KDDIの通信障害なぜ長期化した? 過去の障害で得た知見も通用せず(2/2 ページ)
KDDIが7月4日20時に、2日から発生している通信障害について、現状と復旧の見通しを説明した。通信障害の原因はVoLTE交換機の輻輳(ふくそう)だが、負荷低減を行ったにもかかわらず、音声通話が利用しにくい状況が続いていた。調査をしたところ、KDDIが運用しているVoLTE交換機18台のうち、6台が加入者データベースに不要な過剰信号を送信していることが判明した。
過去の通信障害で得られた知見は生かされなかったのか
2018年12月にはソフトバンクが、2021年10月にはNTTドコモが大規模な通信障害を起こしているが、ソフトバンクは約4時間半、ドコモは約12時間で復旧した。今回の通信障害は発生から既に3日近い時間が経過しており、ソフトバンクやドコモを大きく上回る。過去の通信障害で得られた知見は生かされなかったのか。
ソフトバンクの通信障害は、コアネットワークのソフトウェア証明書の有効期限が切れていたことだったので、直接的な原因は異なる。ドコモの通信障害は、IoTサービスの加入者/位置情報サーバ(HLR/HSS)を新設備に切り替える際の不具合が発端となり、大量の位置情報が再送されて輻輳を引き起こした。
ネットワーク側が輻輳を起こしたという点で、ドコモの障害と共通する部分が多い。吉村氏は「KDDI側として、主にIoTを多く扱う認証と電話系のシステムを分離させることを確認した。VoLTEの交換機に輻輳が起きても、復旧できるよう手順と設計を考えてきた。障害が発生した後、その手順を組んで、輻輳が起きてもすぐに復旧できるよう対応したが、想定した以上に(障害が)大きかった」と話し、ドコモの通信障害を参考にした対策でも十分ではなかったことを認めた。
「なぜ起きたのかをしっかりと検証して、再発防止策、他のシステムへの横展開をやっていきたい」(吉村氏)
また、端末がコンスタントに何らかのアクセスを繰り返しているスマートフォンの性質に起因する部分も大きいようだ。「例えばVoLTEは50分おきに自動的にアクセスしている。端末がシステムにアクセスしている状況になっていることも輻輳の引き金になっている」(吉村氏)
KDDIは2012年にもLTEネットワークで通信障害を起こした。このときの原因もLTE端末からのアクセス集中と信号制御装置の設計ミスだった。
「今回はVoLTE交換機の影響で加入者データベースが輻輳を起こした。LTEではデータと音声は別物だったが、VoLTEは音声もデータも一緒になっている。いろいろなサービスが複合的になってきているので、そういったものの手順をしっかり考えないといけない」と述べ、約10年前と同じスマートフォン時代の通信障害ではあるが、VoLTEという新たな要素が未知なる障害を引き起こしたようだ。
再発防止策については「なるべく早く策定していきたい」と吉村氏。VoLTE交換機の不具合の原因と合わせて、障害の解明につながる情報が待たれる。
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