シンプルなKDDI新料金プラン povoの“トッピング”は減収影響をカバーできる可能性も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモの「ahamo」やソフトバンクの「SoftBank on LINE」に対抗する、KDDIの新料金プランが発表された。「povo」が他社より500円安いのは、5分間の音声通話定額を「トッピング」と呼ばれるオプションにしたため。ファストフード感覚で、サービスを自由に追加できる点を差別化のポイントにした格好だ。
トッピングはユーザーとKDDIの双方にとって“おいしい”仕組み
povoは、KDDIが新たに設立したKDDI Digital LifeがMVNOとして展開する予定だった新ブランドを、料金プランに改定したものだ。KDDIによると、運営はKDLが行うというが、ネットワークは借り物ではなく、auと同品質になる。高橋氏も「設備構成は一部異なるが、エリアや最大速度はauと同等の品質」と太鼓判を押す。筆者の推測だが、MVNOとして準備してきたパケット交換機(P-GWなど)は、そのまま流用している可能性がある。こうした差分はあるため、5Gへの対応はやや遅れて夏ごろの開始になるという。
KDLが立ち上げようとしていたMVNOは、シンガポールに拠点を構えるCircles Asiaのノウハウを生かし、ユーザーが自由にカスタマイズできることを特徴にしていた。Circles Asiaは、シンガポールの他、台湾やオーストラリアでも事業を展開しているが、オンラインに特化したカスタマイズの自由度が高い料金プランを売りにしている。例えば、シンガポールのCIRCLES.LIFEには、20GBプランと100GBプランがベースとして用意されており、そこにデータシェアのSIMカードやローミングサービス、音声通話定額などを簡単に組み合わせられるようになっている。
povoに生かされたのは、こうしたノウハウだ。MVNOの新ブランドとして投入しなかったのは、総務大臣の「羊頭狗肉」発言や、他社に対抗する必要があったからだ。総務大臣は、別ブランドでの料金値下げをけん制。ドコモのahamoもその意向を受け、痕跡は残しつつもサブブランド色は徹底的に排除した。高橋氏も「MVNOで提供しようと思っていたが、それ(発表)以降の社会的な動きや、他社の動きがあった」とその背景を明かす。「auの中でpovoをやった方が、対抗力がつく」(同)というわけだ。
トッピングのシステムは、ユーザーが必要なサービスを選べるだけでなく、うまく組み立てることができれば、KDDIが受ける減収影響も緩和できる。例えば、24時間のデータ無制限トッピングを10回追加すると、料金は2000円。ベースの料金と合わせると、ピタットプランで割引を全て受けたときの上限金額とほぼ同じになる。トッピングなだけに、ユーザーとKDDIの双方にとって“おいしい”仕組みといえる。
実際、KDLの設立を発表した際に、高橋氏はCIRCLES.LIFEの事例を引きながら、「シンガポールでの事例を見ると、MVNOだから安いというのではなく、MNOより高いケースもある」と語っていた。逆に、魅力的なトッピングがなければ、ベースの2480円で済んでしまうため、KDDIのARPUは大きく下がる恐れもある。その意味で、魅力的なトッピングをどのように投入していくかが、成否を分ける鍵になる。
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