ライカに聞く「Leitz Phone 2」(後編):背面色にホワイトを選んだ理由、Leitz Looksのメカニズム(1/2 ページ)
「Leitz Phone 2」のデザインとカメラの開発担当者にインタビュー。白色を基調としたデザインへのこだわりや、独自の撮影モード「Leitz Looks」の仕組みを聞いた。
ライカ(Leica)ブランドを冠するスマートフォン「Leitz Phone 2」。AQUOS R7をベースモデルとしつつも、独自のデザインと撮影機能を備えた意欲的なモデルとなっている。
今回、ライカカメラでスマートフォン関連の製品開発を担当しているビジネスモバイルユニットのメンバーが日本の報道陣のグループインタビューに答えた。
後編では、Leitz Phone 2のデザインを統括したロブ・タイラー氏(シニア ライカデザインインダストリアルデザイナー)と、カメラの独自機能「Leitz Looks」などを担当したヨナス・デイストラー氏に製品の魅力を聞く。
ホワイトはライカにとって縁の深い色、新規ユーザー獲得にも
―― デザインについて。両面ガラス仕上げのスマートフォンは多くのメーカーが投入していますが、Leitz Phoneシリーズはカメラのような金属フレームを採用している点でも一線を画していると感じます。
タイラー氏 ライカの製品デザインにおいて、「ライカらしいこと」は重要です。長くお使いいただいている方にも新しくお使いいただく方にもブランドの哲学がきちんと伝わるようなデザインでなければなりません。
Leitz Phone 2で使われているメタルフレームはライカを象徴する素材の1つです。金属の質感のよさ、信頼性の高さ、精緻さはライカのモノづくりに欠かせません。
そして、金属とガラスと組み合わせることで、エレガントで洗練された雰囲気を表現しました。もっとも、ガラス素材を選んだ理由には、ワイヤレス充電への対応といった実利的な側面もあります。
―― Leitz Phone 2の背面カラーとして「ホワイト」を選んだのも印象的でした。
タイラー氏 ブラックを基調としていたLeitz Phone 1と比べると、Leitz Phone 2のホワイトは斬新に見えるかもしれません。ただし、ホワイトはライカにとって、縁の深い色なのです。ライカは過去のカメラ製品で何度かホワイトカラーの限定モデルを販売しています。とても人気があるのですよ。
そこで、Leitz Phone 2では白を使うことで、Leitz Phone 1とコントラストを持たせることにしました。もちろん、日本市場ではブラックやホワイトというベーシックなカラーが人気であることも承知しています。若い人など新しいユーザー層にアプローチしたかったこともあり、ホワイトは有力な選択肢でした。
―― Leitz Phone 2の「ライカホワイト」の白は、これまで見てきたスマートフォンのどの製品とも違った独特の色味に見えます。
タイラー氏 そうなんです。Leitz Phone 2の「ライカホワイト」の選定は、非常に長い時間をかけてじっくりと行いました。
「ホワイト」と一口に言っても、明るくフレッシュな白から、グレー寄りの重めの白までさまざまなバリエーションがあります。少し調色を変えるだけで、全体の雰囲気はガラッと変わってしまいます。
Leitz Phone 2では、ライカが伝統的に用いている「ホワイト」を目指しました。クールすぎず、黄色くなりすぎない、その中間の色味を目指しています。本当に完璧な白を選ぶために、多くのサンプルを制作し、さまざまな仕上げを検討しました。
あえて縦向きにロゴがそろうようデザイン
―― Leitz Phone 2では背面ロゴやレンズキャップのロゴの配置が、縦向きにしたときにそろうようになっています。カメラを重視したスマホでは、横向きで撮るときにロゴが並ぶようなデザインの機種もありますが、なぜ縦位置でそろえたのでしょうか。
タイラー氏 「カメラは横位置で使うから、ロゴもそれに合わせた配置にするべきではないか」というご質問ですね。非常にいい論点です。Leitz Phoneシリーズを開発する中で、ロゴをどちらの向きでそろえるのかは、デザインの検討の上での大きなトピックでした。
カメラとしての用途を考える上でも、例えばビデオ撮影では縦位置で使われるシーンも多くあります。また、現在のスマートフォンのデザインのトレンドを見ても、縦持ちで見た時に整うような設計が多いように見受けられます。結論として、今回は縦向きにしたときにロゴが並行に並ぶようなデザインとなっています。
正しく制御し、より正確なデータを引き出せる新しいイメージセンサー
―― 2021年のLeitz Phone 1ではデジタルカメラ向けの1型のイメージセンサーを搭載していました。Leitz Phone 2ではスマホ向けに新たに設計された1型センサーに更新されていますが、ライカの画質を再現する上で変化はあったのでしょうか。
デイストラー氏 はい、Leitz Phone 1の1型センサーは、本来はデジタルカメラ向けに開発されたセンサーをスマホに搭載して制御しています。これはライカにとっても初めての試みで、最初は本当に動くのかという疑問を抱きつつ、困難を乗り越えて実用化しました。その過程で、大型のイメージセンサーならではの表現力に気付かされました。
今回のLeitz Phone 2では、最新のモバイル向け1型センサーを採用しています。この新しいイメージセンサーは「センサーモード」を搭載しており、センサーを正しく制御し、より正確なデータを引き出すことができます。単純に描写性能が高いだけでなく、スマートフォンへの親和性の高さも選定のポイントでした。この新しいセンサーにより、スマートフォンのさまざまな技術との統合が、より容易になりました。
―― Leitz Phone 2にはライカが独自に開発した撮影モード「Leitz Looks」を開発した狙いについて教えてください、
デイストラー氏 Leitz Phone 2のLeitz Looksでは、ライカのカメラ専用機のレンズの写りを再現する「レンズシミュレーション」に対応しました。開発にあたっては、単に数値上で設定するだけではなく、より実践的なプロセスを重視しました。
スマートフォンのカメラではボケ感は出づらい傾向にありますが、クラシックカメラでは被写体や背景との距離感に応じて柔らかいボケが生じます。その柔らかいボケ感や、レンズ特有の風合いを、ソフトウェア上で再現する仕組みがLeitz Looksです。
Leitz Looksでは「Summilux」と「Noctilux」のレンズを再現
―― クラシックカメラのライカ Mシリーズは50年に渡って世代を重ねるロングセラーの製品ですが、Leitz Phone 2のLeitz Looksではどの世代のレンズを再現したのでしょうか。
デイストラー氏 ライカMレンズには、Noctilux、Summilux、Summicron、Elmar、Elmaritといったブランドがあります。今回はその中から人気のある「Summilux」と「Noctilux」を選び、3つの画角で再現しています。
ご指摘の通り、例えば「Summiluxの35mmレンズ」でも、実際には過去50年以上に渡る製品ラインアップがあり、一様ではありません。そこで今回は特定のレンズを再現するのではなく、レンズの特徴を独自の基準で指標化し、実際の光学レンズと撮り比べながら写りを改善していくという開発プロセスを取りました。
最初に行ったのは、多くの写真家、光学設計者、カメラ開発者とともに、レンズの個性を指標として定義する作業です。ボケ味だけでなく、レンズの光学的なゆがみやヴィネット(口径食)など、いくつもの観点での評価指標を設けています。そして、この開発のために、歴代のライカ Mレンズとの比較画像を多数作成して、Leitz Phone上でより忠実に再現できるように細かな修正を重ねました。
―― Leitz Looksで写真を撮るときに、具体的にどのような処理を行って写真を生成しているのでしょうか。
デイストラー氏 Leitz Phone 2は被写体との距離を認識するToFセンサーを搭載しています。このセンサーから得られる深度マップと、メインの1型センサーから得られた画像データを合成して、1枚の写真に仕上げています。
写真生成の中では、AIベースのソフトウェア処理も併用しています。具体的には、露出やフォーカスの制御などで用いています。また、より洗練された写真に仕上げるために、AIベースの被写界検出機能は欠かせません。例えば髪の毛のような細かい物体は、深度センサーで得られる情報だけでは境界を決めるのが困難です。こうした物体を識別し、より自然なボケ感を出すためにAIは役立ちます。
―― Leitz Looksでは、シャッターボタンを押してから、ギャラリーアプリで閲覧できるようになるまでやや時間がかかります。これを短くすることはできないのでしょうか。
デイストラー氏 確かに、「Leitz Phone 2」のLeitz Looksでは、写真が表示されるようになるまで、数秒の時間がかかります。なぜ時間がかかるのかというと、1枚の写真を仕上げるために複数枚を連写して合成し、先ほど説明したようなボケ味を追加するアルゴリズムを適用しているからです。処理自体はバックグラウンドで実行されますが、撮った写真をすぐ確認できないというのはご指摘の通りです。ライカでは写真の処理プロセスにかかる時間を短縮できるように、継続的な改善に取り組んでいます。
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