分離プラン時代にiPhoneは売れなくなるのか(2/2 ページ)
改正法では、端末の割引は2万円までに制限される。このルールで特に大きな打撃を受けそうなのが、Appleだ。20万円近くもするようなフラグシップモデルはますます売りにくくなるし、端末購入補助で売れていた旧モデルの売れ行きが鈍る可能性もある。
旧モデルは10月前の値下げで延命?
では10月1日以降、本当にiPhoneは売れなくなるのだろうか。
まずは9月に発売されるであろう新モデルだが、さすがに2018年のように、最上位モデルでも20万円近い値付けにはならないと考える。ドコモは、2019年夏モデルの価格について「調達価格に対して適正な粗利は乗せているが、分離プランになるので、粗利の部分は努力した」(販売部長の高本寛氏)結果、ハイエンドモデルでも10万円前後に価格を抑えている。こうした努力は当然、iPhoneにも向けられるはずで、2018年のiPhoneよりは価格は抑えられそうだ。
“主力商品”のiPhone 8については、値下げをすることで、実質的な負担額を2018年~2019年と同様にする可能性もある。Appleが新型iPhoneを発表するタイミングで、旧モデルを値下げするのは恒例だが、10月1日以前であれば、ルール上は割引額に制限はない。
ちなみに10月1日以降、旧モデルに対しても、2万円以内なら値下げが可能。価格を改定する際、どのタイミングになるのかで値下げ幅は変わってくる。
比較的新しいiPhoneで期待したいのが、iPhone XRの値下げだ。GfKランキングではiPhone 8に次いでiPhone XRが売れているだけに、XRの値下げ幅次第では、いよいよ8を抜き去ることも考えられる。iPhone XRは、ホームボタンを搭載しないiPhoneの中では比較的安いモデルであり、カラーバリエーションも多いことから、次世代の普及期といっても差し支えない。
量販店でSIMフリーiPhoneが売られる可能性も
もう1つ注視したいのが、Appleの動きだ。ここ最近、ビックカメラやヨドバシカメラなどの量販店で、iPadのセルラーモデルの取り扱いがスタートしている。「これはSIMフリーiPhoneが量販店でも売られる前触れなのか?」とみる向きも多く、業界の流れを考えれば、大いにあり得る。現在、iPhoneのSIMロックフリーモデル(新品)は、基本的にAppleのオンラインストアかApple Storeでしか購入できない。
もし量販店などに販路が拡大すれば、より多くのユーザーが購入しやすくなる。Appleの直販価格の方がキャリアよりも安い、なんてことになれば、Appleが扱うiPhoneを購入し、SIMだけを差し替えて“機種変更”することもできる。もちろん、MVNO(格安SIM)ユーザーにとっても、iPhoneの販路が広がることは歓迎すべきことだ。
量販店は自社のポイントが付く上に、最近はコード決済を中心に高還元率のキャンペーンも実施している。PayPayの100億円キャンペーンでiPadが売れた例が顕著だが、こうした施策との相乗効果でiPhoneが売れる可能性が高い。「キャリアで買うiPhoneが高いのなら、SIMフリーでもいい」と考えるのは当然のことで、2019年はキャリア以外が扱うiPhoneが増えるかもしれない。
Appleは、改正電気通信事業法の省令に関するパブリックコメントで、総務省の新たな施策を「競争の抑制につながる」「差別的な対応だ」として総務省を批判しており、危機感を募らせていることがうかがえる。
10月以降、iPhoneの売れ行きのカギを握るのは「価格」と「販路」にあると考える。キャリアとAppleの施策を注視したい。
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