ソフトバンクが“次世代電池”を開発 配送ドローンやHAPSでの実用化を目指す(1/2 ページ)
ソフトバンクが、次世代電池の研究開発と早期実用化を推進するために次世代電池の評価・検証施設「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を6月に設立する。次世代電池は世界各国で開発競争が進んでおり、今後の次世代デバイスの登場には不可欠とされている。同社は高密度化を進めることで、次世代デバイスへ適用していくことを目指す。
ソフトバンクが、次世代電池の研究開発と早期実用化を推進するために次世代電池の評価・検証施設「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を6月に設立する。これまでも同社の先端技術開発本部が次世代電池の研究開発を続けてきたが、世界のメーカーの電池セルを同一環境下で評価・比較することで、性能差の分析・技術課題の早期特定の実現を目指す。また、世界中のメーカーにラボを活用してもらうことで、ノウハウも蓄積し、それをメーカーにフィードバックすることも狙う。既に15社が次世代電池の検証を予定しているという。
ソフトバンクはこれまでも、物質・材料研究機構(NIMS)やEnpower Greentech、産業技術研究所、慶応大学、三重大学などと次世代電池に向けた研究で協力。Enpower Greentechとは質量エネルギー密度450Wh/kg級電池の実証と電池長寿命化の要素技術開発に成功。こうした次世代電池の開発では、成層圏を飛行する無人飛行機を携帯基地局とするHAPSでの実用化を目指す考えだ。
さらなる高密度化と長寿命化が必要な次世代電池
次世代電池は世界各国で開発競争が進んでおり、今後の次世代デバイスの登場には不可欠とされている。例えば荷物を配達するドローン、さらに人を乗せて運ぶドローンといったデバイスの進化に伴い、必要な電力は拡大しているが、現状の電池ではそうした需要には対応できず、さらなる高密度化と長寿命化が必要だという。
ただ、高密度と長寿命の双方を満たす次世代電池の開発には時間がかかる。そもそも高密度と長寿命は「技術的にはトレードオフ」(先端技術本部先端技術研究室室長・西山浩司氏)であり、多くの電池メーカーは「少しずつ密度を高めながら寿命を延ばしている」(同)という。そこでソフトバンクでは双方を満たすのではなく、まずは高密度化を進めることで、次世代デバイスへ適用していくことを目指す。
まずは400~500Wh/kgの電池を開発
一般的な次世代電池の開発だと、充放電が1000回以上、エネルギー密度が400Wh/kgというレベルに到達するのが2020年代後半から30年代だという。それに対してソフトバンクは、まずは早期に400Wh/kgを達成し、さらに500Wh/kg、600~1000Wh/kgまでを実現していく。寿命は短くなっても用途に応じて使い分けることで対処する考えだ。
このエネルギー密度は、例えば現行のドローンが250Wh/kgで30分の飛行時間だとすると、同じバッテリーサイズで400Wh/kgなら48分、500Wh/kgなら60分、1000Wh/kgだと120分となる。EVなら250Wh/kgが400km走行できるのに対して、1000Wh/kgなら1000kmとなる。荷物配送ドローンの場合、30分しか飛べないと現在の荷物配送の拠点数ではカバーできないが、60分を超えると拠点を増やさずに現在の配送エリアをカバーできるようになるという。
これを実現する次世代電池として、まず開発する400~500Wh/kgの電池では、従来のリチウムイオン電池に対して正極と電解質は変えず、負極活物質を変更する。これまで、負極活物質としては黒鉛を中心とした材料が使われており、「350Wh/kgが限界と言われている」(先端技術開発本部先端技術研究室担当部長の齊藤貴也氏)。従来の電池には無駄となる部分(多孔度※)があり、負極をリチウム金属に変えることでこの多孔度が0%となり、容量に対するエネルギー密度の無駄がなくなるという。
これで400Wh/kgを実現する。負極活物質をリチウム金属に変えると、電池の中に占める重量の割合が20~30%から1%にまで削減できるが、それに伴って重量比が15%と大きくなるのが銅箔(どうはく)の集電体。現状は最薄で6ミクロンという銅箔だが、「これ以上薄くすると破断するので限界に近い」(同)。そのため、リチウム金属自体に集電体と活物質の双方の役割を持たせる、アルミ合金箔、樹脂箔という次世代集電体を検討しているという。「樹脂箔が成功すると集電体の重量は4分の1になり、電池全体に占める割合は5%程度になる。10%エネルギー密度が上げられる」と齊藤氏は話す。これで500Wh/kgが実現できるようになるそうだ。
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