中古スマホが突然使えなくなる事象を解消できる? 総務省が「ネットワーク利用制限」を原則禁止する方向で調整
総務省の「競争ルールの検証に関するワーキンググループ」において、携帯電話事業者の競争政策についての検討が行われている。その中で、「ネットワーク利用制限」を原則禁止する論点案が示された。
総務省は4月24日、「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第55回会合を開催し、携帯電話事情の競争政策に関する論点整理を行った。その中で、大手キャリアを通して販売された端末に対する「ネットワーク利用制限」について一部の例外を除いて廃止(禁止)する方向性が盛り込まれた。
そもそも「ネットワーク利用制限」とは?
その名の通り、ネットワーク利用制限は携帯電話端末のネットワークへの接続を“拒否”する制限だ。大手キャリアでは、本制限を端末の詐取(分割払いの不履行を含む)や盗難への対策として実施している。制限の対象となっているかどうかは、各キャリアの特設Webサイトで「IMEI」という番号を入力することで確認できる。
「IMEI」とは?
IMEI(International Mobile Equipment Identity)は、個々の携帯電話端末に割り当てられた固有の識別番号で、現行の携帯電話はSIMカードのID(と電話番号)とIMEIをネットワークに登録することで初めて通信できるようになる。ネットワーク利用制限では、この仕組みを活用してネガティブリストに載っているIMEIを持つ端末の接続を拒否している。
なお、端末のIMEIは本体のパッケージ(外箱)、またはダイヤラーから「*#06#」と入力することで確認できる。なお、デュアルSIM端末の場合、1台の端末にIMEIが2つ割り振られる。
このネットワーク利用制限については、ネットワーク利用制限が販売したキャリア以外で機能しないという課題がある。「海外を含む他キャリアで使うことができてしまうので、詐取や盗難対策として不十分」との指摘に加え、「中古端末の購入者が制限対象となり、突然通信できなくなる」という問題も抱えている。
また分割払いの不履行(踏み倒し)という観点では、キャリアが提供する分割払いは端末の所有権を契約者(購入者)に移転している(※1)。この端末を中古買い取り業者に売却すると、所有権は当該業者に移転する。そして売却された端末が販売されると、所有権は購入者に移転する。もともとの所有者の不履行によって、現在の所有者が不利益を被ることの是非も、課題とされている。
(※1)楽天モバイルについては、自社による分割払いを提供していない(端末代金を支払うクレジットカードの分割払いで対応している)
総務省は「ネットワーク利用制限」をどうしようとしている?
WGでの議論を踏まえて、総務省はネットワーク利用制限について許容するケースを極力限定する方向を示した上で、以下の論点案を提示した。
- 利用者の利益を確保すべく、ネットワーク利用制限は原則禁止とする
- ネットワーク利用制限は、以下のケースに限り認める
- 盗難された端末
- 不正契約により入手された端末
- 補償サービスで補償対象となった旧端末
- 分割払いで買った端末についても、原則禁止は同様
- ただし、購入後4カ月を超えない期間は債務不履行による利用制限を認める
- ネットワーク利用制限を掛けた端末が他キャリアで使えてしまう対策が必要
- 方法は「制限対象端末のIMEIをキャリア間で共有する仕組みの導入」を例示
- 制限の有効性を高めるための議論をキャリアに促す
関連記事
- スマホの買い取り業者はどこを見て査定しているのか 最も“引っ掛かる”箇所は?
ニューズドテックが、埼玉県質屋組合連合会青年部が開催したイベントで、質屋の事業者に向けたスマホ買い取り講習会を行った。まずはバイブレーション、カメラ、音、タッチパネル、ホームボタンや音量キーなどが故障していないか確認する。意外と引っ掛かりやすいのがディスプレイだという。 - 中古スマホの“良品”はどのように生まれるのか にこスマの検査センターに潜入
中古スマホのECサイト「にこスマ」を運営する伊藤忠商事グループのBelongが、自社の中古スマホ検査センターを一部の報道関係者に公開した。にこスマで取り扱う中古スマホは、SIMロックやネットワーク利用制限がなく、外観の状態が良好なもの。端末1台1台を独自の管理システムに登録し、機能チェックからデータ消去、写真撮影、購入者への配送まで、全ての工程がこの検査センターで行われている。 - 中古市場で最も大きな課題は「ネットワーク利用制限」 RMJ粟津理事長が提言
中古端末事業者向けに制定した「リユースモバイル事業者認証制度」で、日本テレホン、携帯市場、ソフマップ、ブックオフコーポレーションが認証を受けた。リユースモバイル・ジャパンの粟津理事長は、現在の中古市場で最も大きな課題はネットワーク利用制限だと言う。総務省に対して改善を求めていく。 - 「海外」に流出? 大手キャリアの「下取りスマホ」の行方
他の先進国と比べて「中古携帯電話端末市場」の立ち遅れが指摘される日本。その原因の1つとして、大手キャリアが下取りした端末の「海外流出」が挙げられている。大手キャリアは、下取りしたスマートフォンをどのように扱っているのだろうか。 - 中古スマホを買う時に気を付けたい「赤ロム」とは?
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.