「携帯電話ショップ」の20年を振り返る 2000年代に最盛期も“冬の時代”を迎えた理由:ITmedia Mobile 20周年特別企画(1/4 ページ)
携帯電話を購入際に欠かせない存在だった「携帯電話販売店」ですが、昔はいろいろな意味で“大盛況”でした。過去に複数の携帯電話販売店で店員をしていた筆者が、この約20年間のショップの変化を振り返っていきます。
ITmedia Mobileの20周年、おめでとうございます。
20年前というと、筆者はまだ中学生でした。ちょうど初めての携帯電話を買ってもらえることになって、携帯電話会社(キャリア)のカタログを見て気になる機種の情報をさらに調べようと、まだまだ不慣れなPCを操作してインターネット検索した末に見つけたのが、ITmedia Mobileの前身である「ZDNet Mobile」だったと記憶しています。
それ以来、携帯電話のハードとサービス(ソフト)の両面にハマって立派な“モバイラー”になりました。それが高じて携帯電話を“販売する側”として店頭に立つようにもなり、今日に至るまで携帯電話に関わる場面のほとんどでITmedia Mobileを一読者として楽しんできました。
愛読してきたITmedia Mobileにこのように寄稿できるようになったことは、筆者の人生における携帯電話に関わるイベントの中では、かなり大きなものです。今回、ITmedia Mobileの20周年記事を執筆できる機会を得られたことも大変うれしく思います。
自分が書く20周年にふさわしい記事は何か――やはり携帯電話を“売る側”の歩みでしょう。そこで約20年間の携帯電話販売店の変化を振り返っていこうと思います。
2000年代:いろいろな意味で“大人気”だった携帯電話販売店
2000年代は、特定キャリアの契約手続きを代行する「キャリアショップ」、特定キャリアの携帯電話の販売に特化した「専売店」や、複数キャリアの携帯電話を販売する「併売店」など、さまざまなタイプの携帯電話ショップの出店が相次ぎました。家電量販店も店舗の“一等地”に携帯電話コーナーを用意するなど、携帯電話の販売に注力するようになりました。
このこともあり、携帯電話の販売員(スタッフ)の求人も盛んに行われました。結構良い条件での求人だったこともあり、人気の職種の1つだったと記憶しています。
もっとも、筆者が販売員として初めて現場に立ったのは2008年初頭です。2000年代の“全て”を自ら体験したわけではないのですが、当時の先輩や上司から「あの頃(2000年代)は本当によくもうかった」という話は幾度となく聞かされました。本当に絶好調だったことは間違いないようです。
2008年頃のとある家電量販店の携帯電話売り場。NTTドコモでいうと「FOMA 905i」「FOMA 705i」が発売された時期で、ワンセグ付きの携帯電話や高画素カメラを備える携帯電話で競争が繰り広げられていました
そうなると「なぜ携帯電話販売がもうかったのか?」という話になります。これにはいろいろな理由があるのですが、一番大きかったのは携帯電話の普及レベルがまだまだ「1人1台」に達していなかったことにあります。
2000年代は「iモード」を始めとする携帯電話用のネットサービスが広く普及しました。この接続サービスには「キャリアメール(Eメール/MMS)」が付帯するので、電話以外の方法でキャリアを超えたコミュニケーションを取りやすくなりました。PCとのメールのやりとりも容易になったことも手伝って、さまざまな層のユーザーが携帯電話を手にし始めた所です。
携帯電話がないと困るシーンも徐々に増えてくる中で、新規契約なら本体が「0円」だったり、家族でキャリアをそろえれば手数料や通話料の割引が受けられたり、学生(未成年)に特化した割引サービスが登場したりと、キャリア間の競争によって携帯電話を持つことのコストがグンと下がり、普及に拍車が掛かったことが、2000年代の“販売熱”を生み出したのだと思います。
もちろん、今でも人気機種を安価に販売できれば、それなりの台数がさばける(売れる)と思います。ただ、2010年代前半の「キャッシュバック全盛期」と比べると、筆者が売り場デビューした2008年頃は、掛け値なしで「何もしなくとも携帯電話が売れていく」状況でした。そのこともあって、端末の販売台数目標、新規契約の獲得数やオプションサービスの獲得数といった「ノルマ」も緩い状況でした。
「こんなに楽な仕事があってもいいのか?」と思ってしまったほどですが、この後、だんだんと厳しい時代に入っていくのはご承知の通りです。
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