5Gで急激な盛り上がりを見せる「オープンRAN」とは一体何なのか:5Gビジネスの神髄に迫る(1/3 ページ)
ネットワーク仮想化などと同様、5Gで急速に注目が高まっている「オープンRAN」。基地局などの無線アクセスネットワーク(RAN)の仕様をオープンなものにして、異なるベンダーの機器を接続してネットワークを構築できる。中でもドコモが力を入れて取り組んでいるのが「O-RAN ALLIANCE」での活動だ。
ネットワーク仮想化などと同様、5Gで急速に注目が高まっている「オープンRAN」。基地局などの無線アクセスネットワーク(RAN)の仕様をオープンなものにして、異なるベンダーの機器を接続してネットワークを構築できる仕組みなのだが、なぜ今、RANのオープン化が必要とされているのだろうか。
インタフェース共通化で機器の選択に自由を
楽天モバイルが「完全仮想化」を打ち出して携帯電話事業に参入したこともあり、携帯電話のネットワークの機能を汎用(はんよう)のサーバとソフトウェア技術で実現する仮想化技術は比較的知られるようになってきた。だがここ最近、その仮想化と並んで携帯電話のネットワークに大きな変化をもたらしているのがオープン化、より具体的には基地局を主体に無線通信処理を担うRAN部分のオープン化である。
RANは一般的に端末との無線通信を担うRU(Radio Unit)と、無線信号を処理するDU(Distributed Unit)、そして処理したデータをコアネットワークとやりとりするCU(Central Unit)から成り立っているが、現在多くのRANは、RUもDUもCUも全て同じ機器ベンダーのものでしか接続できないクローズドな仕様となっている。
それは現状、携帯電話会社のネットワークを特定のベンダー1社がまとめて請け負うことが一般的になっているため。同じベンダーの機器で環境をそろえた方がネットワークの安定性が高まるメリットはあるものの、特定ベンダーの設備の仕様に縛られてしまうため、携帯電話会社が自ら機器を選んでネットワークを構築する自由度がないというデメリットにもつながっている。
そこで浮上してきたのがRANのオープン化である。従来バラバラだったRANのインタフェースを共通化し、異なるベンダーの機器を相互接続できるようにすることで、携帯電話会社が場所や場面に応じて適切な機器を選び、ネットワークを構築できるようにしようとしているわけだ。
特に5Gにおいては、モバイルネットワークがスマートフォン以外のさまざまな用途に用いられようとしている。そこでRANをオープン化し、用途に応じた設備を複数のベンダーから選んで構築できるようにすることで、幅広いニーズに応えるソリューションを提供できるなどのメリットが生まれてくるわけだ。
オープン化を推進する「O-RAN ALLIANCE」の取り組みとは
そのオープンRANの実現に向けて、世界各国でさまざまな団体による取り組みが進められているが、中でもドコモが力を入れて取り組んでいるのが「O-RAN ALLIANCE」での活動である。これは2018年にドコモや米AT&T、仏Orange、独ドイツテレコム、そして中国の中国移動通信という携帯電話会社の大手5社によって設立された団体で、既に携帯電話会社や機器ベンダーなど321社が参加(2022年2月時点)。他の業界団体と連携しながらRANのオープン化などに向けた取り組みを進めているという。
O-RAN ALLIANCEでの取り組みは大きく3つ存在するという。その1つはオープン化の本丸ともいえる、RUとCU/DUの装置間インタフェースをオープン化すること。この実現によって異なるベンダーのRUとCU/DUを使えるようになり、機器調達の自由度が大幅に高まるというわけだ。
2つ目は装置内インタフェースのオープン化、要はCU/DUに仮想化技術を導入する仮想化RAN(vRAN)の推進である。従来専用のハードを用いて構築されていたCU/DUを汎用のハードとソフトウェアで実現することにより、特定のベンダーへの依存をなくすとともに、携帯電話会社が必要な機能を持つソフトウェアを選んでRANを構成できるようにするのが目的となる。
そして3つ目は、RANのインテリジェント化に向けた取り組みである。5Gではさまざまなサービスに対応するためRANの構成が複雑になり、人力でのサポートが難しくなってくることから、RIC(RAN Intelligent Controller)を用いてネットワークを自動的に最適化するための議論や取り組みも進められているという。
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