名言で振り返る、2020年のモバイル業界 楽天モバイルから5G、料金値下げまで(3/4 ページ)
2020年のモバイル業界は「激動」と呼ぶにふさわしい1年でした。5Gの商用サービスや楽天モバイルの本格サービスが始まり、NTTによるドコモの完全子会社化や政府の強い要請による携帯料金値下げもありました。2020年を振り返る特別企画として、主要なトピックでキーパーソンが発した言葉を振り返っていきます。
スマホ決済関連:本人確認の甘さが不正利用の引き金に
「ドコモ口座の作成に当たって本人確認が不十分だった」(NTTドコモ 丸山誠司副社長)
ドコモ口座の不正出金が発覚し、被害総額は2885万円に上りました(現在は補償完了)。この不正出金はドコモ回線を契約していないユーザーのdアカウントから起きました。ドコモ回線を契約していない場合、メールアドレスだけでdアカウントを作成でき、電話番号やSMSを利用した認証は行っていませんでした(現在は導入済み)。ただし一連の不正出金は他の決済サービスでも起きており、ドコモだけの問題ではなく、一部の銀行にも原因があったことが分かりました。
「決済サービス事業者の合意が取れないと2要素認証は導入できない」(ゆうちょ銀行 田中進副社長)
スマホ決済サービスへチャージする手段の1つである「銀行口座」の登録が、一部の銀行は「口座関連の情報のみ」と甘めに設定されていました。特に被害件数が多くクローズアップされたのがゆうちょ銀行。ゆうちょ銀行を登録するにあたり、一部の決済サービスでは2要素認証を取り入れていましたが、d払いやPayPayをはじめとする多くの決済サービスは口座関連の情報のみで登録できていました。田中進副社長は会見で2要素認証を「もっと強力にお願いをしておくべきだった」と述べましたが、決済事業者の合意が取れなかったため導入していなかったとのこと。なぜ一律で2要素認証を必須としなかったのか。決済事業者にも非があると受け取れる発言は物議を醸しました。
ドコモの完全子会社化関連:ドコモを強くするためだが、他社からは異論
「収益は3番手に落ちている」(NTT 澤田純社長)
「ドコモを強くするため」(NTTドコモ 井伊基之社長)
NTT(持株)によるドコモの完全子会社化も業界に衝撃を与えました。通信キャリアにおけるドコモのシェアは依然として1位ですが、収益はKDDIとソフトバンクに負けて3位になったことを、NTTの澤田純社長は要因に挙げます。ahamoや既存プランの値下げにより、さらなる減収が見込まれる中、新生ドコモが新たな収益の柱を作ることができるか、井伊社長の手腕が問われます。
「公正な競争を阻害する」
そんなドコモの完全子会社化に異を唱えたのが、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど他の通信事業者でした。電気通信事業サービスを提供する28社が、11月11日にNTTによるドコモ完全子会社化に関する意見申出書を総務大臣に提出しました。NTTによるドコモの完全子会社化は、「NTTドコモの完全民営化」や「NTTドコモに対するNTTの出資比率の低下」など、公正競争の確保に必要とされてきたドコモ分社化の趣旨に反すると主張。さらに、NTTが保有する光ファイバー設備の卸料金を値上げしたとして、ドコモの損益はNTTグループ内でカバーできるため、公正な競争を損なうことも訴えました。
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