Y!mobileとUQ mobileの「20GBプラン」が担う役割 メインブランドとの差別化が課題か:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
KDDIとソフトバンクがサブブランドの20GBプランを発表した。実は20GBプランへの対応の仕方は2社で異なる。サブブランドの役割や新料金プランの狙いをあらためて解説する。
メインブランドとの差別化は可能か? ドコモの対抗策にも要注目
この点、KDDIはauでデータ容量無制限や、コンテンツをセットにしたバンドルプランを打ち出していることもあり、ある程度、サブブランドとの差は打ち出しやすいかもしれない。20GBはそれなりに大容量とはいえ、制限があるのとないのでは、ユーザー心理的に大きな違いがあるからだ。特に5Gになると、自ずと端末が送受信するデータのサイズは大きくなる。
例えば、10月23日に発売した5G対応のiPhone 12 Pro、Pro Maxで4K、60fpsのHDR動画を1分撮ってそのままデータをアップロードすると、それだけでデータ容量を500MB程度消費してしまう。同様に、秒間20枚の連写が可能なXperia 1 IIやXperia 5 IIで2秒間写真を撮っただけでその数は40枚になり、Googleフォトにアップロードすると、100~200MBのデータ通信が発生する。スピードテストですら5Gエリアではデータサイズが大きく、1回に使うデータ容量は1GB前後。こうした端末を気兼ねなく使おうと思ったら、やはりデータ容量は無制限の方がいい。
5Gの登場に合わせ、スマートフォンが扱うデータのサイズは徐々に大きくなっており、容量制限の方が気兼ねなく使える。iPhone 12 Proの4K、60fpsで動画を撮ると、そのサイズはわずか1分で500MB弱になる
一方で、ソフトバンクはメリハリプランが50GBで、Y!mobileのシンプル20とは30GBの差があるものの、データ容量には制限がある。メリハリプランには、いわゆるゼロレーティングの仕組みが導入されており、YouTubeやAmazon Prime Video、Huluなどの主要動画サービスや、LINE、Twitter、Facebookなどの主要SNSは使い放題になるが、対象外のコンテンツもあり、少々分かりづらいのは難点だ。サブブランドに大容量のプランを入れた分、メインブランドの料金プランにどう磨きをかけていくのかは、今後の課題と言えそうだ。
2社の20GBプランには、ドコモも追随する可能性が高そうだ。現在、ドコモはNTTによる完全子会社化を控えたTOBの最中で、「戦略として新たなものを出すといったようなことは申し上げられない」(吉澤和弘社長)。株価に対し、大きな影響を与えてしまう恐れがあるからだ。そのため、少なくともNTTのTOBが成立するまでは身動きが取れない。
ただ、吉澤氏は「具体的にどういうふうに、どのぐらいの水準で、いつからというのは、さまざまな選択肢の中から対抗策を継続的に検討していく」と語り、対抗策を打ち出すことを示唆した。ドコモは、大手3社の中で唯一メインブランドのみで戦っているため、20GBプランを投入するとなると、いくつかの選択肢がある。ドコモブランドで20GBプランを復活させるのか、サブブランドを新設するのかは未知数だが、井伊基之氏が新社長に就任する12月1日以降、早ければ年内にも、何らかの動きがあると見てよさそうだ。
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