KDDI決算で明らかになった新料金プランの影響 「UQ mobile」をユーザー獲得の武器に:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
KDDIの第1四半期決算は増収増益。通信料収入の減収が響いた一方で、同社がライフデザイン領域と呼ぶ上位レイヤーのサービスがそれを補った。5Gも通信料収入の減収を抑止している。povoの契約数は100万まで増えたが、同社がユーザー獲得の武器として期待しているのがUQ mobileだ。
UQ mobileをメインに据え契約者獲得を加速、povoは約100万契約に
こうした中、6月末時点で5G端末の累計販売台数が340万台を突破したことは、KDDIにとって明るいニュースといえそうだ。4Gと5Gを足したマルチブランドでのスマートフォン契約数も2927万まで伸び、3000万契約が目前に迫っている。料金値下げに加え、2020年秋以降に投入した全端末を5G化したことが大きな要因とみていいだろう。現時点では5Gに対応しているブランドが、データ容量無制限を売りにしたauのみになるため、トラフィックの押し上げ効果も大きくなるはずだ。
とはいえ、契約者の総数が減ってしまえば、いくら5Gが普及しても収益の基盤が弱体化することになる。「モメンタムを回復することに全力を注いでいる」(同)というKDDIが、ユーザー獲得の武器として期待しているのがUQ mobileだ。高橋氏は、「UQ mobileはもっとお客さまの生活に密着したブランドであることを目指す」としながら、でんきセット割が好評なことを強調した。プロモーション効果が分散しないよう、テレビCMなどでも、povo以上にUQ mobileの露出を増やしているという。
現状だとpovoとUQ mobileは4Gしか利用できず、5GでのARPU押し上げ効果は出ないが、5Gサービス開始については「近日中にお知らせできるよう、準備を進めている」(同)という。既に「iPhone 12/12 mini」や「AQUOS sense5G」「OPPO A54 5G」といった対応端末は販売しているため、導入は秒読みとみていいだろう。KDDI傘下のJ:COM MOBILEは、8月25日に5Gのサービスを開始することを予告しているため、近いタイミングでUQ mobileやpovoの5G対応も始まる可能性はありそうだ。
3GBで990円の「ミニプラン」を導入したソフトバンクのLINEMOにも、当面はUQ mobileで対抗していく構えだ。高橋氏は「市場動向を注視しながら、しっかり対応を考えていかなければいけない」としながらも、UQ mobileもでんきセット割適用時にミニプランと同額の990円になることを強調。LINEMOにはない「データ容量の繰り越しや、店頭でのサポートにも対応している」(同)特徴を挙げ、UQ mobileの優位性をアピールした。povoは低料金のブランドではなく、オンライン専用でトッピングを売りにした新しい料金プランとして定着させたい思惑も透けて見える。
そんなpovoも、ユーザー数は順調に増えて約100万程度まで成長したという。一方で、「スタートしたときはpovoの加入者がすさまじく上がっていたが、まずUQ mobileに力を入れてモメンタムを回復する戦略を取った」(同)ため、現時点ではpovoの伸びは落ちてきているという。オンラインで手軽に付け外しできるトッピングを売りにしたpovoのコンセプトは高橋氏自身も「個人的に思い入れがある」といい、力を入れていく方針だ。サービス開始以降、新規のトッピングが登場していないが、このバリエーションをいかに充実させていくかが今後行方を左右しそうだ。
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