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総務省が4キャリアと全携協に「不当な端末販売拒否」の改善を要請――そもそも、スマートフォンは完全分離で売れるものなのか石川温のスマホ業界新聞

総務省が、大手4キャリアに「ショップの業務適性確保に向けた措置」を要請した。端末の販売拒否が見受けられたことが要請の主な理由だが、そもそも「回線」と「端末」を分離して販売することは理にかなったことなのだろうか。

 総務省はNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル、全国携帯電話販売代理店協会(全携協)に対して、ショップの業務適性確保に向けた措置を要請した。

この記事について

この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年6月11日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。

 公開された文書によれば、不当な端末の販売拒否が相変わらず確認されているという。KDDIで3割、NTTドコモで2割、ソフトバンクで1割、さらに楽天モバイルでも2割で電気通信事業法第27条の3に違反する事案が確認されたと言うことだ。

 顧客の獲得競争が激化する中で、iPhoneなどの1円販売が横行。転売目当てに購入する人に対しての販売拒否が、結果として、総務省からの要請につながった模様だ。

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 今週、ケータイWatchにはNTTドコモ・井伊基之社長のインタビューが掲載され「もう一度、回線と端末はセットで売るべき」という提言があった。

 総務省は頑なに「完全分離」を貫こうとしているが、そもそも、スマートフォンが自由競争で売られている製品で、回線と分離して売れるものという認識が間違っている。

 ケータイやスマートフォンは別名「端末」と言われることがある。本来であれば思いっきり業界用語であり、記事に使うべき言葉ではないはずだったのだが、なぜか端末という言葉が市民権を得てしまった。

 改めて「端末」という言葉を調べてみると「ネットワークに接続されたシステムにおいて末端に位置する装置のこと」とある。つまり、ケータイやスマートフォンはネットワークに接続された末端の機器であり、本来であればネットワークの一部として捉えられる。

 特にスマートフォンになって、メーカーが独自に作り、オープンマーケットで自由に販売しているため、パソコンと同じような位置づけで見られることがある。しかし、本来であれば、キャリアのネットワークと密接に連携し、動作しているのがスマートフォンなのだ。

 日本だと、アップルが自由にiPhoneをアップルストアで売っているため、MacBook Airと同じように見えるのかも知れないが、アップルはキャリアとネットワークの接続に関して、密に連携を取っている。5Gに対応する際は、各キャリアの5Gネットワークでキチンと動き、パフォーマンスを発揮できるよう、入念に開発を進めていた。

 NTTドコモにとってみれば、各スマートフォンメーカーに、同社しか所有しないn79に対応してもらわないことには、端末調達もできなくなる。NTTドコモにしてみれば、これまで行ってきたn79の設備投資を生かすにはn79対応のスマートフォンのラインナップ拡充が不可欠と言える。

 各キャリアが持つネットワークを最大限生かすには、各キャリアのネットワーク仕様に合ったスマートフォンが必要なのだ。

 スマートフォンは自由競争で売れるような商品ではない。キャリアのネットワークに最適化される必要があるだけに、回線とセットにして売るのが現実的なのではないだろうか。

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