秋葉原で使えるコミュニティー通貨「アキコ」登場 「お金では買えない新しい体験を」(1/2 ページ)
東京・秋葉原で利用できるコミュニティー通貨「アキコ」が1月26日から導入される。現金との交換ができない通貨であり、「物やサービスの売買」ではなく「新たな体験の提供」を目指す。サービスには、カヤックが提供する「まちのコイン」を採用する。
東京・秋葉原の神田明神やゲームセンター、メイドカフェ、ホテルなどで利用できるコミュニティー通貨(電子地域通貨)「アキコ」が1月26日から導入される。現金との交換ができない通貨であり、「物やサービスの売買」ではなく「新たな体験の提供」と同時に、秋葉原の地域性を生かした活性化を目指す。サービスには、カヤックが提供する「まちのコイン」を採用する。
当初は16事業体、30カ所での導入となるが、運営主体となるGENDA SEGA Entertainmentの申真衣社長は、「今年(2022年)中に100カ所の導入で、ユーザー数3000人を目標とする」と話す。
換金性のある地域通貨とは違う
「まちのコイン」は、カヤックが2020年2月から本導入を開始した「コミュニティー通貨サービス」。現時点で神奈川県小田原市、鎌倉市、東京下北沢エリア、長野県上田市、福岡県八女市、沖縄県石垣市など1都6県・14地域でサービスが開始されている。
現金で電子マネーをチャージし、支払いを受けた店舗側が現金化できるような換金性のある地域通貨も多くの地域で導入されているが、まちのコインはそうした換金性はない。そのため、一般的な物やサービスの売買では利用できない(利用しても構わないが、店舗側が一方的に損をする)。代わりに、特別な体験との交換で利用することが想定されている。
例えば飲食店ではカクテル1杯1000円だが、300コインを追加するとオリジナルカクテルを作ってくれる、マスターのクイズに正解したら100コイン、エコバッグ持参で100コイン、といった具合だ。
カヤックの代表取締役である柳澤大輔氏は、「お金では買えない新しい顧客体験の提供」と説明。「スマイル0円を注文するのは難しいが、スマイル300コインという形ならできるのでは」と柳澤氏が言うように、今までは現金を求めるほどではなかったサービスを提供できるようになり、「体験が濃くなる」と柳澤氏は表現する。
店舗はリピーター獲得、送客の効果も期待できる
実際の導入事例では、鎌倉市の鎌倉ビールは、ビールの原料であるモルトの袋をこれまで廃棄していたが、これを配布する際に10コインと交換。同様にメーカーズシャツ鎌倉では、廃棄していた端切れを300ポイントと交換で配布している。
街の清掃活動に参加でのコイン配布や、フードロス削減につながる規格外野菜との交換など、それぞれの街が個性や課題に合わせた設計をしており、鎌倉観光協会では、スタンプラリーのようにコインを集めながら街を巡るツアーも企画。店舗にとってもリピーター獲得、送客の効果も期待できるとしている。
「店と客」という関係だけでなく、「お手伝い」をしてもらったらコインをやりとりする、といったように、個人間でコインをやりとりすることもできるし、買い物を手伝ってもらう代わりに野菜の目利きを教えたり、料理のコツを教えたりといったノウハウの提供でコインをやりとりするという使い方もあるという。
コインが循環し続ける仕組みを目指す
まちのコイン自体に貨幣価値はなく、発行後180日間で回収される。店舗側に発行コストは掛からないため、自由なコインの流通を設計できる。基本的に流通量は運営主体がコントロールするが、サービス内容によって柔軟に発行が行える。
コインを流通させることで、新たな体験を得るために再び店に行き、リピーターとして利用が進み、コインが循環し続ける仕組みを実現することがカヤックの狙いだ。
カヤックは、運営主体ごとに毎月10万円の利用料を徴収するが、各加盟店は全て無料で利用できる。「もっと利用が増えないと開発費は賄えない」と柳澤氏。地域ごとの広告出稿をシェアするなど、収益源はさらに模索するが、「お金で価値を測れなかった幸せの尺度を測れるような通貨を目指したい」と柳澤氏は話す。
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