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転出先キャリア側での手続きのみで完了――MNPの「ワンストップ化」は2023年4月から試験運用へ
総務省が検討を進めてきたMNPの「ワンストップ化」に向けたスケジュールが改めて示された。6月までにシステムの仕様(要件)を定めた上で、2023年4月からシステムの試験運用を始める予定となっている。
総務省は4月1日、電気通信市場検証会議に付属する会議体「競争ルールの検証に関するワーキンググループ(WG)」の第27回会合を開催した。この会合では、検討が進められてきたMNP(携帯電話番号ポータビリティ)のワンストップ化について、2023年3月末までにシステムの構築を完了し、同年4月から試験運用を行う見通しであることが示された。
MNPの「ワンストップ化」検討の経緯
2006年から運用されているMNPは、携帯電話事業者(キャリア)を乗り換えても携帯電話番号を維持できる制度だ。その仕組みはできた当初から大きな変化は無く、現在は転出元と転出先の両方で手続きが必要な「ツーストップ方式」となっている。しかし、転出元キャリアで「引き留め」が起こりやすいことから、総務省は兼ねてから転出先のキャリアでの手続きのみで完了する「ワンストップ方式」の実現を検討してきた。
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ただ、ワンストップ化をする場合、「転出元キャリアを解約するに当たっての『重要説明事項』の説明を誰がやるのか」「転出先キャリア(特にMVNO)におけるシステム構築コスト」といった課題もある。
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そこで総務省はキャリアなどと検討を進め、以下の方法でワンストップ化を進めることになった。
- MNPのワンストップ化は、既存システムを活用する形で実施
- 転出先キャリアからの要求で「MNP予約番号」を自動取得できる「API連携方式」を採用
- Webでの手続きを前提とするシステムを構築
- Web以外の手続き(店頭での対面手続き)も、Web手続きのスキームを流用する
- ツーストップ方式の手続きも当面は存置する
- ワンストップ化に戸惑いを覚えるユーザーへの対策の一環
- ワンストップ用APIへの対応がすぐにできない中小MVNOへの配慮でもある
- 解約時の重要説明事項は、転出元キャリアの責任で行う
- 純粋な解約申し込み時と同じような説明を行うことを想定
ワンストップ化されたMNP手続きは、以下の手順で行われる。
- 転出先キャリアの契約用Webサイトで手続きを開始(移転元を選択)
- 転出元キャリアの契約者用Webサイトに遷移(必要に応じてログイン操作)
- 転出元キャリアにおける解約時の重要事項説明を確認する
- 自動解約に同意して、転出先キャリアの契約用Webサイトに戻る(このタイミングでMNP予約番号が自動発行される)
- 転出先キャリアの新規契約手続きを進める(このタイミングでMNP予約番号が自動取得される)
- 転出先キャリアからSIMカードを発送(eSIMの場合はダウンロードリンクなどを送付)
- SIMカードの開通手続きを行う(これをもってMNP手続きが成立、転出元キャリアは自動解約となる)
システム構築は7月にスタート 2023年4月から試験運用へ
MNPのワンストップ化に当たってのスケジュール(予定)は以下の通りとなっている。
- 2022年4~6月:システムの仕様を検討
- 2022年7月~2023年3月:システム構築
- 2023年4月:システムの試験運用を開始(問題なければ正式運用開始)
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