楽天モバイルとpovoのゼロ円プランは価格圧搾なのか――MVNOがゼロ円を展開しているので圧搾にはならない?:石川温のスマホ業界新聞
総務省の有識者会議での議論では、端末の対応周波数帯や転売対策に関する議論が注目されがちだが、一部のキャリアから出ている「月額0円で利用できるpovo2.0やRakuten UN-LIMIT VIは『価格圧搾』ではないか」という指摘も実は重要な論点である。公開されている資料もなかなかに“香ばしい”ものとなっている。
2022年6月7日、総務省で有識者会議が行われ、「一部ゼロ円料金プランと価格圧搾の関係」についての検討方向性案が議論されたようだ。残念ながらWWDC取材に集中していたため、傍聴する余裕はなかったが、公開された資料を読む限り、なかなか香ばしい内容になっていた模様だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2021年6月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
そもそもゼロ円プランの価格圧搾については、一部キャリアから指摘があったことから議論がスタートしたのだが、すでに楽天モバイルはゼロ円プランの廃止を発表しており、いまさら議題にすること自体、遅きに失した感がある。KDDIのpovo2.0に関しても、ゼロ円で回線は維持できても、実際にデータ通信を利用するにはトッピングを支払う必要があるわけで、価格圧搾として突っ込むには無理がある。
他キャリアとしては楽天モバイルやKDDIの足を引っ張りたかったのだろうが、楽天モバイルがゼロ円から撤退したことで、LINEMOは半年間の実質無料キャンペーンを展開しているし、NTTドコモはエコノミーMVNOであるトーンモバイルがシニア限定ながらも最大1年間、月額基本料金ゼロ円というキャンペーンを展開中だ。MNOの料金プランがゼロ円で提供する一方、MVNOもゼロ円キャンペーンを展開できるのだから、もはや価格圧搾という突っ込みは不可能ではないか。
総務省が公開した資料の中に甲南大学の佐藤治正名誉教授の意見があったので、引用したい。
一般的に、料金プランの一部分だけ切り出して問題視すること自体に疑問を感じます。
例えば、食べ放題のプランで、高齢者が孫を連れてくると黒字でも、若者グル ープが来ると赤字。ユーザーや使い方(食べ方)で赤字にもなり黒字にもなる。(モバイルの音声定額プランも同様で)料金プランについては、トータルで赤字か黒字 か見ていくことになります。
事務局資料にあるように、料金プランの一部だけを切り出して議論するべきで はないという考え方に賛成。
また、楽天の料金プランについては、新規参入者として既存企業に挑む事業立ち上がり期の料金戦略として理解できます。
SBも固定ブロードバンドサービスに参入したときには、ADSL モデムをタダで配ったり、赤字覚悟の販売戦略をしました。
私の記憶では、当時、総務省の会議で、事業者に対して構成員が「ブロードバンドの料金は、どの様に決めますか」と質問しました。NTTは「料金はコストを積み上げて決めます」と答え、SBは「料金はお客様が決めます」と回答しました。「5000円でなければ顧客が利用しないのであれば、赤字でも、5000円で販売します。設備産業では、初期投資が大きく、しばらくは赤字覚悟でサービス提供するが、顧客が200万、300万といった閾値を越えれば、それ以後は黒字になり、初期投資の回収ができるようになる」という説明でした。
市場全体の競争を維持していく観点からは、新規参入者が、一定の顧客基盤 獲得までの間、多少チャレンジングな料金を設定することについて目くじらを立てるべきではないと思います。
むしろ、問題視することにより、今後の新規参入の心理的な障壁になる弊害の方が大きいのではないでしょうか」
有識者のなかからこうした指摘が出るのはとても心強い。もはや、総務省はキャリアが仕掛ける料金プランにあれこれ口を出す必要はないだろう。
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