「公正競争を阻害する」 KDDIやソフトバンクらが“ドコモ完全子会社化”の意見申出書を提出(2/2 ページ)
電気通信事業サービスを提供する28社が11月11日、NTT(持株)のNTTドコモ完全子会社化に関する意見申出書を総務大臣に提出した。ドコモの完全子会社化は公正競争を阻害するというのが趣旨。子会社化は阻止できないが、しっかり議論をすべきと主張している。
光ファイバーの料金が高止まりする懸念
NTT側は、NTTのドコモ完全子会社化や、NTTコムのドコモへの移管は、それ自体が禁止行為規制に抵触するわけではなく、NTTの澤田純社長も「法制度上は問題ない」と説明している。
では、今回の意見申出書で述べられている「公正競争の阻害」とは、具体的にどういうことなのか。NTTグループは光ファイバーなどのボトルネック設備を保有しているという優位性を持つが、NTTグループが一体化することで、その優位性がさらに強まることになるという見立て。これは携帯電話の基地局展開にも影響を及ぼす。高い周波数帯を用いる5Gでは、緻密な基地局建設が不可欠になるため、必要な光回線数が増加する。
仮にNTT東西が光ファイバーなどのボトルネック設備を、NTTグループと競争事業者に同等の条件で貸し出したとしても、「すごく高い値段で卸料金を出すとなった場合、ドコモも競争事業者も赤字になることが想定されるが、NTTグループとしては連結なので困ることはない」(岸田氏)という状況になる。
松井氏は「NTTさんの中でお金が移動しているだけなので、料金が高止まりする。表に見えない部分で、実質的に競争から排除されることがあり得るのではないか」と危惧する。楽天モバイル 執行役員 渉外部長の鴻池庸一郎氏は新規参入事業者の立場から、「(光ファイバーの)料金が高止まりすると、これから新規に参入していく事業者にとっても、公正競争の阻害になることを懸念する」と話した。
グループ全体で見ると資本力に余裕が生まれるため、携帯料金の値下げもしやすくなる、という見方もある。ドコモが赤字を覚悟で料金値下げをする恐れもあるが、岸田氏は「料金はさておき、いろいろな面で支配力を発揮できることは懸念している」と述べるにとどめた。
子会社化は阻止できないが、しっかり議論をすべき
総務省はドコモの完全子会社化について、今のところ反対の意は表明していない。武田総務大臣は、9月29日の記者会見で「社会環境に合致した健全なやり方を期待している」とする旨のコメントを出しており、容認しているとも受け取れる。
意見申出書は総務省に提出したばかりなので「具体的なコメントはいただいていない」(松井氏)が、「容認しているというよりは、社会環境が変わっているという状況を踏まえて、見直しがあってもいい」(同氏)と捉えている。その点は否定しないものの、ボトルネック設備の公平な運用を求めていく。
なお、NTTのTOB(株式公開買い付け)は「阻止できない」(岸田氏)が、本来は「環境変化について議論をしてからやるべき」(松井氏)で、順番が逆転してしまったとの見方。「TOBというタイミングではなく、しかるべきタイミングで必要な議論をしていくべき」(鴻池氏)
その議論の場としては、これまでNTTの在り方について議論されてきたときと同様、情報通信審議会や同等の場で、競争事業者や有識者などを含めた公開議論の実施を要望する。その上で、環境変化に応じた競争ルールの整備が必要だとしている。
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