NTTドコモに聞く「エコノミーMVNO」の勝算 収益性や参画のハードルはどう見る?(3/3 ページ)
NTTドコモの「エコノミーMVNO」が始動し、10月からはNTTコミュニケーションズのOCN モバイル ONEが、ドコモショップでの契約に対応。12月にはフリービットグループのトーンモバイルも、「トーンモバイル for docomo」の提供を開始する。そんなエコノミーMVNOの狙いをドコモに聞いた。
一次MVNOには広く声をかけている
―― 2022年1月にNTTコミュニケーションズが子会社化されますが、そうなると、OCN モバイル ONEにユーザーが移れば、広い意味でドコモにとどまっていることになります。この場合、エコノミーMVNOでOCN モバイル ONEが優先されるというようなことはあるのでしょうか。
蓑手氏 1月のフォーメーション変更にあたっては、私どもが公正競争上、留意しなければならないことがあります。そこに関して、フェアな競争環境を作っていくのは大前提です。まだ料金は出ていませんが、トーンモバイルであればティーンのお子様の見守りなど、ユニークなサービスがあり、そういった部分をしっかり訴求していくのがフェアなことだと考えています。それぞれに一番適した提案をしていきます。
―― 公平というところで言うと、一部のMVNOから声がかかっていないという話も出てきています。
蓑手氏 広く公平に情報提供をさせていただきました。もしかしたら、どこかで情報が途切れてしまったところはあるかもしれませんが、一次MVNOに関しては広く声をかけた上で協議を続けています。
―― 意外と二次MVNOにも特色のあるサービスが多いような印象はありますが、二次以降のMVNOはどうされていく予定でしょうか。
蓑手氏 まずは一次MVNOの反応を見てからと考えています。増えるごとに店頭での準備も必要になってくるので、一度にバーッと増やすというより、条件がまとまったら準備をしてというように進めていきたいと考えています。
―― 今後もMVNOは増えるのでしょうか。低容量、低料金を売りにしているMVNOが多い中で、なかなか差別化が難しいような気もしています。
蓑手氏 協議中のことなのでお話はできません。今言えるのは、まだ協議している会社があるということです。各社の持つ強みを、ドコモショップという場を通じて適切にお客さまにお届けできればと思っています。その強みをクリアにしていただければと考えています
ドコモメールやファミリー割引が使えなくなる問題は?
―― 現状だと、エコノミーMVNOに変えるとドコモのメールアドレスが使えなくなります。持ち運び制度が始まりますが、それも見越してのスタートだったのでしょうか。
蓑手氏 メールアドレスの持ち運びができるようになることで、よりお客さまがストレスなく(エコノミーMVNOに)MNPできるようになると感じています。ただし、それを見越してというより、たまたまた動きが同じタイミングだっただけです。持ち運び制度が始まれば、メールアドレスが変わる心配をされている方にはご案内ができるようになると思います。
―― あくまでMVNOなので、ドコモ光とのセット割が効かなかったり、ファミリー割引の適用人数から外れてしまったりするのも料金プランとの違いだと思いますが、そこに対しても何らかの対応はしていくのでしょうか。
蓑手氏 料金システムが違うので、何ができるのかというのはありますが、(それをやるのは)少し踏み込みすぎな気もしています。確かに、ファミリー割引の適用対象外になるご心配の声は一部で出ていますし、そういった声には真摯(しんし)に耳を傾けなければいけないのですが、現時点でできることとできないことがあります。例えば割安なOCN モバイル ONEのプランでご満足いただけるのであれば、ファミリー割引は組めませんが、それ以上のメリットがあるとご納得いただけるような形で提案をしていきたいと考えています。
MVNOの端末は、要望があれば協議する
―― 最後に端末について伺いたいのですが、実際、エコノミーMVNOとドコモ端末はセットで売れているのでしょうか。
蓑手氏 売れています。3Gからの乗り換えだと、どうしても端末購入になりますからね。ただ、よくご存じの方はSIMの交換だけでいいとなることもあります。
―― 一方で、MVNOと言えば、いわゆるSIMフリー端末とのセット販売が主流でした。トーンモバイルのように、端末まで作って垂直統合モデルを売りにしているMVNOもあります。こういったものは扱っていかないのでしょうか。
蓑手氏 ドコモショップで扱うということで、まずはドコモの端末を販売しています。他社の取り扱い端末については、ご要望があれば協議になると思います。ただ、話題に出ないことはないのですが、やはりドコモショップでドコモの端末を買えるというのはお客さまにとっても分かりやすい。スタートとして、まずはそちらを大事にしました。おかげさまで端末の販売状も悪くない状況です。
取材を終えて:エコシステムをいかに強化していけるか
ドコモや以前インタビューしたOCN モバイル ONEの担当者から話を聞く限り、エコノミーMVNOの出足は比較的好調なようだ。特に3Gケータイからの乗り換えるシニア層が、低料金に引かれ、エコノミーMVNOを選択していることが伺える。ドコモショップで契約できることで、MVNOへのハードルを大きく下げた効果があったといえる。メールアドレスの持ち運び制度が始まれば、こうしたユーザーとの相性はさらによくなりそうだ。
一方で、インタビューでのやりとりにもあったように、短期的には、エコノミーMVNOのユーザーが増えれば増えるほど、ドコモとしては収入を失っていくことになる。直接的な通信料収入を得られないからだ。まだ連携は始まったばかりだが、dポイントを軸にしたエコシステムをいかに強化していけるかが、エコノミーMVNOの今後の行方を左右しそうだ。
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