コロナ禍でリアルからデジタルへ劇的に加速 「PayPal」好調の理由を聞く:モバイル決済の裏側を聞く(2/2 ページ)
新型コロナウイルスの影響で伸びているのがオンラインショッピングだ。オンラインを中心に決済サービスを提供しているPayPalは、2020年第2四半期の新規アカウント数が前年比で約140%増加した。「ニューノーマル」の時代におけるPayPalの戦略を、インターナショナルマーケット担当シニアバイスプレジデントのCameron McLean氏に聞いた。
日本でのビジネスも好調、QRコード決済提供の予定は?
―― 続いて日本の状況について。PayPal日本市場の現状を教えてほしい。
McLean氏 世界の他の市場と同じく、日本においてもリアルからデジタルへの劇的な加速が見られ、デジタル決済が単に「便利な機能」から「欠かせないサービス」へと進化したことは明らかです。
PayPalの商品・サービスがこれまで以上に日本の消費者やビジネスから必要とされていると感じています。実際、日本における第2四半期のアクティブアカウント数(年に1回以上利用するユーザーの数)は、強力な国内消費、デジタル化、及び新型コロナウイルス感染症拡大による緊急事態宣言下での巣ごもり消費を受けて、前年比で30%増になりました。
前述の通り、日本でコロナ禍において最も売り上げが伸びている分野は「栄養補助食品」「楽器」「書籍」です。さらに、ロックダウン中の巣ごもり消費が影響し、米国のPayPalユーザーの間では、アニメやマンガコンテンツを販売する日本の加盟店の取り扱いが強い伸びを示しました。
―― 世界市場の伸びに対して日本市場はどうか。
McLean氏 PayPalにとって日本は主要な成長市場の1つであり、世界第3位の規模を持つEコマース市場があります。現金の利用比率がまだ高いものの、コロナ禍でデジタルシフトが急速に進んでいることも事実です。第2四半期に日本でのビジネスは力強い成長を達成しました。われわれの決済サービスが日本の消費者や事業者にますます必要とされており、今後成長は続いていくと見込んでいます。
―― 日本市場で今後取り組みを強化していきたい分野・領域は。
McLean氏 日本での注力分野は、ずばり国内利用の増加です。 私たちは常に日本国内の新しい業種や分野でPayPalが利用できるよう加盟店網を拡大しており、お客さまが日常的にPayPalを使っていただける環境を提供できるように努めています。
PayPalは世界で3億人以上の人が利用し、2400万以上の加盟店があります。日本の事業者が国内および国際的にビジネスを拡大していくためのお手伝いしたいと考えています。
一例として、最近では新型コロナウイルス感染症の世界的流行による大きな影響の中で新しい挑戦に取り組むスモールビジネス・オーナーを応援するためのキャンペーン「#SupportLocal」を実施しています。
―― 日本においてリアル店舗での決済に関して、どのように取り組んでいく考えか。日本は中小・個店が多いが、そういったリアル店舗への対応を考えているか。
McLean氏 ほぼ全ての業界で、リアルからデジタルへのシフトが世界的に加速しています。新型コロナウイルス感染症はとりわけ中小企業に大きな影響を与えています。そうした事業者がオンラインにビジネスをシフトする際、われわれと緊密に協力して、シームレスな方法でデジタルシフトを実現できるよう支援しています。PayPalは2010年に日本市場に参入して以降、越境ECの領域で存在感を示してきました。今後もEコマースの機会を捉え、日本におけるビジネスの拡大を図っていきます。
―― Heyへの投資はリアル店舗への足掛かりと捉えていいのか。
McLean氏 HeyとPayPalは共通の目標を有しています。両社は、急速に成長するデジタルの分野で中小企業の成功を支援することに注力しています。
―― 日本でのPayPalのQRコード決済の予定、また、既存コード決済事業者とPayPal口座を連携するなど、何らかの取り組みを考えているか。
McLean氏 PayPalは、金融サービスの民主化の実現に取り組んでおり、単なるリアルもしくはオンラインの決済手段という枠組みを超えたサービスや機能の拡充を図っています。現在QRコード機能は日本で利用できませんが、引き続き、日本の加盟店と個人のお客さまに安全かつシームレスな支払い体験を提供するための機会を検討していきます。
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