開発者も少ない。開発に向けた情報も不足している。開発していく上で困ったことがあると、コミュニティの掲示板に書き込んで、反応してくれる人を待つ必要があった。何をやるにも手探り状態だった。一方、ARKitであれば、開発者も多く、情報も多い。対応端末も豊富にあるし、ユーザーからの反響も多く、とても開発がしやすかった」と語る。
やはり、iPhoneであれば 6s以上、iPadは第5世代以降もしくはiPad Proですぐに使えるというメリットは計り知れないだろう。
ARは一時、注目されたものの、鳴かず飛ばずで終わった苦い過去があるが、アップル・ARKitの登場により、再び盛り上がりを見せそうだ。
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