「高齢者の携帯電話契約」は面倒? 販売店スタッフの尽きない“悩み”:元ベテラン店員が教える「そこんとこ」(3/3 ページ)
電気通信事業法の改正などを通して、携帯電話ショップにおける「料金に関するトラブル」は以前よりも少なくなりました。しかし、その代わりに目立ってきたのが「高齢者の携帯電話契約にまつわるトラブル」です。店舗スタッフは、高齢者の携帯電話契約にどのように取り組んでいるのでしょうか。元ショップスタッフの筆者が話を聞いてみました。
高齢者にまつわる契約トラブルがなくならないのはなぜ?
今回話を聞いたスタッフが勤める携帯電話ショップでは、それぞれが「高齢者の契約にまつわるトラブルを極力起こさないようにしよう」と取り組んでいることが分かったと思います。しかし、SNSなどを見る限り、高齢者の携帯電話契約にまつわるトラブルはいまだに続いています。
“同業者”として、このような問題がいまだに続くことをどう考えているのでしょうか。合わせて話を聞いてみました。
推測でしかありませんが、トラブルを起こす店舗は恐らく契約回線数や販売台数など、経営実績が苦しい状況なのではないでしょうか。
携帯電話ショップ、特にキャリアショップの場合は経営に関する各種目標を前年同月比で設定しています。以前と違ってケータイやスマートフォンが飛ぶように売れるわけではありません。目標の設定方法が「自分で自分の首を絞める」感じになっているので、目標達成が難しいのも事実ではあります。
目標達成を最優先するとなると、言い方は難しいですが「目先の1台」を追い求めてしまいがちになると思います。クレームを頂いたり余計なケアをせざるを得なくなったり……という、後で起こるであろう面倒まで頭が回らず、1台を販売することを優先することで、トラブルの“タネ”をまいてしまっているんだろうなと。
ショップのノルマ設定は、いろいろな観点で行われています。ケータイやスマホといった端末の販売目標の達成が難しいとなったら、「オプションサービスの(契約)獲得なら何とかなるんじゃないか」と考えてしまいがちです。
しかし、キャリアのオプションサービスの獲得は、いわゆる「OTT」のサービスが普及した今となっては難しい面もあります。高齢者の方は、個人差が大きいですが「電話」と「メール」しか使わない人が多い傾向にあります。なので、高齢者の来店比率が高いショップだと、オプションサービスの獲得は本来ならかなり難しいはずです。
しかし、目標を達成できないとなると、最悪のケースでは店舗の閉鎖につながります。「目標必達」あるいは「目標への肉薄」が頭をよぎると、「ベタ付け」には至らなくても「少しくらいはいいだろう」と考えて、強制に近い形でオプションを付けてしまうスタッフ、あるいはそういう方針のショップがあってもおかしくはないと思います。
私個人としては「そりゃダメだろ」と思うのですが、それは(目標の達成において)余裕のある状況だからかもしれません。かなり難しいことなのは百も承知ですが、「目標」の在り方について、キャリアや上位の代理店にはもう少し考えて欲しいとも思います。
高齢者を含めて、お客さまの契約についてトラブルは極小化したいと考えています。だからこそ、1つ1つの契約を大事に考えて、トラブルを回避するための工夫と対策を講じています。
しかし、こうやって「クソ真面目」に対策をすると目標達成が難しくなることも事実ではあるんですよ……。やっぱり目標設定の方法から見直さないとダメだと思いますし、それができない限りは高齢者にまつわる契約トラブルは減らないと考えます。
今回話を聞いた店舗・スタッフからは「高齢者の契約トラブルを防ぎたい」という強い意志を感じることができました。
本編では触れませんでしたが、複数のスタッフからは「実店舗の利用が高齢者ばかりになってきている」といった声もありました。こういう市場の変化を受けて、個店単位(あるいは代理店単位)ではなく、業界全体で「トラブル防止の成功事例の共有」「販売の内訳に則した目標の設定」といった抜本的な改善に取り組む必要性があると熱く語るスタッフがいたことも印象的でした。
ある意味で、高齢者の携帯電話契約に関するトラブルは、携帯電話の契約にまつわる“ゆがみ”を大きく映し出しているのかもしれません。
若いユーザーは、このイメージ画像のようにオプション契約を断固として断ることも多いのですが、高齢のユーザーは強めの説明を受けるとワケも分からず契約してしまうことが多くあります。本来はショップ側が改めるべき事項ではあるのですが、1つの防衛策として年老いた家族や知人が新規契約や機種変更をする場合は、時間を作って付きそうことは有効な手だてとなりそうです
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