字義とは違う スマホやケータイを買う時の「頭金」ってなぜあるの?:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(1/2 ページ)
スマートフォンやケータイを店頭で買おうとすると、機種代金とは別に「頭金」を支払わなくてはならないケースがあります。携帯電話販売における「頭金」は、世間一般の頭金とは考え方が異なり、それに起因するトラブルもあります。一体「頭金」とは何なのでしょうか。そして、なぜ存在するのでしょうか。
スマートフォンやケータイを買う時に、店舗によっては「頭金」なるものを支払う必要があります。
辞書的にいえば、頭金は「分割払いの際に最初に支払うまとまったお金」という意味です。しかし、携帯電話販売における「頭金」は、一般的な頭金とは異なるものです。
(以下、販売店が独自に設けるものは“かぎかっこ”付きで「頭金」と記します)
それゆえに、説明の難しさも相まって、販売現場では「頭金」を巡るクレームやトラブルが少なからず存在します。「『頭金』を割り引く」との名目でオプションサービスへの加入を促された人が、サービスの解約方法が分からず問い合わせてきたり、そもそも解約を忘れてしまうといった事例もあります。
いろいろと問題を引き起こしがちな「頭金」を、携帯電話販売店はなぜ設定するのでしょうか。そもそも、携帯電話販売の「頭金」とは一体何なのでしょうか。
意外と少ない店舗の利益
本題に入る前に、店舗が得られる収益について話をしておきます。
ハイエンドスマホは、今や10万円を超える価格で販売されるものも珍しくありません。例えば「iPhone 11 Pro」なら、一番安いモデルでも税込みで約12万円からという設定です。直近なら、au(KDDIと沖縄セルラー電話)が発売した「Galaxy Fold SCV44」は、税込みで25万円近くします。
10万円を超える端末は、ポンと簡単に一括払いで買えるものではありません。通信事業者(キャリア)によって若干の差はありますが、端末代金の支払い方法に占める分割払い利用率は80~90%程度。ほとんどのユーザーが分割払いや割賦で端末を買っていることになります。
「これだけ高価なら、端末を売れば結構利益が出るのでは?」と思われがちですが、端末を1台販売して店舗(代理店)が得られる利益は数千円から多くても2万円弱。意外と少ないのです。言い換えれば薄利多売を地で行く世界です。
10月から端末代金の値引きに一定の制限がかかりましたが、それ以前の値引きは端末の「数」、つまり端末を一定数以上販売することで入ってくるインセンティブ(販売奨励金)の一部を流用したものでした。
「利益を得るために利益を削る」という行動は一見すると本末転倒ですが、過剰にも見える端末代金の値引きは、少ない利益をちょっとでも増やそうとした取り組みでもあるのです。
薄利多売を補うという面では、オプションサービスの加入を促進することも欠かせません。オプションサービスの加入にもインセンティブが設定されているのです。
分かりやすい例を上げると、オプションサービスに入ると「頭金」が無料(または割り引き)というものがあります。端末の「頭金」を3000円に設定し、「30日間無料のサービスに1つ入ってくれれば、1つ当たり『頭金』を600円引き、5つ入ってもらえれば0円です!」と案内するのです。
サービス加入のインセンティブは、サービスによって条件や金額が異なります。仮に1つ加入を獲得するごとに1000円のインセンティブがもらえるとすると、サービスに5つ入ってもらうと5000円のインセンティブが付与されます。3000円を「頭金」の割り引きに回したとしても、収入は2000円増えます。
「頭金」とサービス加入のインセンティブは、ある意味で「一心同体」なのです。
赤字回避、利益確保のために設定された「頭金」
ここまで説明すれば、販売店が設定する「頭金」の正体が見えてきます。
端末の売れ行きが芳しくない場合、あるいはオプションサービスの加入状況が思わしくないと十分なインセンティブを確保できない恐れがあります。そこで、端末販売で赤字にならないようにする(可能であれば利益を確保する)ために設定している販売店独自の“手数料”が「頭金」だと考えれば良いのです。
赤字を防ぐため、あるいは利益を確保するための手数料――そう考えると、「頭金」の設定額が店舗によって異なることも当然です。
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