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ソフトバンクが“次世代電池”を開発 配送ドローンやHAPSでの実用化を目指す(2/2 ページ)

ソフトバンクが、次世代電池の研究開発と早期実用化を推進するために次世代電池の評価・検証施設「ソフトバンク次世代電池Lab.(ラボ)」を6月に設立する。次世代電池は世界各国で開発競争が進んでおり、今後の次世代デバイスの登場には不可欠とされている。同社は高密度化を進めることで、次世代デバイスへ適用していくことを目指す。

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より高密度な電池は安全性やコスト効率を高める必要がある

 500Wh/kgを超える600Wh/kgになると、従来は液体の電解質を固体に変えて、正極活物質の素材も変更する。従来は重元素がメインで原料には高価なレアメタルが使われているが、まずは無機物でコバルトを使わない正極活物質によって実現する。


600~1000Wh/kg開発のための技術

次世代電池開発に必要な4つの要素

 800Wh/kgに向けては、正極側で次世代アルミ箔を採用し、水素や窒素などの有機正極を採用する。これによってコストも安価にできる。1000Wh/kgになると、残る正極の多孔度25%を減らすことを目指し、セルの面方向から電流を通す「バイポーラ構造」を採用することで達成するという。


4要素実現に向けたキーテクノロジーは6つ

リチウム金属は電解液につけると被膜層が形成され、容量が劣化。さらにとげとげしたデンドライトが発生してセパレータを突き破って発火、破裂することも。それを対処する表面処理技術

セルの面方向から電流を通すバイポーラ構造。無駄がなくなり、「いいところばかりだが難しい。長期的になるとは思うが取り組んでいる」(齊藤氏)

 これによって高密度化は実現できるが、実用化には長寿命化や安全性、コスト効率も高める必要がある。レアメタルフリーにすることで低コスト化を図れるし、電解質を固定電解質にすれば安全性も向上する上、高電圧化も可能になる。

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レアメタルフリーで高容量化を図れる技術

正極は構造的に導電助剤やバインダーといった容量に寄与しない部分があり、「固体電解質にすると、既存の電解液の数倍の伝導度になる」と齊藤氏

電解液を高濃度からさらに固体まで進めることで、高密度化に加えて安全性の向上が見込める

基地局のバックアップ電源として使うことも視野に

 こうして開発を進める次世代電池は、「HAPSやドローンなどに合うのではないか」と西山氏。EVに導入するにはどうしても「寿命重視」になるが、HAPSの場合は「半年飛べばいいので、(充放電サイクルが)200サイクルで十分」(西山氏)。エネルギー密度が向上すると、同じバッテリーサイズならバッテリー容量が大きくなり、同じ容量ならサイズが小さくなる。家庭用蓄電池も従来120kgだったものが30kgまで小型化できるなど、街のあらゆるところに次世代電池を置いてエネルギーマネジメントする、といった未来も想定する。


電池が小さくなれば、町中に次世代電池を置いてエネルギーマネジメントができる、としている

 ソフトバンクでは、HAPSが想定している2023年のサービス開始を見据えて次世代電池(400Wh/kgクラス)を実現したい考えだが、それがなくても既存の携帯基地局向けのバックアップ電源として軽量化したバッテリーが使えないかの検討も行っているという。

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