ドコモの「dスマートバンク」は成功するのか? “銀行事業ではない”ことの課題も:石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)
ドコモは、12月12日に新たな金融サービスの「dスマートバンク」を開始した。ドコモ自身が銀行業を行うのではなく、三菱UFJ銀行が用意したAPIを活用している。実際に使ってみると、こうした建て付けゆえの限界も見えてきた。
利用手続きは簡単で「貯金箱」も便利だが、注意点も
筆者も、早速dスマートバンクを使ってみた。三菱UFJ銀行の銀行口座は長く使っており、インターネットバンキングサービスの三菱UFJダイレクトも申し込み済み。dスマートバンクには、この個人口座をひも付けることにした。申し込み自体は非常に簡単で、画面の案内に従っていくだけ。画面の途中で、三菱UFJダイレクトのAPIサービスに切り替わった。ここでは、同サービスの契約番号とログインパスワードを入力。アプリから取得したワンタイムパスワードも必要だった。
規約に同意後、「申し込む」のボタンをタップすると、ドコモの回線利用料をdスマートバンクで支払うよう促される。現在はクレジットカードで払っているためだ。dスマートバンクをドコモ回線の利用料やdカードの引き落とし口座に指定した場合、毎月dポイントが50ポイントたまる。1回10万円以上の給与や年金を受け取った場合も、5ポイントが付与される特典がある。ここまでの流れは非常に自然だ。ひも付けの有無を決めると、dスマートバンクを利用できるようになる。
筆者の場合、ドコモ以外の回線もまとめて同じクレジットカードで支払っており、ドコモだけを引き落としにすると、かえってお金の管理が面倒になる。そのため、ドコモ回線の引き落とし口座として登録は見送ることにした。dカードかドコモ光、ドコモでんきの引き落とし口座にしても50ポイントもらうことは可能だが、いずれも利用しておらず、残念ながら登録はできなかった。
注意したいのは、三菱UFJ銀行が提供する「メインバンク プラス ポイントサービス」が自動解約になってしまう点だ。このサービスは、各種条件を満たすとPontaポイントが付与される。三菱UFJダイレクトへのログインで月5ポイント、口座振替や三菱UFJデビット、クレジットカードの利用で月15ポイント、運用商品残高50万円以上で月50ポイントと、もらえるポイントが意外と多い。預金額にもよるが、普通預金の金利を大きく上回るポイントをもらえるのが魅力だ。筆者も、このサービスで毎月20ポイントほど受け取っており、100ポイントたまった段階でau PAYにチャージしていた。
dスマートバンクに登録したことで、この20ポイントを失った格好だ。20ポイント程度ならドコモ回線の支払いをdスマートバンクの口座引き落としにするだけで取り戻せるが、運用商品があったり、住宅ローンを組んでいたりするケースでは、月200ポイントを上回ることもあり、切り替えると損をしてしまう。ポイント還元という観点は、既存のサービスよりもやや物足りない印象を受けた。
次に、貯金箱を作ってみた。貯金箱には、毎月もしくは毎日、指定した金額を入金することができる他、目標額も設定できる。取りあえず2万円を入れてみたところ、5万円入っていた「おサイフ」が3万円に減っていた。2万円を貯金しつつ、残り3万円は日々の生活資金にしたいといった場合、後者の残額がいくらあるのかが分かりやすい。日々利用するお金とためるお金を分けて管理したい人には、便利なユーザーインタフェースといえる。
ただし、この貯金箱の情報は、三菱UFJ銀行側の口座には反映されない。そのため、ATMでは、貯金額も含めて現金を引き出せてしまう。振込も同様だ。dスマートバンクには振込の機能がないため、三菱UFJダイレクト側で手続きをする必要がある。この際に、dスマートバンク側のおサイフを超える金額を指定することも可能だ。定期預金などとは異なり、あくまで貯金箱でしかない。自ら蓋を開ければ、お金を取り出せてしまうというわけだ
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