「最低限の“ギガ”を最小限のお金で」 IIJmio「eSIM」正式プランの狙いと課題:MVNOに聞く(2/3 ページ)
2019年7月からβ版としてeSIMのサービスを展開してきたIIJが、正式版の料金プランを打ち出した。新たに登場した「データプラン ゼロ」は、プリペイド的に利用できるのが特徴。データ通信を全く使わない月は、わずか150円で維持できる。このデータプラン ゼロの戦略を聞いた。
「450円」は楽天モバイルを意識した?
―― 計算すると、3GBを超える場合はβ版の方が安くなります。その理解でよろしいでしょうか。
亀井氏 そうですね。データプラン ゼロが出た後もβ版を使っている方は、それを知った上で使われていると思います。(どちらを選ぶかは)分かれるのではないでしょうか。
―― 先日発表された楽天モバイルは、パートナーエリアでのデータ量追加が1GB=500円でした。ここは意識したのでしょうか。
亀井氏 実はその前から450円でシステム開発をしていたので、11月に発表のあったOCN モバイル ONEの1GB=500円を見て、ちょっと下回ることができたとドキドキしていました。最終的に値段設定が逆だったら、調整はしていたかもしれませんが、たまたま計算がはまった格好です。
―― 楽天と言えば、実はRakuten Miniと相性のいいプランでは……と思っていたりするのですが(笑)。
亀井氏 今後、端末としての検証をした後、「副回線として使える宣言」をしようと思っています。
―― え。検証ということは、楽天モバイルから端末を借りたんですか(笑)。
亀井氏 彼らも、eSIM普及のためにあの端末を作っていますからね。
―― とはいえ、現状はiPhoneが圧倒的だと思います。
亀井氏 お申し込みいただく方のユーザー属性を見ても、9割5分がiPhoneです。ただし、少しずつ、Surfaceでのご利用も増えています。
―― PCでの需要はまだ少ないのでしょうか。
亀井氏 PCはなかなか増えませんね。検証もさせていただくのですが、技術的にこの鍵の使い方だと不安だなというところもあります。ASUSさんには当初あったバグを直していただきましたが、そういうところまでやっていかないと、オーソライズ(公認)ができません。
iPhoneを使っている若年層をいかに取り込んでいくか
―― 本日(※取材は3月19日に実施)がサービス開始日ですが、現時点(11時時ごろ)の動向はいかがですか。まだ数時間しかたっていませんが。
亀井氏 前回(β版)のときより、初速はいいですね。ネットから買っていただく方が多く、開始から1、2分で20人ぐらいいました。当然、社内でお金を払って契約した人もいると思いますが(笑)。
矢吹氏 ただ、やはりまだまだ難しいのかなとも思っています。β版のときも初動はよかったのですが、1カ月、2カ月での解約も多かった。新しいサービスだったので、話題性や面白さで使っていただけたのだと思いますが、実態が見えなかったのが反省としてあります。ですから、今回は単なる安さではなく、より実態がつかみやすいよう、腰を据えてやっていこうというところも大きいですね。
―― まだユーザーの属性は分からないと思いますが、どうなると予想されていますか。β版のときは、男性9割だったことに驚きました。
亀井氏 キャリアiPhoneの副回線として使う用途をうまく普及させることができれば、20代や30代の女性にも来ていただけるのではないかと考えています。
矢吹氏 2つやっていかなければいけないことがあります。1つは、20代の女性、さらに言えば10代の女性で、この方々はiPhoneの所有率が高い。そのマーケットをどうやって開拓していくかというのがあります。10代、20代は音声通話の利用率も低いため、技術によってデータ通信化させていくことができると思います。
もう1つはPCやタブレットで、そこに必要なのが大容量なのか中容量なのかは見極めたいと考えています。PCの場合、新型コロナウイルス対策でトラフィックが増えていることもあり、われわれの土管を自由に開放して、コスト競争力でどこまで耐えられるのかは見ていく必要があります。
0円でやってくるユーザーのニーズが見えない
―― ネット上の声はいくつか拾ってみましたが、発表された後の反響は、よさそうでしたね。
矢吹氏 β版のときは厳しいお言葉もいただいていました。期待外れだったのかもしれませんが、今回はよかったですね。
―― eSIMのニーズを踏まえたプランだったのがよかったのではないでしょうか。
矢吹氏 150円のところを0円にできないかという意見はあったものの、コスト構造の問題もあり、そこまで思い切ったことはできませんでした。ただ、それでも使いたいときに使えるというシンプルなニーズに近づくことはできたと思います。既に50円、100円と身を削る戦いになっているので、150円を削ったところでお客さまが増えるかというと、なかなか難しい。0円で来るユーザーが何となくいるのは分かりますが、漠然としすぎていて、ニーズがよく見えません。150円の基本料と、1GBあたり450円というプライシングで出すことで、eSIMのマーケットがどんなものなのかが、きちんと見えるようになってくればいいと考えています。
―― 10GBまでになっているのは、何か理由があるのでしょうか。
矢吹氏 一番イメージしたのが、キャリアを使っていて物足りないという層だったからです。確かにTwitterなどの声を見ると、もっと欲しいという意見もありました。段階的に割り引くような見せ方もあり、その辺はのり代として残してあります。
―― そんなに頻繁に起こるわけではありませんが、150円であれば、「通信障害保険」的な契約の仕方もあるような気がします。楽天モバイルを契約した人が、圏外対策として契約するのもいいのではないでしょうか。
矢吹氏 確かにエリア外に出たときに使っていただくことはあると思います。そういった内部での期待はありますが、使い方まで訴求するのはなかなか難しいところです。
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