楽天モバイルの5Gは“超限定的” 3キャリアにどこまで対抗できるのか:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
楽天モバイルの5Gは料金を据え置きにして「Tada(ただ)5G」を訴求する。サービスインに合わせ、自社ブランドの端末「Rakuten BIG」も用意した。一方で、エリア展開は3キャリアよりも課題が多い。
サービス開始当初のエリアは超限定的、拡大の見通しも不透明
それ以上に課題として大きいのは、5Gのエリアだ。サービス開始当初は、東京都、神奈川県、埼玉県、北海道、大阪府、兵庫県の6つの都道府県のみ。しかも北海道や神奈川県、兵庫県はエリアといっても1カ所のみで、最もエリアの広い東京都でも世田谷区の一部と板橋区の1カ所となっており、現時点でのエリアは極めて狭い。ドコモ、au、ソフトバンクともに5Gのサービス開始時はエリアがスポット的だったが、楽天エリアの狭さはそれをさらに下回る。
楽天モバイルの代表取締役社長、山田善久氏によると、2021年3月までには全都道府県にエリアを拡大するという。ただ、より具体的な計画は明かされず、それ以降のロードマップも見えていない。全都道府県はエリアの目安の1つにはなるが、残りの1府40県に対して基地局を1つずつ置いていくだけで基準をクリアできてしまうため、基地局数を明確に打ち出している他社よりエリア拡大の見通しがしづらい。
周波数割当時に総務省に提出した開設計画中の基盤展開率は、2024年末で56.1%。90%を超えるドコモやKDDIにはもちろん、64%を打ち出したソフトバンクよりも見劣りする。また、この基盤展開率は、あくまで新たに割り当てられた5G専用の周波数で実現するエリアで、8月の省令改正によって認められた4Gから5Gへの周波数転用分は含まれていない。4Gの周波数を多く割り当てられている他社は、一部の基地局を4Gと5Gに両対応させることで、エリアを一気に拡大する方針を打ち出している。
KDDI、ソフトバンクともに、2022年3月末時点での5G基地局数は5万を予定。楽天モバイルが現時点で用意する4G用の基地局数すら大きく上回る数字になる。楽天モバイルも転用で対抗できるかというと、それも難しい。現状、割り当てられている4G用の周波数は1.7GHz帯のみで、帯域幅も20MHz幅と少ないからだ。たとえDSS(Dynamic Spectrum Sharing)を使ったとしても、4G用に十分な帯域幅がなくなってしまい、4G、5Gのどちらも十分な速度が出なくなる。転用するのであれば、新たな周波数を獲得するか、思い切って4Gの帯域幅を減らしてしまうしかないだろう。
山田氏は「他社とそん色ない形でスタートできると思っている」と語っていたが、この冬から2021年いっぱいで、差が大きく広がってしまう恐れもある。発表会では、料金や端末、完全仮想化ネットワークの紹介に時間が割かれた一方で、5Gならではのコンテンツやサービスに対しての言及は少なく、山田氏も「5Gが普及していけば、いろいろな方とのコラボレーションで新しいサービスが生まれてくる」と述べるにとどまった。自動契約のため、5Gの契約者数だけは多くなりそうだが、当面の間、楽天モバイルの主戦場は4Gになりそうだ。
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