万年4位にとどまるつもりはない――楽天モバイルの2020年とこれから(2/2 ページ)
楽天が2020年の通期連結決算を発表した。巣ごもり需要により増収したものの、楽天モバイルにおいて基地局設置計画を前倒すなどした影響で営業赤字で終わった。2021年夏までには、2026年夏までに達成するとしていた「人口カバー率96%」を実現する計画だ。
質疑応答
2月12日に行われた決算説明会では、楽天モバイルの事業に関する質問が相次いだ。回答は主に楽天の三木谷浩史社長(楽天モバイルの会長を兼務)が行ったが、一部は楽天モバイルの山田社長やアミン副社長も対応している。
楽天モバイルに関連する主なやりとりは以下の通り。
―― 今回の決算では、設備投資が赤字として大きくかさんだようです。携帯事業の黒字化について「(ユーザーの)獲得コストは下がるので損益分岐点は変わるものの、そのめどは変わらない」という旨の発言を先日来していると思うのですが、黒字化のめどを改めて教えてください。
三木谷氏 黒字化のタイミングは、具体的には2023年という計画を(総務省には)提出しています。今のところは、そのタイミングに変更はありません。私たちの料金プランは1つ(Rakuten UN-LIMIT)しかないですが、Rakuten UN-LIMIT VIを発表してから申し込み者数が4倍近くに成長しています。いずれはスローダウンするかもしれませんが、非常に強い手応えを得ています。
(携帯事業は)完全な固定費ビジネスではないものの、変動費は意外と少ないです。そういう意味では、売り上げに対する損益分岐点はそれほど変動しません。一方で、ARPU(1契約者当たりの平均収入)は(プランの仕様変更によって)多少下がると思いますので、ユーザーベースでの損益分岐点は上がるかと思います。
ただ、実質的な損益分岐点は前倒しされると、個人的には思っています。何年も(赤字ベースの事業を行う)という訳には行きません。現在の予測では(黒字化が早まる可能性は)多少ある、といった感じです。
―― 基地局の設置計画が4万4000局と改められていますが、人口カバー率(の目標)は96%で据え置くという認識でよいでしょうか。それを超えるエリアカバーは地上基地局ではなく(低軌道)衛星からのエリア化をお考えなのでしょうか。
山田氏 4万4000局という数値は、人口カバー率96%を前提にした数値です。2年ほど前に総務省に提出した計画と比べると、より高密度化してつながりやすいネットワークを目指しているということです。ユーザーからの好評を受けて加入者数も増えてきているので、キャパシティ(収容数)を増やす目的もあります。
96%から先(のエリアカバー)は、地上の基地局と衛星を組み合わせて作ろうと考えています。
三木谷氏 衛星からのカバレッジはキャパシティの問題もあります。人口密度によって地上局を立てるかどうかを考えます。最終的には地理的なカバレッジを99.9%を達成できると思っていますが、「96%で地上局は打ち止め」ではなくて(状況に応じて)さらに増やしていくということです。
―― 5Gエリアの人口カバー率はどうしていくお考えでしょうか。
三木谷氏 携帯電話が2Gから3G、3Gから4Gに置き換わっていったのと同様に、ゆくゆくは4Gは5Gに置き換わっていくと思います。その中でSub-6(6GHz帯未満の電波)、ミリ波、その対極にある低周波数帯――これを「5G」を呼んでいいのかどうかは難しい問題がありますが――と、将来的には4G(LTE)並みのカバレッジにしていくというビジョンに進化していきたいと思っています。
―― (MNOサービスにおける)当初計画の300万契約の達成が見えてきました。今後の目標が何かあれば教えてください。
三木谷氏 私たちとしては4位に甘んじているつもりはありません。契約者数は増やしていきます。(グループ企業の)楽天カードは、間もなく2200万契約という所まで増えてきています。穂坂さん(楽天カードの穂坂雅之社長:楽天の副会長を兼任)には申し訳ないですが、カードの会員数は軽く上回りたいと思っています。
―― (LTE)基地局への投資が30~40%増えるということですが、5Gへの投資額として見えているものと合わせると1兆円規模になるかと思います。今期以降、モバイルへの投資は毎年どのくらいの規模で行われると考えればいいでしょうか。
山田氏 当初から出ている金額感から少し増えたという認識で大丈夫です。6000億円から3~4割増えるというイメージで、それが4Gの(人口カバー率)96%まで高めるための累計の投資額ということになります。(筆者注:当初計画では2026年3月末までの累計で6000億円を投資する予定だったが、増額分を含めて前倒して投資することになる)
三木谷氏 カバレッジとキャパシティという問題もあります。先ほども「4位にとどまるつもりはない」という話をしましたが、当初の加入者数の計画よりもかなり多くなる見込みです。(投資額の)3~4割の増加は「(当初計画よりも)加入者数が増える分、投資も増える」というイメージです。
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