3キャリアが若年層向けに「50GBまで無料」に 注意点は? MVNOはどうなる?:石野純也のMobile Eye(1/2 ページ)
総務省の要請を受け、3キャリアが新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン学習を行う学生に対する支援策を発表した。各社とも、容量超過後のチャージを50GBまで無料にするという点は同じ。ただし、期間や適用される条件などは異なる。
総務省の要請を受け、ドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社は、新型コロナウイルス感染症の影響でオンライン学習を行う学生に対する支援策を発表した。各社とも、容量超過後のチャージを50GBまで無料にするという点は同じ。ただし、期間や適用される条件などは異なる。まずは3社の学生支援策を見ていこう。
大手3社が発表した遠隔授業支援、追加チャージが50GBまで無料に
支援策の内容は、3社ほぼ横並びだ。契約者、もしくは利用者登録しているユーザーが25歳以下の場合、契約している料金プランの容量を使い切った後のチャージが50GBまで無料になる。各社とも、通常は1GBあたり1000円(税別、以下同)に設定しており、金額に換算すると5万円相当になる。また、テザリングをオプションにしているKDDIとソフトバンクは、この料金の500円も無料にする。
スマートフォンをハブにして、タブレットやPCなどで遠隔授業を受けられるように容量を増量するというのが、支援策の狙いだ。一人暮らしの学生の場合、自宅に固定回線を引かず、モバイル回線で対応しているケースも多い。こうした事情を踏まえ、総務省が各業界団体に支援策を要請した形だ。
50GBの増量になった理由を、KDDIは「ネットワーク状況に鑑み、支援に必要な容量をトータルで検討した」と語る。ドコモは「遠隔授業やオンライン学習に必要なデータ量を勘案した」としながら、おおよその推計根拠も明かした。同社によると、1コマ90分の授業で約0.5GB、週15コマと想定して4週間分で30GBになるという。残りの20GBは、「ゼミでの活動や随意科目など、プラスαを加味した」という。ソフトバンクも、「大学の授業のコマ数を1カ月フルで受けたときの容量を考えると、これで十分ではないか」と話す。
オンラインでの遠隔授業にどのようなツールを使うかは学校によって異なるが、動画での授業を想定しているとみていいだろう。詳細な方法はまだ検討中の学校が多いが、少なくともこの容量であれば、どのようなツールでも対応はできそうだ。
期間は3社で差が出た。ドコモは5月31日までの約2カ月間、KDDIやソフトバンクは4月30日までの1カ月間となる。一方で、休校に伴う遠隔授業の終了時期は、まだ確定していない。学校によっては、ゴールデンウイーク明けからの開始になることもあり、少なくとも4月だけでは本来の支援にはならない可能性が高い。3社とも「状況を見て、延長するときにはその発表をする」と語っている。総務省からの要請を受け、取りあえずの期間として1カ月なり2カ月なりを設定したといえる。
段階制プランは料金が上がる可能性に要注意、プラン変更もありか
支援策は緊急のため、データ容量の追加を50GBまで無料にするというシンプルな方法を取ったが、あくまでもともと契約しているプランの容量を消費し尽くした後の対応になる点には注意したい。特に、段階制のプランを契約しているユーザーの場合、支援策の恩恵を受けるには、データ容量を上限まで使わなければならない。段階制プランの途中で済ませていたユーザーは、追加の支払いが発生する可能性がある。
例えば、ドコモの「ギガライト」で月間のデータ量が3GB未満で済んでいた場合、料金は3980円に収まる。ところが、支援策としての容量は追加のデータ容量になるため、7GBを超えた段階でしかチャージできない。そのため、料金は4段階目の5980円に上がってしまう。合計57GBでこの価格は、通常の料金と比べると十分安いが、1000円足せばキャンペーンで月60GB使える「ギガホ」に移行できる。KDDIの「ピタットプラン 4G LTE」や、ソフトバンクの「ミニフィットプラン」などでも、状況は同じだ。
通信費に割けるお金が限られている学生が節約しながら使いたいときは、一時的に料金プランの変更を検討してもいいだろう。例えばauの場合、4G用のプランには月7GBの「auフラットプラン7プラスN」があり、料金は5480円(ただし、6月1日に新規申し込みを終了する)。ピタットプランで上限に達するより、料金は500円安い。ドコモの場合、新料金プランで変更するメリットは薄いが、旧料金プラン内のパケットパックを変更して、データ容量を下げる手はある。
ソフトバンクは、サブブランドのY!mobileも支援の対象になった。2680円の「スマホベーシックプランS」でも50GBのデータチャージは無料になり、合計容量は53GBと10倍以上に増える。先に挙げたドコモの試算通りであれば、スマホベーシックプランSでも、遠隔授業用には十分かもしれない。
関連記事
総務省が「若年層の通信容量制限の緩和」を業界団体に要請 大手キャリアは「容量購入無料」などで対応
新型コロナウイルスの感染抑止の目的から、総務省が大手キャリアやMVNOが加盟している業界団体に対して、若年層の通信容量制限について配慮する旨の要請を行った。これを受けて、一部キャリアでは対応を行っている。【追記】福岡県、熊本県、大分県の「ドコモショップ」が時短営業 新型コロナウイルスの影響
関東地方の4都県に加えて、九州地方の3県でもドコモショップの時短営業が行われることになった。時短営業を行う日時は、県や都市によって異なる。ソフトバンク販売代理店のスタッフが新型コロナウイルスに感染
3月30日に、ソフトバンク販売代理店のスタッフ1人が、新型コロナウイルスに感染していたことが判明した。当該スタッフが過去2週間に勤務したのは大阪府の3店舗で、現在は休業している。運営停止のドコモコールセンターが再開へ 新型コロナの感染スポットは職場外
新型コロナウイルスの感染者が出たことで、運営を停止していたNTTドコモのコールセンターが、近日中に再開する。当該コールセンターでは10人が感染していた。職場内が主な感染スポットではなかったことから、準備が整い次第、運営を再開する。「5G」商用サービスがいよいよ開始 ドコモ、au、ソフトバンクの戦略はどう違う?
3月25日にドコモが、翌26日にはauが、さらに27日にはソフトバンクが商用サービスを開始し、大手3キャリアの5Gがついに出そろった。ネットワークの構築の仕方や端末ラインアップ、料金設計には方向性の違いもある。それぞれの戦略を見ていこう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.