KDDIが「かえトクプログラム」を提供する狙い ドコモ、ソフトバンクと比べて端末は安くなる?:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
KDDIが、新しいスマートフォンの販売方式となる「かえトクプログラム」を開始した。あらかじめ端末ごとに残価が設定されているのが、従来の「アップグレードプログラム」との違い。その特徴や他社との違いを解説するともに、導入の狙いを解説していきたい。
背景にある、端末販売の不振や5Gの商用化
KDDIがかえトクプログラムでアップグレードプログラムを刷新した背景には、改正電気通信事業法以降、端末、特にハイエンドモデルの販売に急ブレーキがかかっている事情がある。決算で公表されている数値を見ても、落ち込みが顕著だ。改正電気通信事業法が施行されてから初の四半期となる2020年度の第3四半期は、端末販売台数が189万台だった。2019年度は220万台、2018年度は253万台で、販売台数は顕著に減少している。
より落ち込みの幅が大きいのが、端末販売収入だ。2020年度第3四半期は1782億1300万円で、前年同期の2163億2900万円を大きく下回っている。2年前の2018年度第3四半期は3172億2700万円だったため、こことの比較で言うと半減に近い。単純に端末販売台数が減っただけでなく、ミドルレンジ以下の比率が上がり、単価そのものも下がっていることを示したデータといえる。販売台数の減少以上に、ハイエンドモデルが厳しい状況に立たされているというわけだ。
ハイエンドモデルの不振は、5Gの普及にとってのハードルにもなる。KDDIは3月に5Gの商用サービスを開始する予定だが、当初の端末はハイエンドモデルが中心。端末価格は、おそらく10万円を超えるものが多いだろう。グローバルの動向を見ると、5Gのミドルレンジ化は徐々に進んでいるものの、その動きは始まったばかり。Qualcommのプロセッサで言えば、Snapdragon 700シリーズがようやく5Gに対応したところで、現状のように、3万円や5万円のミドルレンジモデルが5G対応するには、まだまだ時間がかかる。
とはいえ、法令、省令で禁止されている以上、端末購入補助を単純に積み増すことはできない。アップグレードプログラムNXが不発に終わってしまった以上、何らかの改善が必要な状況だった。先の松田氏によると、「アップグレードプログラムNXは、もともと端末価格の3分の1と決まっていたが、今回は残価が機種ごとに変わる。これによって、全機種を対象にできるため、お客さまにお得に(端末を)届けていきたい」と語る。
松田氏が「5G時代にはいろいろな端末が出てくるが、こちらのプログラムでどんどん浸透させていきたい」と意気込んでいたように、かえトクプログラムは、5Gの商用サービス開始を意識したもの。その前哨戦として、4Gながらも「5Gの息吹が感じられる」(同)というGalaxy Z Flipで先行投入した格好だ。
松田氏は「極端なことをして、全体で見ればいいでしょということはしない」というが、残価はKDDIがコントロールできる。5G対応スマートフォンの残価率を高めに設定すれば、サービス開始当初の負担感を抑えることはできるかもしれない。間もなく登場する5G端末の価格にも期待したい。
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