auの「おもいでケータイ再起動」が6年以上続いている理由 仕掛け人が語る舞台裏(2/2 ページ)
KDDIは「おもいでケータイ再起動」のイベントを開催、函館では地元紙が体験を記事化する「思い出新聞」も実施された。1万人が体験したイベントはどのように誕生したのか、仕掛け人に聞いた
過放電したケータイの復活に使った“秘密兵器”
プロジェクトを進めていく中で、充電器を集めるだけでは不十分だということが判明した。発売から10年以上が経過したフィーチャーフォンは、電池パックが過放電してしまい、携帯電話用の充電器では充電できなくなることもある。この解決策はないかと模索したところ、「テスター」にたどりついたという。
「電池パックを復活させている装置は、バッテリーテスターという名の通り、もともと携帯電話のバッテリー残量の減少をチェックするためのツールですが、チェックのために電池パックに直接通電する機能があり、これが“再起動”に使えるのではないかと着目しました。テスターはかつて全国のauショップに設置されていましたが、スマホ化によってほぼ使われなくなった機器です。KDDI社内からかき集めて4台を確保しました」(西原氏)
4台のテスターからスタートした企画は、体験者からの大きな反響があり、6年間も続くプロジェクトとなった。倉庫に埋もれていたテスターはバッテリー復活という新たな役割が与えられた。西原氏によると、スマホで操作できるテスターをこのプロジェクトのためだけに新規で開発し、全国のKDDI支社に配備しているという。
有志のKDDI社員が参加、士気を向上させる機会にも
イベントを運営するスタッフは、KDDIの社員から有志を募っている。ユーザーと向き合いバッテリーを復活させているスタッフの中には、基地局建設や法人営業など、通常の業務では直接エンドユーザーと接する機会がない人もいる。西原氏は「お客さま視点や社会的意義を確認し、社員の士気を向上させる機会にもなっている」と話す。
おもいでケータイプロジェクトは、異業種とのコラボレーションのきっかけにもなっている。函館が第1弾となる「おもいで新聞」もその事例の1つだ。
函館新聞社の佐藤純氏は「新聞社の使命は事件や地域の出来事を取材して報道することだが、今の時代にはそれだけにはとどまらない形での社会貢献が求められている。函館は観光地としての魅力は上位を維持しているが、“住みにくい街ランキング”にも名を連ねるような街でもある。娯楽が少なく、働く場所があまりないという街においても、こういったイベントでの体験を楽しんでもらい、まだまだ可能性があると感じてほしいという思いがある」とコラボレーションの経緯を説明した。
西原氏は「昔を顧みるような企画と思われがちだが、体験した方からは『ここから思いを新たにやっていきます』とか『昔の友人に連絡を取ってみます』というような前向きな感想をいただくことも多い。おもいでケータイ再起動が、人生の新たなスタート地点を作るきっかけになる。そういった方々のために継続することも1つの使命だと感じています」と語った。
(取材協力:KDDI)
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