MVNOの業界団体が政策提言 「1円端末の復活は早急に規制すべき」「接続料算定の適正化を」
大手キャリアの料金値下げでシェアが鈍化しつつあるMVNO。こうした事態を受け、テレコムサービス協会MVNO委員会は「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言2022」を発表した。接続料算定のさらなるブラッシュアップ、5Gから6Gを見据えたMVNOの在り方の検討、端末の大幅値引きなどで利用者を誘引するモデルの根絶などを求めている。
テレコムサービス協会MVNO委員会が3月18日、MVNOを取り巻く競争環境について、2030年代までに取り組み政策課題をまとめた「MVNOの事業環境の整備に関する政策提言2022」を発表した。MVNO委員会は、MVNO事業に関する情報交換や課題抽出、解決策の発信を主な目的としている業界団体。
MVNOの認知が着実に増えつつある中、2021年は、モバイル市場の競争環境が大きく変わった。政府主導の料金値下げによって、大手キャリアはオンライン専用プランを提供したり、サブブランドやメインブランドを値下げしたりすることで、料金水準がMVNOに近づいた。さらに、楽天モバイルも0円から利用できるプランを提供している。これらの結果、MVNOの契約数やシェアは鈍化した。
そこでMVNO委員会は、MVNOが移動通信市場の競争を活性化し続けられるよう、以下の5つを提言する。
- 接続料算定のさらなるブラッシュアップ・卸料金の適正性確保
- MNOグループ内外におけるイコールフッティングの確保
- 5G(SA方式)から、その先の6Gを見据えたMVNOの在り方の検討
- 利用者本位の移動通信業界を目指す取り組みの推進
- イノベーション実現に向けた諸課題の解決
1の接続料については、将来原価方式をさらにブラッシュアップして適正に算定すること、MVNOが安心してチャレンジできる適正な卸料金を実現することを求めている。
2のイコールフッティングについては、スタックテストによるMNOの料金プランが適正であるかどうかの検証、KDDIとソフトバンクに対して二種指定設備制度を拡充して禁止規制行為を早期に適用することを求めている。
3の5Gと6Gについては、仮想化と技術のオープン化を踏まえた「VMNOモデル」の早期実現、6G時代に向けた仮装通信事業の在り方に関する先行的研究の強化を求めている。MNOは現在、5GのSA(スタンドアロン)サービスを立ち上げつつあるが、5G SAのMVNOへの提供については協議が始まっているものの、まだハードルがあるとしている。
4については「分かりやすい」「安心」「持続可能な」移動通信ビジネスの在り方について議論すべきだとし、「MNOによる最新型ハイエンド端末の1円端末販売の復活に対し、早急にMNOに対する規律強化を行い、『端末の大幅値引き等により利用者を誘引するモデル』を根絶すべき」と訴えている。具体的には、iPhone SE(第2世代)やiPhone 12/13シリーズなどのモデルが、一部店舗で単体販売で値引きをした上でMNPでさらに値引きをすることで「一括10円」といった価格になり、そこがMVNOからの流出につながっている現状がある。
またMNPのワンストップ化(転出先のみで手続きを可能にすること)やMNO端末の対応周波数制限を解消することなど「スイッチングコストのさらなる低減による利用者の流動性確保」も求めている。
5については、MVNOへの音声電話番号の直接割り当て、(卸ではなく)接続による音声役務提供に向けた制度整備の促進を求めている。eSIMのさらなる普及についても言及。MVNOの利用を阻害する要因がないかを検証することと、IoT機器向けのeSIMについて継続的に注視することが必要だとしている。
2021年9月時点におけるMVNOのシェアは13.2%だが、今回の提言により、提言では2025年度末までに15%以上のシェアを目指す。
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