KDDIが「かえトクプログラム」を提供する狙い ドコモ、ソフトバンクと比べて端末は安くなる?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)
KDDIが、新しいスマートフォンの販売方式となる「かえトクプログラム」を開始した。あらかじめ端末ごとに残価が設定されているのが、従来の「アップグレードプログラム」との違い。その特徴や他社との違いを解説するともに、導入の狙いを解説していきたい。
KDDIが、新しいスマートフォンの販売方式となる「かえトクプログラム」を開始した。割賦を組み、端末の回収を条件にその一部を免除する点は従来のアップグレードプログラムと同じだが、あらかじめ端末ごとに残価が設定されているのが、最大の違いだ。ここでは、その特徴や他社との違いを解説するともに、導入の狙いを解説していきたい。
端末ごとに異なる残価率、対象モデルも大幅に拡大
かえトクプログラムは、残価設定型のアップグレードプログラムだ。従来のアップグレードプログラムが、端末の代金を48回または36回に分け、その一部を免除していたのに対し、かえトクでは、2年経過後の価値をKDDI側が推定し、それを残価として設定する。この残価は、端末の回収と次の端末購入を条件に免除される。また、割賦の24回目に支払ってもいいし、再度割賦を組むことも可能。中古業者の方が買い取り価格が高ければ、あえて利用せず、下取りの代金を残価の支払いに充当してもいい。
従来型のアップグレードプログラムは、端末のもともとの価格だけが基準になるのに対し、かえトクは下取り市場などでの需要と供給のバランスまで反映できる。そのため、残価の額や割合は、端末によって大きく異なる。
例えば、ユーザーはもちろん、下取り業者からの人気も高いiPhoneの場合、残価や残価率は非常に高い。「iPhone 11」の64GB版は、本体価格が9万720円、残価が3万6785円で、本体価格の約41%が残価に設定されている。これは、約2年間使っても、市場に流通させるだけの価値が十分残っていると見なせるからだ。同様に、かえトクと同時に発表された「Galaxy Z Flip」は、本体価格が17万9360円、残価が5万9760円で残価率は約33%となる。
一方で、陳腐化が進みやすいミドルレンジモデルや、特定のユーザー層に特化した専用モデルなどは、残価率が低めの傾向にある。2019年の秋冬モデルとして登場した「Xperia 8」は、4万9680円の価格に対し、残価は9890円しかなく、率は20%と低い。同様にシニア向け端末の「BASIO4」も4万1760円のうち、残価はわずか8410円で、こちらも残価率は20%だ。一律で48回中24回なり、36回中12回を免除していた従来のアップグレードプログラムとの違いは、ここにある。
残価と中古業者の下取り価格の差分はいわゆる「端末購入補助」と見なされるが、かえトクプログラムはauユーザー以外にも提供される。回線がないユーザーがあえてau端末を購入するメリットは少ないが、オープンである体裁を取っていることが重要だ。回線契約と端末販売がひも付いていなければ、端末購入補助の上限である2万円という制限がなくなるからだ。KDDIのコンシューマ事業企画本部 副本部長の松田浩路氏は「今回のプログラムは、au以外にも提供しているので、(免除額と市中の下取り価格の)差額が2万円という話はあまり(関係が)ない」と語っている。
ユーザーにとってのメリットの1つは、36回や48回などの長期に渡った割賦を組む必要がなくなるところにある。また、iPhoneシリーズなど、残価率が40%を超える一部の端末に限定されるが、36回中12回を免除する既存のアップグレードプログラムよりも、いわゆる実質価格は安くなる。これまで提供されてきた「アップグレードプログラムNX」は、一部のハイエンドモデルに対象機種が限られていたが、そうした縛りもなくなっている。
逆にデメリットとしては、端末ごとに残価率が異なり、仕組みが複雑なことが挙げられる。残価率は端末発売後も変動する可能性があるといい、価格以外に把握しなければならない変数が増えるため、お得感が伝わりづらい恐れもある。また、Androidは高額な端末でも残価率は30%台に抑えられているため、auの「アップグレードプログラムNX」と比べたときの金額的な差分はほとんどない。損をすることはないが、必ずしも以前よりお得になったわけではない点には注意したい。
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