2018年度中にQRコード決済市場に参入 KDDIが「au WALLET」で“次”を目指す理由:モバイル決済の裏側を聞く(3/3 ページ)
KDDIは2014年に「au WALLET構想」を掲げ、「au WALLETカード(プリペイド)」を提供。後にはクレジットカードの発行も開始し、同社のビジネスの軸の1つとなりつつある。2018年度中にはQRコード決済も提供予定。そんな同社の決済戦略を聞いた。
auのQRコード決済はどんなサービスになるのか
「ドコモに続いてKDDIもQRコード決済市場に参入」ということが話題になり、今回のインタビューでもこの点を含めて取材依頼をさせていただいたが、「まだ検討中で、高橋社長の会見での説明以上のことは現段階では話せません」(中井氏)とのこと。
一般論としてKDDIの見解を聞いたところ、「QRコード決済はまだまだ黎明(れいめい)期であり、それぞれが独自仕様でやられている段階。お客さまと採用いただく加盟店の両者で混乱が起きると、普及がしづらい状況が生まれてしまいます。各プレーヤーが共通で足並みをそろえるタイミングがやってきて、どのように差分を吸収するのかという話が出てきます」と中井氏は話す。
実際にこのインタビュー後に経済産業省を中心にQRコード決済統一方式に向けたヒアリング開始が発表された。恐らく、KDDIの参入タイミングから考えて、この共通仕様をある程度視野に入れた形でのサービスインになると筆者は予想している。
QRコード決済を導入する加盟店(店舗)が必ずしもApple Payが利用可能な非接触決済端末を導入しているとは限らず、この点で両者がすみ分けられ、さらに決済機会を増やすという相乗効果を生み出すことにもKDDIは期待しているようだ。AndroidとiPhoneともに機種を選ばずに利用できるというQRコード方式のメリットももちろんある。
楽天ペイやLINE Payでは、自身が提供するQRコード決済方式について「2018年が勝負の年」とコメントしていた。一方、KDDIは「キャッシュレスの乱立が続くなか、やがては収束されていくことになるでしょうが、2018年に全てがきれいにまとまっているとは思いません」(中井氏)とのスタンス。
「KDDIも2018年度中に(QRコード決済の)開始をうたっていますが、2019年や2020年を見据えて、少しずつお客さまに理解してもらいながら拡大していくことになるでしょう。重要なのは『使える場所をどう増やすのか』『そこの(バーチャル)口座にお金が入っているのか』という2軸です。加盟店を増やす努力もさることながら、口座にお金がある意味がないと普及はしません。中国が分かりやすい例ですが、銀行口座にお金を置いておくより、(AlipayやWeChat Payなどの)サービスにお金があった方がいいと認識されたことが大きいです」(中井氏)
中井氏は、加盟店が単に増えるだけでは意味がないとの考えも示す。「LINEが2018年に100万店舗導入をうたっていて、実際にすごいと思うのですが、本当に使えるかどうかは別の話です。象徴的にコンビニで使えるとか、あるいは比較的大規模な店舗を押さえるというのはもちろん重要ですが、目指しているのは近所のそば屋で使えるとか、(まわりの経済圏で)どこでもキャッシュレスになっている方が当然いいわけです。そうなると、インフラ整備を1社で行うのは現実的な話ではないのかもしれません。競争とインフラ整備は別という考えもあるでしょう」(同氏)
2014年に所ジョージさん主演の「グッバイ!おサイフ!」の象徴的なCMキャンペーンで幕を開けたau WALLET。「当時は手探りで、一部からは怒られたりもして、CMを見るたびにお腹が痛くなる」(中井氏)という経験もしたサービスだが、「お財布に現金を入れずにお買い物」というコンセプトは一定の成長を実現し、昨今のキャッシュレスブームと相まって再び脚光を浴びつつある。
QRコード決済では後発組に属するなど、フットワークの軽い他社に比べると慎重な動きが目立つKDDIだが、5000万超の課金ユーザーという膨大な顧客ベースを武器に、同社ならではのキャッシュレス施策で生活圏への浸透を図っている。まずは2018年度後半発表予定の、au WALLETを拡充する新サービスに期待したい。
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