「razr 5G」や「moto g100」を投入 モトローラが高価格帯モデルにも注力する理由:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(2/3 ページ)
モトローラが日本市場に投入するスマートフォンは、これまでミッドレンジ帯が中心だった。しかし「razr 5G」や「moto g100」など、高価格帯モデルにも力を入れつつある。日本法人の松原丈太社長に、直近の戦略を聞いた。
海外モデルとのタイムラグは徐々に短くしていく
―― g100の上にはなりますが、razr 5GのプロセッサはSnapdragon 765Gで、パフォーマンスが逆転しているような印象も受けます。これについてはいかがでしょうか。
松原氏 razr 5Gは、「CPUがどう」ということを飛び抜けた端末です。800番台のチップを使うこともできましたが、ユースケースやバッテリーの持ちなど、トータルで考えたときに、一番いいセットとしてシカゴのエンジニアがSnapdragon 765Gを選択しています。これは車の世界でもそうですが、エンジンが強力で高い車もあれば、そうでなくても高い車もあります。razr 5Gは、そういったスペック競争から一歩飛び出し、次の価値観をお見せすることにトライした端末です。
―― 発売後の実績はいかがでしたか。
松原氏 もともと数を追う製品ではありません。モトローラの考えや世界観を、製品の形で見ていただけるシンボルのような役割だと考えていました。実績はどうかというと、弊社が考えていた当初のプランより順調です。ご存じの通り、オープンモデルとしてSIMフリーで出した分と、ソフトバンクに納品した分の2つがありますが、両方とも反響が大きく、数的にも思っていた通りか、少し上振れする形で出ています。
―― 一方で、海外モデルとのタイムラグが少々あったようにも見えました。
松原氏 razr 5Gは特殊な背景もあり、確かに少しタイムラグがありました。ただ、一般的なタイムラグに関しては、以前より短くなっています。以前だと3カ月、4カ月、中には5カ月というものもありましたが、これは徐々に短くしていく方向です。日本特有の認証など、避けられないプロセスはありますが、あと少し短縮することは可能だと考えています。
―― 国内向けに対応バンドを合わせたり、認証を取ったりはあると思いますが、一歩進めて、おサイフケータイなどのローカライズをするお考えはありますか。
松原氏 いろいろなパターンが考えられます。特別な端末を出すこともあれば、グローバルの端末に日本向けのフィーチャー(機能)を入れ、スクラッチから日本のデザインを入れるということも考えられます。全ての可能性は、いつも検討しています。求められるスペックや価格があるので、そこにミートするかどうかの観点で、可能性を見極めながら製品企画をしていくことになります。
―― 障壁もありそうですが。
松原氏 障壁はゼロではありません。インパクトはありますが、それを踏まえた上で、欲しているお客さまが多いとなれば、あえて踏み込むことは考えられます。
キャリアの新料金プランで想定と違う動きがあった
―― razr 5Gは、キャリアモデルとしてソフトバンクからも発売されました。久々のキャリアモデルですが、この比率を増やしていくお考えはありますか。
松原氏 もちろんありますし、キャリアともいろいろな議論をしています。razr 5Gのような価格レンジの端末は象徴的ですが、あの価格帯になると、CPUに思いっきり振ってみたり、カメラをよくしたりと、自由度が高くなります。伝えたいことに沿ったモデルが出せるということです。低価格だと、そういった自由度が低くなりますが、われわれとしては、業界に一石を投じられるものを出していきたい。キャリアにも、こういった商品が考えられるといった提案は、積極的にやっていきます。
―― 3月には大手3キャリアのオンライン専用プラン、ブランドがスタートしました。ahamoを除き、基本的には端末を取り扱っていませんが、SIMフリーについて、何かポジティブな影響はありましたか。
松原氏 その話が出る前から、月々の料金プランと端末価格を消費者に対して明確に分かれた形で見せていく流れがありました。アグレッシブなプランが出てきたことで、その流れが加速している実感はあります。消費者に認識されていなかったスマホの価格が、現実の数字として見やすくなっています。ここが、端末メーカーとしての競争のしどころです。特徴を持った端末を出したり、ユースケースを考えたりしてご提案していけます。
―― 全体を通した販売状況はいかがでしょうか。SIMフリー市場に参入後は、継続的に成長していたと思います。
松原氏 おかげさまでラインアップが増えていますし、チームも拡充しています。それに比例して、出荷台数も増えています。ただし、今年(2021年)の春商戦は、各キャリアから攻めた料金プランが出た関係もあり、想定と違う動きはありました。台数的に、本来このタイミングで出るというものにタイムラグがあったということです。コンシューマーの皆さまも、いろいろなプランが出ていたので、それを決めてから購入に至っていたのではないでしょうか。そういう影響は、メーカー側からもみて取れました。
―― 簡単に言うと、3月のオンライン専用プランや、4月のMVNOの料金改定を待ってから購入したので、ボリュームが出るタイミングが後ろにズレたということでしょうか。
松原氏 大体そういった流れで、少しずつ後ろにズレています。
―― 前年度と比べていかがでしょうか。
松原氏 そこは開示できませんが、先の四半期で想定外の動きがありました。ただし、ペース的には調子が戻ってきているので、プラン通りになりそうです。
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