開発陣に聞く「Xperia 1 IV」 光学ズーム実装の背景から“スマホだけで宅録”実現まで:開発陣に聞く(3/3 ページ)
2022年夏、3キャリアが取り扱う「Xperia 1 IV」は注目の1台だ。本機はソニーの技術結晶であるカメラ、ディスプレイ、オーディオはもちろん、クリエイターに刺さるような機能も搭載している。光学ズーム実装の背景から“スマホだけで宅録”実現まで、Xperia 1 IVの魅力や技術について、企画開発に関わった方々に話を聞いた。
制作者の意図を再現するスピーカー
―― そのスピーカーの構造や配置に関して、Xperia 1 IIIとXperia 1 IVでは何が違うのかを教えてください。
佐藤氏 大きなポイントは2つあります。1つはスピーカーユニットの改良です。マグネットの数を増やし、振動板を大きく揺らすことで、音圧を向上させています。もう1つはエンクロージャーの構造を進化させたことです。容量を担保しながら、まるで容量が増したかのように、低音域をさらに増強させる構造としました。
―― クリアさもポイントだと思いますがいかがでしょうか。
佐藤氏 チューニングする方と評価する方がいらっしゃって、その方々が納得するような音質を目指します。
松本氏 設計担当のスピーカー周りの構造に関しては常に細かく見ています。低音域に強く、かつ大出力に耐えられる構造にしています。もちろん音のクリアさも重視しています。
Xperia 1 IIからソニー・ミュージックエンタテインメント バッテリースタジオのシニア・マスタリングエンジニアであるマーク・ワイルダー氏などが関わり、制作者がリスナーに届けたい音が本当に再現できているか、これを重点的にチェックしています。
―― 楽器やボーカルなどの定位も重要だと考えますが、いかがでしょうか。
松本氏 定位ももちろん大事ですが、それだけでなく、音色、音像、音場についても意識してチューニングしています。特に音色、音像、音場の3つは制作者の意図に近づくほど、音楽性に磨きがかかると、エンジニア達は考えています。
―― 「360 Upmix」ではどのようにして、ステレオ音源をマルチチャネル音源に変換するのでしょうか。
松井氏 ソニー独自のリアルタイム信号処理を使って成分を抽出しています。技術詳細については、社外非公開としています。
360 Upmixを適用できるのはMusic、YouTubeなどの既存アプリで、コンテンツがステレオ音源であればアップミックスできます。
ユーザーがアプリによってかけるエフェクトを事前に設定できますので、例えば、YouTubeには360 Upmixを適用し、NetflixではDolby Atmos(ドルビーアトモス)を適用する、というようにアプリによってかけるエフェクトを選べます。
スマホ1台で宅内録音を実現
―― プロスタジオとマイクのようにハイクオリティーで録音できる「Music Pro」アプリは、Xperia 1 IVでしか体験できないのでしょうか。
松井氏 はい。録音したデータをクラウドにアップして高音質化する処理を行います。その処理自体がXperia 1 IVの内蔵マイクの特性に合わせたものなので、現状、Xperia 1 IVでしか使えません。
―― トラックを並べて編集できる機能も備わっていますが、Xperia 1 IVで作曲から配信までを完結してほしいという思いがあったのでしょうか。
上妻氏 主なターゲットはDIYアーティストです。instrumentalを打ち込んで、そのオーディオファイルを引っ張ってきて、その上にボーカル音源がのるイメージです。
スマートフォンは常に手元にある存在なので、できる限りぱっととって、Instagramなどに“歌ってみた”コンテンツを配信するような使い方を想定しています。実際、そのようなニーズは増えています。
―― MIDIファイルを扱って作曲ができるというものではなさそうですね。
上妻氏 はい。Music ProではMIDIは扱えません。詳細な編集はDAW(MIDIやオーディオを扱える音楽制作ツール全般)に任せる、というように割り切っています。
―― 録音環境の構築は大変ですよね。
上妻氏 そうですね。調査では録音環境を整備できていないアーティストがいらっしゃることが分かりました。コロナ禍でプロの方々もスタジオ録音から自宅録音へシフトしています。ターゲットのボリュームゾーンはハイアマチュアですが、プロの方にも納得いただけるような音質だと自負しています。
松井氏 ただ、いくら高音質とはいえ、自宅録音ですと、車が走る音やエアコンなど、いろんなノイズが入ってしまいます。ですのでMusic Proでは音源分離をすることでボーカル、ギター以外のノイズを除去できるようにしました。例えば、ギターの方にマイクが近いと、ボーカルよりもギターの方が聞こえてしまいがちですが、音源分離によりボーカルとギターのトラックを分けることが可能です。
取材を終えて:Xperia 1のコンセプトをうまく継承した1台
Xperia 1からのコンセプトをうまく継承し、一枚板のようなデザインを採用したXperia 1 IVには、複眼カメラ、21:9比率のディスプレイ、高音質オーディオといったソニーのあらゆる技術がおしみなく詰め込まれている。
中でも特に目を引くのが動画撮影時のシームレスズームだ。ハンディカムのように自由自在なズームイン、ズームアウトがスマホ1台で行えるようになったのが最も印象深い。ディスプレイはほぼ変化が見られない……と思いきや屋外での視認性を意識した、ユーザー目線でのアップデートがあり好印象だ。
昨今の配信需要を意識したMusic Proもまさにクリエイターへ向けた機能の1つといえよう。リッチな環境でカメラ、ゲーム、音楽を楽しんだり表現したりしたいハイアマチュアなら、約19万円という価格でも納得してもらえるのではないだろうか。
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