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3キャリアのモバイル回線、品質の差は? 新型コロナウイルスの影響は?(1/2 ページ)

Opensignalが、国内3キャリアのモバイルネットワーク調査結果を発表。ビデオ再生、音声アプリ、上りと下り速度の品質を検証した。新型コロナウイルス感染症に伴う影響について、各国のデータも公表した。

 全世界のモバイルネットワークを分析する英国のOpensignalが4月16日、「日本におけるモバイルネットワークエクスペリエンスの現状についての調査報告書」を公開。Opensignalの分析担当バイスプレジデントのイアン・フォッグ(Ian Fogg)氏が、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクのネットワーク調査結果を解説した。

独立系分析会社で、実際のユーザー体験を重視

 Opensignalは独立系の分析会社で、1億台以上のデバイスにインストールされたソフトウェアから収集された数十億の測定値を使用して、全世界のモバイルネットワークを評価している。エンドツーエンドでの体感を重視し、実際に使用された場所、ユーザーの端末からトラフィックデータを収集。モバイルユーザーのリアルな体感データを提供しているのが特徴だという。データの解析方法はWebサイトで公開されている。

 日本に関するレポートでは、データを3カ月かけて収集し、データポイントは22億に上る。さまざまなテストを実施して、モバイルネットワークがどんな状況になっているかを明らかにしている。通信速度や遅延といった技術面に加え、音声、ビデオ、ゲームの体験についても調査している。

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ビデオ、音声アプリ、ダウンロードとアップロードなど主に8つのカテゴリーで調査・分析を行った

ビデオ体験はソフトバンクがトップ

 Opensignalがビデオの体験を調査する際には、スマホでビデオストリーミングを流し、スコアを付けている。用いている手法はITU(国際電気通信連合)で認められているアプローチ。ネットワークを流れるデータの多くの部分をビデオが占めるようになっており、ビデオ体験のテストは「重要な調査」(フォッグ氏)という位置付けだ。

 そのテストで最高評価を獲得したのは、100点中の80.3というスコアを出したソフトバンクだ。ただし、他の2社も非常に優れていることを示す「Excellent」という評価になっている。


ビデオ体験の調査ではソフトバンクが3社の中で最高の評価

通信速度は下りと上りともドコモが高評価

 送受信速度ではダウンロードで52.7Mbps、アップロードで10.3Mbpsを出したドコモが最高評価となった。


下りと上りの速度に対する調査ではドコモがトップ

 ビデオ体験ではソフトバンク、下りと上りの速度ではドコモと、トップ評価が異なることに違和感を覚えるかもしれない。フォッグ氏は「ビデオではいろいろな体験を測定している。継続的に高品質でつながっていなければ、体験として優れているとはいえない。映像の途中で中断が発生してしまうと体験に影響する」と説明。ビデオ体験と通信速度で異なるキャリアがトップになってもおかしくないとした。

音声アプリ体験は2社でドロー

 LINEやWhatsApp、Skypeといったボイスチャットアプリについては、3キャリアとも「Good」の評価。ドコモとソフトバンクが高い評価でドローとなった。2社の獲得ポイントは異なるが「有意な差ではない」という判断だという。


音声アプリではドコモとソフトバンクで引き分け

4Gネットワークの「可用性」が高いのはau

 4Gネットワークについては、Availability(アベイラビリティ:可用性)とカバレッジ(適用範囲)について調査・分析している。アベイラビリティについては「4Gネットワークにどれだけの時間つながっているか、接続時間を見ている」という。カバレッジは4Gネットワークが地理的にどれだけカバーしているかを見る。


4Gの可用性はauが高いとの評価

 アベイラビリティはauが、カバレッジはドコモがトップとなった。フォッグ氏は「この先もしばらく、モバイルエクスペリエンスの根幹は4Gが担っていく」と4Gネットワークの重要性を指摘した。現在使われているモバイルネットワークの大半が4Gだからだ。また、現状の5Gは4Gを活用するノンスタンドアロン(NSA)であり、「5Gとしてちゃんと運用するには4Gが必要。4Gが使えないということになると、それに伴って5Gも使えないことになる」と同氏。

 なお、5Gについては今後、調査をしていくことをフォッグ氏は明らかにしている。日本の5G体験は「非常に優れたものになるだろうと思っている」とフォッグ氏は予想。日本は「キャリアが既に帯域を持っていて、4Gで培った経験も非常に強力だと思う」と評した。ただ、5Gについて語るのは「時期尚早」とした。

 ネットワークについては遅延も測定しており、36.2msのソフトバンクがトップになった。


遅延についてのユーザー体験ではソフトバンクが2社よりも明らかに高評価

体感調査のまとめ。全体的にドコモの成績が良い結果となっているが、個々の調査での差はわずかだ

モバイルゲーム体験で日本は100カ国中3位

 プレビューとしてOpensignalが公開しているモバイルゲーム体験についての調査も紹介された。調査は100カ国で行われ、非常に優れていることを示すExcellentを獲得したのは4カ国のみだが、日本はそのうちの1つ。100カ国中3位という成績になっている。


ビデオや音声サービスのテストと同様の手法で、モバイルゲームの技術的な特徴を検証しつつ体験をスコアリングしているという

 フォッグ氏は、日本のモバイルネットワークについて「世界で1位に位置しているわけではないが、トップクラスに位置していると確実にいえる」と評価した

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