Appleはなぜ発表会の前週に新「iPad Air」「iPad mini」を発表したのか:石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)
Appleが、3月25日(現地時間)に米カリフォルニア州で開催される発表会に先立ち、18日に「iPad Air(第3世代)」と「iPad mini(第5世代)」の2機種を発表した。まさに青天のへきれき。なぜ、あえて発表会の前に新製品を発表したのか。
サービス競争へかじを切るApple、25日の発表はその幕開けになるか
とはいえ、AppleはそのiPad AirやiPad miniを、あえて発表会の前週に公開してしまった。既報の通り、Appleは報道陣に対し、「It's show time」と記された招待状を送付しており、iPad AirやiPad miniは、ここで披露されると見られていた。ここには、サービスへのシフトを加速させたい同社の思惑が見え隠れする。前週にあっさりとハードウェアを出してしまうことで、サービス重視の姿勢をより強調できるというわけだ。
iPhoneの販売に支えられて好業績を続けているAppleだが、スマートフォン市場が成熟期を迎え、販売台数をこれ以上伸ばすのは難しい状況になりつつある。これに対してAppleは、iPhone Xシリーズのような高価格帯のモデルを用意し、収益の確保を図ろうとしているが、ユーザーの財布の中身は無尽蔵ではない。iPhone XS、XS Max、XRが発売された後もiPhone 8が売れ続けているのは、その証拠といえる。ハードウェアが成熟することで、買い替えサイクルも伸びている。
次の手としてAppleが伸ばそうとしているのが、サービス分野だ。ティム・クックCEOもサービス分野に注力する方針を株主総会などで語っているが、業績を見ても、非ハードウェアのサービス部門は着実に成長している。App StoreやiCloud、Apple Musicなどの売り上げは、全体の規模と比べるとまだまだ小さいが、2019年第1四半期で13%まで比率が上った。売り上げ比率では、既にMacやiPadよりも大きく、iPhoneの売り上げが伸び悩む中、ここを強化するのは正攻法といえる。
では、25日の発表会では、何がお披露目されるのか。「It's show time」をストレートに受け止めると、映像関連のサービスという予想ができる。Appleが、NetflixやAmazon Prime Videoに対抗した定額の映像サービスを準備しているというウワサは、以前から流れており、それがついに姿を現す可能性はありそうだ。音楽ではApple Musicを始めているため、次は動画というのも自然な流れだ。
また、定額のニュース配信サービスがあるのではという話も、以前から伝えられてきた。日本では「Apple News」が非対応なため、ピンとこないかもしれないが、ここに有料サービスを提供している新聞や雑誌のニュースを集め、月額課金を導入するという見方が強い。決済やヘルスケア関連の新サービスを準備しているのではというウワサもあり、これが25日の発表会で披露されるかどうかにも注目が集まる。
いずれにせよ、3月25日の発表会は、今までと毛色が違うものであることは確実。Appleの今後を占う上で、これまで以上に刮目(かつもく)して待ちたいイベントになりそうだ。
関連記事
新「iPad Air」と新「iPad mini」は何が変わった? iPad/iPad Proと比較する
Appleが「iPad Air(第3世代)」と「iPad mini(第5世代)」を発表した。Airとminiの新モデルが登場するのは久しぶり。2018年3月に発売された「iPad(第6世代)」と、2018年11月に発売された「iPad Pro(11型)」との比較も交えながら、新iPad AirとiPad miniの特徴を見ていきたい。新「iPad Air」「iPad mini」発表 2機種ともApple Pencil対応
ゲーム音声の遅延を最大30%低減 充電ケースが選べる新型「AirPods」登場 1万7800円から
2年4カ月の時を経て、Appleの完全ワイヤレスBluetoothイヤフォン「AirPods」に新型が登場。新しい「Apple H1」チップを搭載し、ペアリングや接続端末の切り替えにかかる時間を短縮した他、ゲームプレイ中の音声の遅延(レイテンシ)を低減。バッテリー持ちも改善した。ワイヤレス充電対応のケース付きモデルもある。新「iPad Pro」先行レビュー 前モデルから乗り換えたくなるほどのモデルチェンジ
Liquid Retinaを採用し、前面ほぼ全体がディスプレイになった新しい「iPad Pro」。ホームボタンを廃したデザインになり、Apple PencilやSmart Keyboardも刷新された。短期間だが、実機を使ったレビューをお届けしたい。「新しいiPad」と「iPad Pro」はどちらが買い? 使用感とスペックを比較する
Apple Pencilに対応しながら3万7800円からという安さが魅力の、新しい「iPad」。気になるのが「iPad Pro」との違い。どちらのiPadを買うべきか?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.