総務省が「2年縛り」の是正をキャリアに要求――キャリアに噛みついた楽天は自分の首を絞めることにならないのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省の「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」が最終回を迎え、報告書をまとめた。その中にはいわゆる「2年縛り」の是正も盛り込まれた。MVNOの立場でそれを求めてきた楽天だが、自らキャリアとなることで「自縛」されることになるかもしれない。
4月20日、総務省は「モバイル市場の公正競争促進に関する検討会」(第6回)を開き、これまでの議論を報告書をまとめた(残念ながらローマ出張中のため傍聴できず)。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年4月21日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
総務省のウェブサイトに上がった資料や一部報道によれば、「サブブランド潰し」は不発に終わり、結局、「2年縛り」や「キャッシュバック規制」など、いつもの代わり映えのしない内容で結末を迎えたようだ。
2年縛りに関しては、2年間の契約が切れたあとに自動的に契約更新する仕組みの是正を、各キャリアに要請する方針だ。
現状、3社を比べると、NTTドコモは2年間の契約後に期間拘束のないプランに移行しても、通信料金は2700円と、2年契約と同額のプランになるようになっている(ただし、更新ポイントはもらえなくなる)。他の2社は拘束期間のないプランは値上げとなったり、再び、違約金がかかるプランになる。どちらかといえば、NTTドコモのプランのほうが総務省的には「優等生」といえるので、他の2社はNTTドコモ方式に追随せざるを得ないだろう。
個人的には、このような方法でKDDIやソフトバンクが辞めやすくなると、ユーザーがNTTドコモに流れ、シェアが再び上がっていくような気がしてならない。これまでは、NTTドコモのシェアが高すぎることが問題視され、いかにNTTドコモのシェアを下げていくかに重きが置かれていたようだが、ここ数年の総務省によるキャッシュバック規制や2年縛りの是正を見ていると、なんだかNTTドコモに追い風が吹いているようだ。
そんななか、報告書を読んでいると、この2年縛りの是正について、楽天モバイルが噛みついた発言が散見されているのが気になった。楽天モバイルは2018年1月15日開催の第2回に登壇し、プレゼンを行っている。
楽天は2017年12月14日に携帯電話事業への参入を表明しているのだが、1月15日の段階では「MVNO」として発言しており、「期間拘束契約の自動更新はMVNO移行への障壁であり、抑止されるべき」とか「48か月割賦はお客様への縛りになっている」とMNOに攻撃していたのだった。
楽天モバイルの活躍により、2年縛りへの是正が叶いそうだが、果たして、これは楽天にとって良かったのだろうか。
楽天が総務省の検討会であれだけ騒いだのだから、MNOとして参入する際には、当然、楽天モバイル同様に音声SIMは最低利用期間12か月、データSIMであれば最低利用期間は0か月、契約自動更新はなく、契約解除料も0円でなければならないだろう。
2019年10月に楽天はMNOとしてサービスを開始するが、ネットワーク品質において他キャリアに比べて圧倒的に脆弱な状態になるだろう。「試しに楽天を契約したら、ネットワーク品質が悪いので、すぐに解約する」というユーザーが増えてもおかしくない。また、MVNOのころは、先行投資などを気にする必要がないからこそ、最低利用期間も短く、契約解除料が0円でも問題ないが、新規参入となれば、設備投資も計画的に行っていかなくてならない。
今回、楽天の発言によって、MNOの2年縛りが是正されそうだが、この施策で一番、首を絞め、しっぺ返しを食らうことになるのは、MVNOからMNOになる楽天自身であるということに、楽天は気がついているのだろうか。
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