NTTによるNTTドコモの完全子会社化 KDDIとソフトバンクの反応は?
NTTがTOB(株式公開買付)によるNTTドコモの完全子会社化を発表した。携帯電話事業でドコモ、固定通信事業でNTT東日本やNTT西日本と競合するKDDIやソフトバンクは、この動きをどのように受け止めたのだろうか。
既報の通り、NTT(日本電信電話)は9月29日、NTTドコモを株式公開買付(TOB)によって完全子会社化することを発表した。株式の買い付けは9月30日から11月16日まで行われる予定で、NTTは買い付け資金を6つの金融機関から借り入れる。
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NTTによるドコモの完全子会社化は、NTTグループ全体の成長と、ドコモの競争力強化と成長を目的にしたものだという。しかし、ドコモが他のNTTグループ企業との連携を強化すると、携帯電話(移動体)通信と固定通信の両方を手がける“競合企業”であるKDDIやソフトバンクとの競争に何らかの影響が出る可能性がある。
今回のNTTの動きについて、KDDIとソフトバンクはどう思っているのだろうか。両社のコメントを得られたので、体裁を整えた上で掲載する。
KDDIからのコメント
ドコモの携帯電話料金の値下げの問題と、NTTの経営形態の在り方は、別の問題と考えています。
NTTの経営形態の在り方は、電気通信市場全体の公正競争の観点から議論されるべきです。
ソフトバンクからのコメント
NTTグループ各社の在り方については一定のルールが課せられており、NTT(持ち株)によるドコモの完全子会社化は、電気通信市場における公正競争確保の観点から検証されるべきものと考える。
両社の懸念は「公正競争」
NTTは、県域の固定通信を担うNTT東日本(東日本電信電話)やNTT西日本(西日本電信電話)と並んで「NTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)」による規制を受ける特殊法人だ。ドコモはNTT法による規制の対象外ではあるが、電気通信事業法に基づく「禁止行為規制」の対象となっている。NTTやドコモにはKDDIやソフトバンクにはない“足かせ”があるということになる。
しかし、両社に“足かせ”がある状態でも、KDDIやソフトバンクはNTTグループの「再結集」が進めば公正な競争環境が崩れてしまいかねないという懸念を抱えている。
現行の法令を踏まえると、NTTによるドコモの完全子会社化自体には法的な瑕疵(かし)は見当たらない。この「子会社化」は、通信事業の競争環境をどのように変えていくのだろうか。今後に注目だ。
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