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スマートウォッチで心不全の悪化を検知 沖縄セルラー電話など3者が実証事業を開始(2/2 ページ)

沖縄セルラー、浦添総合病院、セコム琉球は、スマートウォッチで心疾患の悪化を検知する実証事業を開始した。10月12日から約3カ月間に渡り実証を行い、サービスの商用化も視野に成果の検討を行っていくという。

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Apple Watchではない理由は「電池持ちが良いから」

 今回の実証事業のサービス設計は、とにかく患者側の手間をできるだけ省くことに主眼が置かれている。先述の通り、スマホとスマートウォッチの設定を一度行えば、後はスマートウォッチを装着するだけでモニタリングを開始できる上、その記録もセコム琉球が代行してくれるので、患者側が何かを書いたり送ったりする必要もない。

 肝心のスマートウォッチだが、今回は「Fitbit Sense」を利用している。この機種を選んだ理由も患者の負担軽減のためである。沖縄セルラー電話の田中健介氏は「Fitbitはバッテリー持ちが良く、一度の充電で1~2週間ほど持つ。(心拍数の計測なら)Apple Watchも選択肢としてあり得るが、1~2日に一度は充電が必要となる」と説明する。

 患者への連絡方法をあえて電話としたのも、スマホに不慣れな人が多い高齢者に配慮したためだ。今回の実証事業に参加する患者は、70歳以上の高齢層が多い。スマホのポップアップ通知で連絡するよりも、よい多くの人に気付いてもらえる電話で知らせよう、ということである。

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 なお、実証事業で利用するスマホとスマートディスプレイは原則として患者本人に貸与される。ただし、患者がスマホに不慣れな場合は、データの収集に利用するスマホは家族に渡し、患者本人はスマートウォッチのみ装着する、といった運用も可能だ。


今回の実証事業で使われるアプリのイメージと、スマートウォッチ「Fitbit Sense」

実用化の可能性も模索

 今回の実証事業は、沖縄県の外郭団体である「ISCO(沖縄ITイノベーション戦略センター)」による補助金の給付を受けている。そのため、今回の実証事業では「ヘルスケアサービスとしての効果検証」と併せて「商用サービスとする上での課題の検証」も行われる。どのようなビジネスモデルを取るかについては、実証の成果を踏まえて検証されるが、仮に商用化された場合は沖縄セルラー電話が事業主体となる可能性が高いという。

 同社ではJOTOホームドクターを通してヘルスケアサービスの実証実験を重ねてきた。その結果、商用サービスとして「リモート診療」が提供されるようになった。現在は実証段階だが、処方薬をコンビニエンスストアで受け取れるサービスも検討されている。浦添総合病院との取り組みとしては、2021年1月から先述のリモート診療機能と、Apple Watchの心電図機能を活用した「アップルウォッチ外来」を提供している。

 沖縄セルラー電話の菅隆志社長は、「どのようなビジネススキームで展開するか、最終的な形は決まってはいないが、沖縄セルラーとしてはかなり深い部分まで関わっていきたい」と語る。


沖縄セルラー電話の田中健介氏(営業本部 ビジネス開発部副本部長)

 今回の実証事業は、浦添総合病院の患者のみを対象としているが、実用化後は沖縄県内外への“横展開”も考えられている。田中氏は「将来的には沖縄以外での展開を目指していきたいと考えているが、まずは実証事業を成功させるのが重要と考えている」とする。

 商用化された場合の患者への費用負担は「ヘルスケアサービスとして提供した場合、3000~5000円程度の利用料がビジネスの成立のために必要となると考えている」(田中氏)という。ただし、実際にどうするのかは「患者さんへのアンケートなどを踏まえて検討したい」とのことだ。上原医師は「個人的な見解として、3000円~5000円という金額感は、再入院が防げることでの負担軽減やお薬代などを考えると、高くはないと考えている」と補足している。

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