「PoC沼」にはまったローカル5G、“実証”から“実装”に進むには何が必要か:Interop Tokyo 2022(2/2 ページ)
2022年6月15日より開催されていた「Interop Tokyo 2022」で、「ローカル5G最前線2022 ~実状・役割・課題・可能性~」と題した講演を実施。ローカル5Gの最前線で活躍している人達が参加して、ローカル5Gの現状や課題について議論がなされた。ビジネスへの実装に進むことができずにいる“PoC沼”にはまってしまっている現状から、どうすれば脱却できるのか。
「iPhoneでローカル5Gを使いたい」に応えられるか
続いて、企の執行役員 チーフ・テレコム/メディア・コンサルタントである伊賀野康生氏から、“PoC沼”から抜け出すためのヒントについて説明がなされた。伊賀野氏は過去のInterop Conferenceで、ローカル5Gの活用は技術目線ではなく顧客起点で考える必要があるとし、技術特性と難易度を意識し、難易度が低いものから取り組みを進め、成功を積み重ねることが重要だと説明してきたという。
その上で伊賀野氏は、5Gのビジネス開発においては息切れせずに長く取り組みを続けていくことが重要だと話す。そこで伊賀野氏が提案するのが、顧客起点を実現するためペルソナ(サービスの対象となる典型的なユーザー像)を作り、その行動を考えて低コストで早く最小限の試作品を開発して使ってもらい、フィードバックを得て試作品開発を繰り返すという施策を何度も繰り返し、小さな成功を積み重ねていくという新規ビジネスの開発手法である。
だがこの手法を取るには多くの資金が必要になることから、顧客とベンダー側とで成果報酬を分配するレベニューシェアを取り入れ、開発対価を共有してコストを下げる手法を伊賀野氏は提案。その事例として映画などにおける「制作委員会」の方式を挙げ、複数の企業がお金を出し合い、収益が出たらそれを分配するという仕組みをうまく活用すれば「沼から抜け出せるんじゃないか」と伊賀野氏は期待を寄せている。
その後、登壇した3者によるパネルディスカッションを実施。大都市圏でインフラ整備が進みやすい西新宿エリアでの5G整備に東京都が力を入れる理由について問われた平井氏は、「高層ビルを建てるときに空き地を作る必要があり、その広大な空き地をいまいち生かし切れていないのを改善したい」と回答。西新宿は丸の内エリアなどと違って特定の地主がおらず、多くのビルオーナーの同意を取る必要があるという難しさがあることも、東京都が力を入れる理由になっているという。
またローカル5Gで課題となっている対応端末の動向を聞かれた門野氏は、端末バリエーションの少なさが非常に大きな足かせとなっており、それが「PoC沼から抜けられない要因の1つ」だと答えている。実際、顧客からは「iPhoneで使えないの?」という問い合わせが非常に多いそうで、対応端末を増やすにはとりわけ海外メーカーに対して、日本独自のローカル5Gという制度への理解と対応してもらうための取り組みを、日本全体でやっていく必要があると門野氏は述べている。
また門野氏は、コスト面や制度面での課題に加え、実装面でもアップロードの速度が「準同期を使ったとしても、Wi-Fiに負けるのがリアル」と言うように、ローカル5Gにはまだ多くの課題があると説明。その課題解決に向けて、官民が協力しての取り組みが多く求められていること示した。
関連記事
顧客とベンダーの視点から見るローカル5Gの現状 普及に向けた課題は?
オンラインイベント「Interop Tokyo カンファレンス 2021」でローカル5Gに関するセッションを実施。4.7GHz帯の割り当てなどで活性化しているローカル5Gに関して、サービスを提供する側とそれを利用する側の双方の視点から議論した。ローカル5Gに求めるは「自由」「安さ」「セキュリティ」という意見が出た。5GのライバルはWi-Fi? 将来的には固定と融合する? 5Gの発展を占う
5Gはコミュニケーションだけでなく産業界での利用が期待されている。現在、標準化作業がなされている「リリース16」~「リリース18」で5Gが高度化する。将来的には固定と無線の境目がなくなり、通信をシームレスに利用できる時代が来ることも期待される。コストはソフトで解決、本命は4.8GHz帯 先駆者が語る「ローカル5G」の極意
「Interop Tokyo Conference 2020」の初日となる6月10日に、「ローカル5G:活用のための課題克服に向けて」と題したローカル5Gに関するパネルディスカッションが開催。NEC、ファーウェイ・ジャパン、阪神ケーブルエンジニアリング、IIJのキーパーソンが登壇。ローカル5Gの活用に向けた取り組み、そして利用拡大に向けた課題と解決策について議論した。従来価格の5分の1でローカル5Gを導入 NTT東日本が展開する「ギガらく5G」とは
NTT東日本が、ローカル5Gの手続きから構築、運用までをワンパッケージで提供する、企業向けの「ギガらく5G」を発表。従来のローカル5Gと比べ約5分の1の価格で必要な要素がそろっているという。上りの通信速度を高速化できることも特徴だ。NTT東日本に聞く、ローカル5Gの取り組み 地方創生に向け産学連携で自治体をサポート
ローカル5Gにはさまざまな事業者が参入しているが、現在のところ規模の面で最大手といえるのはNTT東日本ではないだろうか。固定通信のイメージが強いNTT東日本だが、実はWi-Fiを用いた無線通信は以前から手掛けている。同社にとってローカル5Gは、企業のネットワークのエンドポイントとして利用する無線通信ソリューションの1つに位置付けられる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.